一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)では、2024年度通期(4-3月)の通信機械生産・輸出入の概況をまとめました。
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I.日本経済の概況
2024年度の日本経済は、実質GDP成長率(2次速報値:6月9日)が前年比0.8%増と4年連続のプラス成長となりました(1-3月期は年率換算で0.2%減、4四半期ぶりのマイナス成長)。個人消費は0.8%増で、自動車販売の正常化に加えて、24年夏に南海トラフ地震臨時情報の発令により災害時の備蓄需要が増え、また、新製品が出たスマートフォンの購入も増えました。設備投資は2.6%増で、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進による需要増や、サーバーなど電子計算機関連の投資が旺盛だったこと、半導体関連の工場新設で設備投資も増えました。外需は、統計上は輸出に計上されるインバウンド関連の消費が引き続き堅調で、輸入は新製品発売に伴いスマートフォンが増えたことなどが影響しました。
II.通信機器市場の全体概況
2024年度の通信機器市場では、有線端末機器は新機種投入に向けた従来機種の在庫調整や小型化による市場の縮小傾向が続いております。ネットワーク関連機器の有線系はキャリアの投資抑制が続いており、特に無線系の基地局通信装置では全国の5G人口カバー率の整備目標が2年前倒しで達成されたこともあり、新たな整備目標(Sub6展開率、ミリ波設置局数など)が新たな投資に結びついていない状況です。
一方で、2024年度も主要海外メーカー製スマートフォンの国内需要が好調だったことや、高速大容量データトラフィック増大によりデータセンターの設備増強のためのデータ通信機器の輸入が増加したため、国内市場規模は拡大しました。
(1)国内市場動向
2024年度の国内市場金額(=国内生産金額-輸出金額+輸入金額:部品除く)は4兆2,727億円となり、前年比では18.8%増となりました。国内生産の減少傾向は続いておりますが、スマートフォンとデータ通信機器の輸入増加に伴い、国内市場金額は増加しました。
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(2)国内生産動向
2024年度の国内生産金額は3,805億円、前年比では2.7%減となりました。インターホンのスマホ連動型や録画機能付きの生産や、防災関連等で固定通信装置の生産増に伴い増加しましたが、陸上移動装置(携帯電話含む)や基地局通信装置の減少が影響したため、国内生産金額全体では減少しました。
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(3)輸出動向
2024年度の輸出総額は3,226億円、前年比ではほぼ横ばいとなりました。海外メーカーの台頭により国内メーカー製スマートフォンの低迷が続き、また、基地局は海外キャリアの投資抑制などに伴い減少しましたが、海外でのデータセンター投資を主因としてデータ通信機器が増加し、横ばいを維持しました。
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(4)輸入動向
2024年度の輸入総額は4兆2,302億円、前年比では18.1%増となりました。今年度も国内のスマートフォン需要は好調で、主要海外メーカーの新製品投入に加えて、2024年末の総務省のガイドライン改正に伴う駆け込み需要や2024年度末の新生活シーズンに向けた買い替え需要が後押ししたことや、国内データセンター需要に伴う設備増強によりデータ通信機器などが堅調に推移したため、増加しました。
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III.受注・出荷動向
CIAJ会員の国内メーカーによる受注・出荷の実績は1兆1,469億円で、前年同期比1.9%減となりました。このうち、国内出荷は8,867億円の同比5.8%減、輸出は2,602億円の同比14.1%増となりました。
国内出荷では、移動体端末機器や有線ネットワーク関連機器が減少し、前年比で減少しました。一方で、無線ネットワーク関連機器の固定通信装置が、地上系で防災関連の政府予算が確保された官庁向けに、衛星系でキャリア向けに大幅な需要増がありました。輸出は、ファクリミリ、デジタル伝送装置、無線ネットワーク関連機器全般が牽引し、大幅増となりました。
※CIAJ受注・出荷統計 = CIAJ会員の国内メーカーの受注・出荷額
( = 国内出荷額+輸出額 = 国内生産額+海外生産した輸入額 )