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2022年度第3四半期(10~12月) 通信機械生産・輸出入概況 ~新型コロナ禍や部品不足の影響が落ち着き、生産・輸出入は好調~

2023年3月15日

一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)では、2022年度第3四半期(10-12月)の通信機械生産・輸出入の概況をまとめました。

I.概況

2022年10-12月(3Q)の日本経済は、新型コロナ禍の影響が落ち着いて経済回復が進み、個人消費は物価高の影響があるもの増加、設備投資は海外経済減速のリスクもあって減少、輸出が伸びたことなどから10-12月期の実質GDP成長率(2次速報:3月9日)は年率換算0.1%増と2四半期ぶりのプラス成長となりました。この中で、2022年度10月~12月の通信機器市場では、新型コロナ禍や半導体不足の影響による部品調達難が解消されつつある有線端末・有線ネットワーク機器の需要が増加しており、円安影響によって輸出が好調な機種も増加しています。一方で5Gの特長を生かす5G SA基地局の設備投資が進んでおらず、基地局関連は低迷が続いています。

(1)国内市場動向

10月~12月の国内市場金額(=国内生産金額-輸出金額+輸入金額:部品除く)は9,984億円となり、前年同期比では10.0%増と増加しました。部品供給制約の影響で低迷していた生産が回復しつつあり、円安がプラスに影響した輸入増もあって増加しました。

(2)国内生産動向

10月~12月の国内生産金額は901億円、前年同期比では1.0%増と2四半期連続で増加しました(秘匿となった携帯電話を除外して算出)。搬送装置関連が堅調で、部品供給制約の影響で生産が低迷していた機種も回復しつつあり、生産が増加しました。

(3)輸出動向

10月~12月の輸出総額は1,024億円、前年同期比では15.0%増と2四半期連続で増加しました。海外経済減速の影響を受けずにネットワーク関連機器の輸出が増加、また部品不足の状況も薄まって部品の輸出が5四半期ぶりに増加しました。

(4)輸入動向

10月~12月の輸入総額は1兆97億円となり、前年同期比では12.6%増、四半期で1兆円を超えたのは2017年度3Q以来となりました。円ドルレートで約20%の円安となったことも影響して部品を除くほとんどの機種で輸入が増加しました。

II.国内市場動向(生産動態統計と貿易統計からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表1-1)

機種別の10月~12月の実績は以下の通りです。国内需要が好調なため端末機器とネットワーク関連機器がともに増加したことから、前年同期比では増加が続いています。

①端末機器:6,789億円(前年同期比 9.8%増
②ネットワーク関連機器:3,196億円(前年同期比 10.3%増

生産動態統計と貿易統計から「国内市場規模=国内生産金額-輸出金額+輸入金額」として、国内市場規模を算出しています(海外メーカーの輸入額も含みます)。生産動態統計で携帯電話が2021年度4Qから秘匿となり、以降、携帯電話分は合計に含まれていません

図表1-1:国内市場(機種別、四半期別

III.国内生産動向(経済産業省「生産動態統計調査」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表2-1)

機種別の10月~12月の実績は以下の通りです。

①有線端末機器
119億円(前年同期比27.4%増)。うち電話機3億円(同9.6%減)、ボタン電話装置33億円(同5.3%増)、インターホン83億円(同41.6%増)となりました。半導体などの部品不足の影響が解消されつつあるボタン電話装置の国内生産が増加しました。また住宅やオフィスの設置工事の受注が堅調なことからインターホンの国内生産は増加を継続しています。

②移動体端末機器
89億円(前年同期比1.8%増携帯電話が2021年度4Qから秘匿となり、以降、合計や前年比に含んでいません)。その他の移動体端末機器のうち、その他の陸上移動通信装置61億円(同12.0%増)、海上・航空移動通信装置29億円(同14.7%減)となりました。海外での新型コロナ禍からの経済回復によって陸上移動通信装置の需要が旺盛なことから、国内生産が増加しました。

③有線ネットワーク関連機器
362億円(前年同期比3.8%増)。うち交換機(局用と構内用)45億円(同16.9%減)、デジタル伝送装置145億円(同11.2%減)、その他の搬送装置173億円(同30.8%増)となりました。構内用交換機は、半導体などの部品不足の影響が残り国内生産は減少しました。デジタル伝送装置も部品供給制約が影響して国内生産が減少していますが、その他の搬送装置(アナログ伝送装置、電力線搬送装置、ケーブル搬送装置、CATV搬送装置、光伝送装置、変復調装置を含む)が国内生産増を継続しています。

