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2020年度通期(4~3月) 通信機械生産・輸出入概況 ~通信端末・インフラ関連機器は新型コロナ禍の影響の中でも国内生産や輸入が増加~

2021年6月9日

一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)では、2020年度通期(4-3月)の通信機械生産・輸出入の概況をまとめました。

I.概況

2020年度の日本経済は、実質GDP成長率(1次速報値:5月18日)が年率換算で4.6%減と、リーマン・ショックがあった2008年度(3.6%減)を超え、戦後最大の下げ幅となりました。緊急事態宣言の影響によって巣ごもり需要があるもののサービス業に係わる個人消費は減少し、企業の設備投資も10~12月の持ち直しから反動減もあって低迷、日本経済の回復は足踏み状態になっています。一方で、ワクチン接種が進む米国や中国経済の回復を受けて輸出は増加しています。

この中で2020年度の通信機器市場では、第5世代移動通信システム(5G)向けの通信インフラ構築や、GIGAスクール構想など光ケーブル網の全国整備に合わせた設備投資は新型コロナ禍の影響の中でも需要増を継続し、さらに新型コロナ禍の影響によって低迷した携帯電話の需要も回復しつつあります。一方で、企業業績の悪化や、対面営業が制限され受注活動や設置工事が停滞したことからビジネス関連機器の需要が低迷しています。

(1)国内市場動向

2020年度の国内市場金額(=国内生産金額-輸出金額+輸入金額:部品除く)は3兆139億円となり、前年比では11.6%増と増加しました。輸入額の大半を占めている携帯電話の輸入が増加したことが要因です。

(2)国内生産動向

2020年度の国内生産金額は5,207億円、前年比は5.6%増となりました。光ケーブル網の全国配備に向けたデジタル伝送装置や5G向け基地局通信装置の需要が好調なことから、国内生産は、2019年度に14年ぶりに前年比プラスとなったのち、2年連続でプラスとなっています。

(3)輸出動向

2020年度の輸出総額は2,808億円で、前年比は8.6%減となり、3年連続で減少しました。アジアや中国で生産されるスマートフォン向けに輸出される部品が輸出額の大半を占めており、この部品の需要が回復、2四半期連続で増加しつつありますが、3年連続で減少しました。

(4)輸入動向

2020年度の輸入総額は2兆8,637億円となり、前年比11.1%増となり、2四半期連続で増加、3年ぶりに増加しました。スマートフォン需要が回復しつつあるため、海外生産された国内メーカー製や海外メーカー製が含まれる輸入が増加しました。さらに5G基地局の整備のほか、すべての機種の輸入が増加しています。

II.国内市場動向(生産動態統計と貿易統計からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表1-1、図表1-2)

機種別の2020年度通期の実績は以下の通りです。ネットワーク関連機器が好調を継続し、端末機器の伸びたことにより、6年ぶりに3兆円を超えました。

①端末機器:1兆9,518億円(前年比 7.0%増)
②ネットワーク関連機器:1兆 621億円(前年比 21.2%増)

なお、生産動態統計と貿易統計から「国内市場規模=国内生産金額-輸出金額+輸入金額」として国内市場規模を算出しています(海外メーカーの輸入額も含みます)。

図表1-1:国内市場(機種別、年度別
図表1-2:国内市場(機種別、四半期別

III.国内生産動向(経済産業省「生産動態統計調査」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表2-1、図表2-2)

機種別の2020年度通期の実績は以下の通りです。

①有線端末機器
418億円(前年比14.6%減)。うち電話機19億円(同4.0%減)、ボタン電話装置135億円(同4.4%減)、インターホン265億円(同19.6%減)となりました。新型コロナ禍の影響で年度当初から対面営業や設置工事が制限を受けたことから、住宅向けのインターホンやオフィスビル向けのボタン電話の需要が低迷し、国内生産は減少しました。

②移動体端末機器
1,753億円(前年比0.4%減)。うち携帯電話1,091億円(同1.4%増)となりました。国内で生産される携帯電話が回復傾向にあり、海上・航空移動通信装置も増加しましたが、業務用無線などを含むその他の陸上移動通信装置が前年度のリプレイス特需の反動で減少し、全体としても微減となりました。

