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   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

 「2019年度新体制で活動中!運営方針は『QMSのプロセスを改善する』」

                      2019年7月26日発行 第90号

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≪ 第90号 目次 ≫

・はじめに

・QMS委員会総会/2019年度体制
    2019年6月17日(月)開催

・2019年度の運営方針/QMSのプロセスを改善する

・QMS委員会総会/特別講演会

・QKMアクティブラーニング(第15回)予告

・ISO 9001関連の最新動向

・TL 9000コーナー

・知識活用型企業への道
   『QMSにおける知的資産運用への取り組み』

・編集後記

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●はじめに ─────────────────────────────────── 2019年度 QMS委員会 委員長を拝命しました小島 博樹です。 どうぞよろしくお願いいたします。 QMS委員会では,6/17に開催したQMS委員会総会で皆様から2019年度の委員会 体制と事業計画をご承認いただき,活動を実施しております。 2019年度事業計画では『QMS委員会の取組み』を説明させていただきました。 その内容は, 「イベント・企画の実施については,運営委員会にて会員企業にとって  ニーズが高く,役立つ(事業環境変化,公益性の観点を踏まえ)内容  とすることをミッションとし,議論・検討を重ね,会員企業へ募集し,  実施する.」 「QMS委員会の活動に会員企業の声をよりタイムリーに反映できる様,運営  に携わるメンバーを募集する.」 です。 まず前者は『2018年度の申し送り事項』である「QKMアクティブラーニング, 異業種見学会の更なる活性化」を実現する為の対応として 「会員企業からの様々なご意見(ニーズや課題等)を鑑み,より役立ち,  参加しやすい工夫・企画(職場で活用できる実践的な講義内容や気付き  を得る上で『一見の価値あり』の見学先の選定等)を検討し,試行する.」 を実施していく上で必要不可欠な取り組みと考えており,会員企業にとって ニーズが高く,役立つ内容を知る機会がより必要であると考えております。 次に後者ですが,これも現在の運営委員会における運営委員に参画いただい ていない会員企業の皆様に参画いただくことで現在の運営委員が気付かない 『ニーズが高く,役立つ内容』や『会員企業の皆様の課題等』を知る機会が 増え,QKMアクティブラーニング,異業種見学会等に生かせるのではないか と考えております。 (積極的な運営委員会への参画は随時ご連絡いただきたく思います。) そこで会員企業の皆様と個々にコミュニケーションの機会を設け,意見交換 (ニーズや課題等,運営委員としての参画等)を実施させていただきたいと 考えております。是非とも,ご協力をお願いいたします。 2019年度の運営方針については,後段にて説明させていただきますので, ここでは割愛させていただきます。 会員企業の皆様に「より役立ち,参加しやすい工夫・企画(職場で活用でき る実践的な講義内容や気付きを得る上で『一見の価値あり』の見学先の選定 等)」を提供する様,努めてまいりますので,ご期待ください。 メルマガは,本号で2004年7月の創刊から90号を迎えました。 ニリューアル予定のHPとともに情報発信を引き続き行っていきます。 それでは,メルマガ90号をお届けいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QMS委員会総会/2019年度体制 ─────────────────────────────────── 6月17日,成立要件(「QMS委員会規則第8条」 による過半数以上の出席)を 満たしていることを確認し,「2018年度QMS委員会総会」を執り行いました。 承認いただいた2019年度体制は以下の通りです。よろしくお願いいたします。  委員長   日本電気     小島 博樹  副委員長  日立製作所    青木 誠  運営委員  日本電気     北村 弘(TC176国内委員会委員)        沖電気工業    青柳 礼子        日立製作所    永山 明義(新任)  特別委員  (元)ソニー   山本 正  フェロー  (元)日立製作所 相澤 滋  会計監事  沖電気工業    中西 賢(新任)(兼)運営委員
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●2019年度の運営方針/QMSのプロセスを改善する ─────────────────────────────────── 2019年度の運営方針は『QMSのプロセスを改善する』です。 2019年度事業計画の中でも説明させていただきましたが,会員企業の皆様の 様々な組織において,ISO9001:2015年版の要求事項に対応されたQMSを構築 され,運用されていることと思います。 『QMSのパフォーマンスが上がらないこと』や『QMSの形骸化』の懸念はあり ませんか? 会員企業の皆様自身が運用されているQMSのパフォーマンスと有効性は マネジメントレビュー等にて定期的に評価されていることと思いますが, 現在運用されているQMSは組織にとって最適なもの,つまり満足できる パフォーマンスがでており,有効性も示されているものとなっています でしょうか? 会員企業の皆様の事業環境の変化やIoTやAIなどの技術革新がもたらす影響を 受け,現在運用しているQMSを変えることなく,組織にとって最適なものとし て有り続けることは非常に難しいと考えております。 QMSのプロセスやQMSの状態を知り,その結果を踏まえ,組織に最適なQMSの プロセスとして『Innovation』し,QMSのパフォーマンスを上げるには,どの 様に考え,実践していけば良いのかを2019年度の運営方針におけるテーマ 「QMSのプロセスを柔軟性,順応性のあるものに変えるには」とした研究活動 にて取り組んでいきたいと考えております。 