④無線ネットワーク関連機器
184億円(前年同期比27.0%減)。うち固定通信装置48億円(同12.8%減)、基地局通信装置135億円(同31.0%減)。固定通信装置は、地上系では民間向けや、防災行政無線向けの需要が大幅に減少しました。基地局通信装置は、5G SA基地局の設備投資が進んでおらず、またO-RANを活用した米欧向け輸出も減少し、国内生産は低迷が続いています。

⑤ネットワーク接続機器
75億円(前年同期比83.1%増)。半導体不足によって供給不足の機種もありますが、経済回復によって企業やデータセンター向けの需要が大幅に増加し、国内生産が増加しました。

⑥有線部品(有線機器用リレー、中継器用など)
71億円(前年同期比3.2%増)。新型コロナ禍から需要回復しつつある機器の国内生産向けや海外輸出に向けて、国内生産が増加しています。

図表2-1:生産総額(機種別、半期別)

IV.輸出動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表3-1)

機種別の10月~12月実績は以下の通りです。

① 電話機及び端末機器71億円(前年同期比7.5%減
内訳は、携帯電話58億円(同15.7%減)、コードレスホン0.5億円(同572.7%増)、その他12億円(同60.3%増)となりました。経済活動が回復して需要が増加しているコードレスホンや業務用無線などの輸出が増加しましたが、米国向けスマートフォンが減少しました。

② ネットワーク関連機器406億円(同15.4%増)
内訳は、基地局32億円(同63.5%減)、データ通信機器366億円(同41.0%増)、その他ネットワーク関連機器9億円(同46.4%増)となりました。経済活動が回復してきている海外市場向けにネットワーク関連機器が増加しました。

③ 部品(有線系・無線系の合計)546億円(同18.4%増
部品不足の状況も薄まって部品の輸出が5四半期ぶりに増加しました。

図表3-1 輸出動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表3-2)

地域別の10月~12月実績は、アジア向けが510億円(前年同期比0.7%減)、うち中国向けは248億円(同10.4%減)。北米向けが382億円(同33.2%増)、うち米国は375億円(同33.4%増)。欧州向けは102億円(同42.7%増)、うちEUは79億円(同57.7%増)となりました。米国向けの携帯電話や基地局の輸出が増加しており、部品輸出でも中国系スマホ生産が落ち込んでいることから、2021年度3Qから米国向けと中国向けが逆転し、米国向けが中国向けを上回っています。

(3)地域別構成比

1位 アジア 49.9% (前年同期比 -7.9%)
2位 北米 37.4% (同 +5.1%)
3位 欧州 10.0% (同 +1.9%)
その他地域 2.8% (同 +0.8%)
図表3-2 輸出動向(地域別、四半期別)

Ⅴ.輸入動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表4-1)

機種別の10月~12月実績は以下の通りです。

① 電話機及び端末機器6,651億円(前年同期比14.6%増
内訳は、携帯電話6,619億円(同14.5%増)、コードレスホン14億円(同146.6%増)、その他18億円(同8.0%増)となりました。携帯電話は、買い替えサイクルが長期化しているために需要が減少しており、海外生産された国内メーカー製は減少しましたが、海外メーカー製は円安影響もあって輸入額が増加しました。コードレスホンは、前年度3Qに海外工場での部品供給不足や生産人員不足によって生産が停滞した反動から大きく増加しました。

② ネットワーク関連機器2,981億円(同14.3%増
内訳は、基地局241億円(同4.4%増)、データ通信機器2,664億円(同14.8%増)、その他ネットワーク関連機器75億円(同38.0%増)となりました。ネットワークの光ケーブル化需要やデータセンター設備投資などに向けて、データ通信機器(ルータースイッチ、その他(伝送装置、通信装置、変復調装置等))が増加しました。

③ 部品(有線機器と無線機器用部品の合計)465億円(同16.7%減

図表4-1 輸入動向(機種別、半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表4-2)

地域別の10月~12月実績では、アジアからが9,637億円(前年同期比12.1%増)、うち中国は7,524億円(同8.6%増)。北米からは175億円(同42.8%増)、うち米国は160億円(同48.3%増)。欧州からは159億円(同1.8%減)、うちEUは151億円(同2.4%減)。

円安影響を含め、アジアからはスマートフォンや基地局の輸入が大きく増加し、北米からはデータ通信機器(ルータースイッチ、その他(伝送装置、通信装置、変復調装置等))の輸入が増加しました。

(3)地域別構成比

1位 アジア 95.4% (前年同期比 -0.4%)
2位 北米 1.7% (同 +0.4%)
3位 欧州 1.6% (同 -0.2%)
その他地域 1.2% (同 +0.3%)
図表4-2 輸入動向(地域別、四半期別)

VI.受注・出荷動向(CIAJ受注・出荷統計より)