③有線ネットワーク関連機器
1,612億円(前年比20.0%増)。うち局用交換機163億円(同81.8%増)、構内用交換機32億円(同42.0%減)、デジタル伝送装置676億円(同38.5%増)、その他の搬送装置665億円(同4.1%増)となりました。構内用交換機は、クラウドサービスによる音声回線数削減や、在宅勤務による企業の拠点統廃合などの影響により減少傾向にあります。一方で、局用交換機は、公衆交換電話網からIP網に移行する際に必要となる収容装置や変換装置の需要が増加しました。デジタル伝送装置はデータトラフィック増加に対応したネットワーク設備投資が好調により、国内生産が3年連続で増加しています。

④無線ネットワーク関連機器
845億円(前年比30.2%増)。うち固定通信装置288億円(同1.1%減)、基地局通信装置558億円(同55.6%増)。固定通信装置は、官庁向けがひと段落し、海外での需要も低迷していることから地上系と衛星系ともに国内生産は減少しました。基地局通信装置は、5G向け通信インフラ構築に向けて国内生産が大幅に増加しました。

⑤ネットワーク接続機器
325億円(前年比24.4%減)。ルーターは、5G商用サービスに向けたネットワークシステムの強化のために通信事業者向けが堅調ですが、LANスイッチは、新型コロナ禍の影響によってデータセンターなどの新設工事が停滞し、GIGAスクール構想による需要回復も一部で工事延伸などから需要が減少しており、国内生産は減少しました。

⑥有線部品(有線機器用リレー、中継器用など)
254億円(前年比2.1%減)。アジア新興国に輸出しているスマートフォン生産用部品が回復しつつあるため、国内生産は前年比では減少ですが、四半期では回復傾向にあります。

図表2-1:生産総額(機種別、年度別)
図表2-2:生産総額(機種別、四半期別)

IV.輸出動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表3-1、図表3-2)

機種別の2020年度通期の実績は以下の通りです。

①電話機及び端末機器186億円(前年比15.1%減)
内訳は、携帯電話149億円(同21.9%減)、コードレスホン2.5億円(同5.1%減)、その他 35億円(同35.0%増)となりました。米国向けで巣ごもり需要の増加に伴ってその他に含まれる簡易無線などが増加しました。

②ネットワーク関連機器1,035億円(同16.2%減)
内訳は、基地局12億円(同53.5%減)、データ通信機器995億円(同15.1%減)、その他ネットワーク関連機器28億円(同24.4%減)となりました。新型コロナ禍によるロックダウンなどの影響を受けて需要減が継続しました。

③部品(有線系・無線系の合計)1,587億円(同2.0%減)
アジア新興国に輸出しているスマートフォン生産用部品が回復しつつあるため、前年比では減少していますが、四半期では回復傾向にあります。

図表3-1 輸出動向(機種別、年度別)
図表3-2 輸出動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表3-3、図表3-4)

地域別の2020年度通期は、アジア向けが1,783億円(前年同期比3.4%減)、うち中国向けは663億円(同10.4%増)。北米向けが639億円(同9.1%減)、うち米国は627億円(同9.7%減)。欧州向けは311億円(同24.4%減)、うちEUは226億円(同33.0%減)となりました。中国を含むアジア全体へのスマートフォン生産部品の輸出が回復しつつありますが、中国以外でのスマートフォン生産が増えているため、中国以外への輸出比率が高まっています。

(3)地域別構成比

1位 アジア 63.5% (前年同期比 +3.5%)
2位 北米 22.8% (同 -0.1%)
3位 欧州 11.1% (同 -2.3%)
その他地域 2.7% (同 -1.0%)
図表3-3 輸出動向(地域別、年度別)
図表3-4 輸出動向(地域別、四半期別

Ⅴ.輸入動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表4-1、図表4-2)

機種別の2020年度通期の実績は以下の通りです。すべての機種で前年比増となりました。

①電話機及び端末機器1兆7,533億円(前年比8.1%増)
内訳は、携帯電話1兆7,416億円(同8.2%増)、コードレスホン47億円(同4.1%増)、その他70億円(同1.2%増)となりました。携帯電話は、年度後半からスマートフォン需要の回復とともに、海外で生産される国内メーカー製や海外メーカー製が含まれる輸入が増加しました。

②ネットワーク関連機器8,874億円(同17.1%増)
内訳は、基地局937億円(同50.2%増)、データ通信機器7,696億円(同13.8%増)、その他ネットワーク関連機器241億円(同28.9%増)となりました。データ通信機器のうち、スイッチング機器及びルーティング機器3,766億円(同1.9%増)、その他のデータ通信機器(伝送装置、通信装置、変復調装置等)3,930億円(28.0%増)となりました。携帯電話インフラ関連の整備などに向けて、基地局や伝送装置などの輸入が大きく増加しています。

③部品(有線機器と無線機器用部品の合計)2,230億円(同11.8%増)

図表4-1 輸入動向(機種別、年度別)
図表4-2 輸入動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表4-3、図表4-4)

地域別の2020年度通期の実績では、アジアからが2兆7,098億円(前年比12.3%増)、うち中国は2兆911億円(同10.0%増)。北米からは533億円(同22.3%減)、うち米国は475億円(同26.7%減)。欧州からは660億円(同31.3%増)、うちEUは635億円(同30.3%増)。

アジアからは携帯電話のほか、基地局、その他のデータ通信機器の輸入が前年比で増加しており、欧州からも基地局、その他のデータ通信機器、部品の輸入が増加しています。

(3)地域別構成比

1位 アジア 94.6% (前年同期比 +1.0%)
2位 北米 1.9% (同 -0.8%)
3位 欧州 2.3% (同 +0.4%)
その他地域 1.2% (同 -0.6%)
図表4-3 輸入動向(地域別、年度別)
図表4-4 輸入動向(地域別、四半期別)

VI.受注・出荷動向(CIAJ受注・出荷統計より)

(1)2020年度通期の実績

CIAJ会員の国内メーカーによる受注出荷の2020年度総額は1兆4,355億円で、前年比4.4%減となりました。このうち、国内出荷は1兆1,809億円の同比2.3%減、輸出は2,546億円の同比12.9%減となりました。

国内出荷では、ネットワーク関連機器は増加しましたが、受注出荷額が大きな携帯電話やファクシミリの端末機器が減少したことから、前年比で減少となりました。
※CIAJ受注・出荷統計=CIAJ会員の国内メーカーの受注・出荷額
(=国内出荷額+輸出額 =国内生産額+海外生産した輸入額)

(2)機種別動向

国内出荷と輸出を合わせた機種別の2020年度通期の実績は以下の通りです。

①有線端末機器 4,743億円(前年比10.8%減)
新型コロナ禍の影響により、電話機、インターホンや事業所用コードレスホンなどの需要が低迷しました。また、ビジネスファクシミリ(複合機を含む)は主力となる海外向けがロックダウンによるテレワーク推進で輸出が減少し、パーソナルファクシミリ(複合機を含む)とともに国内需要も減少したため、有線端末機器全体では同比で減少しました。なお、パーソナルファクシミリ(複合機を含む)の輸出は巣ごもり需要に合わせて増加しました。

②移動体端末機器 4,225億円(同比6.8%減)
携帯電話の出荷台数は増加しましたが、購入価格帯がハイエンドからミドルへ移行して端末単価が下落したことによって出荷額は減少しました。ただし、携帯電話のうちスマートフォンは、出荷台数と出荷額とも増加しています。また、その他の移動端末機器も減少したことから、移動体端末機器全体では同比で減少しました。

③有線ネットワーク関連機器 2,327億円(同比9.4%増)
ボタン電話や構内用電子交換機などのビジネス機器は、企業の設備投資の再開などから国内需要は回復しつつありますが通年では減少、輸出も大きく減少しました。一方で、デジタル伝送装置は国内需要が好調を継続しており(輸出は減少)、PON・MCも国内需要が増加しているため、有線ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

④無線ネットワーク関連機器 2,441億円(同比5.6%増)
前年度に大幅に増加した官庁や民間向けの地上系固定通信装置や、官庁向け衛星系固定通信装置の需要が反動で減少した一方で、携帯電話向けの基地局通信装置は5G商用化サービスに向けて順調に増加したため、無線ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

⑤その他ネットワーク関連機器 347億円(同比22.0%減)
ルーターは、5G商用サービスに向けたネットワークシステムの強化のために通信事業者向けが堅調ですが、LANスイッチは、新型コロナ禍の影響によって需要が大幅に減少しているために、その他ネットワーク関連機器全体では同比で減少しました。

⑥通信機器用部品 273億円(同0.4%減)

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