(1)2022年度第3四半期(10-12月)の実績

CIAJ会員の国内メーカーによる受注出荷の10月~12月の実績は3,720億円で前年同期比12.0%増となりました。このうち、国内出荷は2,490億円の同比7.0%減となり、輸出が1,231億円の同比90.8%増となりました。国内出荷では、スマートフォン需要の減少が大きく影響し前年同期比で減少しました。輸出では、海外の設備投資の回復とともに円安の影響もあって前年同期比で増加しました。
※CIAJ受注・出荷統計=CIAJ会員の国内メーカーの受注・出荷額
(=国内出荷額+輸出額 =国内生産額+海外生産した輸入額 )

(2)機種別動向

国内出荷と輸出を合わせた機種別の10月~12月実績は以下の通りです。

① 有線端末機器 1,542億円(前年同期比35.4%増
事業所用コードレスやファクシミリ(パーソナル向けとビジネス向け、複合機を含む)は、半導体不足などによる供給制約が残るものの、需要が好調に推移して出荷が増加しました。特に、ファクシミリの輸出が経済活動が活発化した米欧アジア向けの需要が増加、円安影響もあって大幅に増加しました。

② 移動体端末機器 927億円(同比14.9%減
携帯電話は、物価上昇や部材費高騰による端末価格上昇で買い替えサイクルが長期化した影響でスマートフォン需要が急速に減少、在庫調整もあって出荷が低迷しています。その他の移動端末機器も国内出荷が減少しました。

③ 有線ネットワーク関連機器 614億円(同比23.1%増
ボタン電話は半導体などの部品不足が解消し回復基調にありますが、構内用電子交換機はまだ回復まで至りません。デジタル伝送装置やPON/MCは、光ケーブル網の設備投資が回復して大幅に増加しました。特に、デジタル伝送装置の輸出が海外での設備投資が増加し、円安影響もあって大幅に増加しました。

④ 無線ネットワーク関連機器 470億円(同比8.6%増
固定通信装置は、固定系と衛星系が民間向けや官庁向けの需要が低迷しています。基地局は国内では5G SA基地局の設備投資が低迷していますが、官庁向けや輸出で大型案件があり増加しました。

⑤ その他ネットワーク関連機器 101億円(同比36.1%増
ルーターとLANスイッチともに、経済回復によって企業やデータセンター向けの需要が増えて、国内出荷が大幅に増加しました。

⑥ 通信機器用部品 66億円(同23.6%減

【補足】国内生産動向での携帯電話の動向

III.国内生産動向(経済産業省「生産動態統計調査」)において、比較的大きな実績値をもつ「携帯電話」が、2021年度4Qから秘匿となったため、推定した結果を図表に追記し、その差異を把握しました。

推定方法は、CIAJ受注出荷統計での携帯電話実績の比率を参照し、同様の傾向になると仮定して、生産額の2021年度4Q分、2022年度1Q~3Q月分を推定しました(図表2-1補足の緑色のセル)。また、前年同期比は、携帯電話分を含めて算出し直しています。

図表1-1を補足した図表 国内市場(機種別、四半期別)
図表2-1を補足した図表 国内市場(機種別、四半期別)

VII.2022暦年の国内生産・輸出・輸入動向

(1)2022暦年の国内市場動向(参照:図表5-1)

2022年1月~12月の国内市場金額は3兆5,166億円で、前年比8.5%増となりました。新型コロナ禍や半導体などの部品不足の影響が落ち着いたことから、通信機器全体では暦年で3期連続で増加しました。

(2)2022暦年の国内生産動向(参照:図表5-2)

2022年1月~12月の国内生産は3,778億円で、前年比5.2%減となりました(携帯電話が2021年度4Qから秘匿となり、以降、合計や前年比に含んでいません)。デジタル伝送装置や基地局などのネットワーク関連機器の低迷が続いたことから国内生産は減少しました。

(3)2022暦年の輸出動向(参照:図表5-3、図表5-4)

2022年1月~12月の輸出は3,486億円で、前年比8.7%増となりました。円安影響などからデータ通信機器などの輸出が増え、さらに米国向けの携帯電話や基地局の輸出が継続して増加しました。

(4)2022暦年の輸入動向(参照:図表5-5、図表5-6)

2022年1月~12月の輸入は3兆5,419億円で、前年比13.0%増となりました。円安によるプラス効果で、基地局と部品を除くほとんどの機種が増加したことから、暦年で2期連続で3兆円を超えました。

図表5-1 国内市場(機種別、暦年別)
図表5-2 生産総額(機種別、暦年別)
図表5-3 輸出動向(機種別、暦年別)
図表5-4 輸出動向(地域別、暦年別)
図表5-5 輸入動向(機種別、暦年別)
図表5-6 輸入動向(地域別、暦年別)

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