次に,『QMSの形骸化』ついては,まずよく言われていることですが, 『内部品質監査,マネジメントレビューの形骸化』があげられます。 内部品質監査とマネジメントレビューは「ISO認証維持の目的だけに実施され ているのでは?」との懸念はありませんか? 内部品質監査とマネジメントレビューの意義は組織のQMSのプロセスが有効に 機能しているかどうかを判断する上で,重要なプロセスであり,重要な経営 ツールとして活用することで事業プロセスとQMSとの統合が実現できると考え ています。 『QMSの形骸化』にどう対応すべきかについても研究活動にて取り組んでいき たいと考えております。 会員企業の皆様に研究活動の成果として『ニーズが高く,役立つ内容』を 情報発信したいと考えておりますので,ご期待ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QMS委員会総会/特別講演会報告    『システムアーキテクチャ』     〜変化する社会に対応するためのアプローチ〜 ─────────────────────────────────── 6月17日に開催しました総会特別講演会では,慶應義塾大学大学院システム デザイン・マネジメント研究科 白坂 成功教授をお招きし,『システムアー キテクチャ』〜変化する社会に対応するためのアプローチ〜についてお話い ただきました。 <ご講演概要> ・システムアーキテクチャとは,要素と要素間の関係性 ・アーキテクチャは,目的志向で,多視点から見たものを統合,そのためには 可視化が強力 ・対象もアプローチも変化 ・産業構造のアーキテクチャを決めることは“業”を決めることにつながる ・Society5.0の実現のためには,「アーキテクチャ」を意識することが重要 ・政府レベルで色々な分野でアーキテクチャを元に意思決定をおこなう新た  な取り組み なお,システム分野における近年の特徴として以下があり, ①対象の拡大 ②コンテクスト(環境の急激な変化)  VUCAワールド時代『Volatility(変動性・不安定さ),Uncertainty(不確実  性・不確定さ),Complexity(複雑性),Ambiguity(曖昧性・不明確さ)』 ③重要なシステムの特性の増加(システムとして捉えないといけない項目の  増加) 日本も異なる産業の接続を考え始めているが,これからの品質保証は,以下の 理由などで困難が予想されると紹介されました。 <これからの品質保証が困難> ・繋がるシステムの拡大 ・運用中の予定外のシステムの変化 ・多岐にわたるステークホルダ  例えばスマートグリッド:横間標準インタフェースを創っても離れたとこ  ろの関係性も整理しないとEND TO ENDが繋がらない 聴講者アンケートでは,「システムアーキテクチャを考える上で注意すべき点 が理解できた。」,「システムとして捉える範囲が,今までより広く考えるこ との重要性を感じた。」等の評価をいただきました。 また,「変化に対応するシステムが必要であること。」,「変化に耐えられる 要素を考えておかないといけない。」,「システムアーキテクチャのデザイン の考え方はプロセスのデザイン時に応用できる。」という意見もありました。 QMSも動的に変化していくことを考慮したマネジメント(変化に対応しやすい アーキテクチャ)がますます求められていくと考えています。 総会特別講演会で得られた気づきが,会員企業の皆様のQMSの運用改善の一助 になれば幸いと存じます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QKMアクティブラーニング(第15回)予告(9月上旬)   『品質管理と信頼性』  ─────────────────────────────────── 今年度よりQKMアクティブラーニングを見直し,より皆さんが自立的に学ぶ場 としてリニューアルしていくことにしました。 QMSに関するテーマはもちろん,それ以外のテーマも企画していく考えです。 一見,自社・自組織の製品/サービスと関係ない分野の話でも,考え方の違い や同じ分野の仕事であっても自社・自組織のプロセスの長所や短所と比べて みることで,様々な気付きを得る機会となり,プロセスの改善に繋げていただ ければと思っております。 先ずは,第一弾として,『品質管理と信頼性』を企画しました。 内容としてはソフトウエア開発を例に品質管理と信頼性をどのように確保し ていくかを会員企業日立製作所の青木誠さんを講師に向かえ実施することと しました。 (青木さんは,金融分野の品質保証分野で20年を超えるキャリアの方です.) 今回の講座は,基礎的な内容となっておりますので,ソフトウエア分野以外の 会員企業の方にも是非受講いただき,今後IoT分野が拡大するなかでソフトウ エア開発事業者がどのようなことを実施しているのかを知る良い機会となる と考えております。 新たな企画を手探りではじめますが,皆さんの意見を伺いながら試行錯誤し, 活動して行きたいと思います。 詳細は,後日開催案内通知を発信させていただきますが,9月上旬を予定して おります。 それでは,会員企業の皆様の多数のご参加をお待ち申し上げます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●ISO 9001関連の最新動向   『ISO/IEC専門業務用指針 第10版(2019年版)のリリース』  ─────────────────────────────────── ISO/IEC専門業務用指針第1部および統合版ISO補足指針ーISO専用指針の第10 版(2019年版)がリリースされました。(ISO/IEC原本発行:2019-05-01  英和対訳版発行:2019-07-01) 今回のリリースでは皆さまにも馴染みのある附属書SLが附属書Lに変更され ております。また,内容の確認をすると,箇条や,記述の一部が変更されてい ます。 附属書SLは,ISO 9001をはじめとするISOのマネジメントシステム規格のいわ ゆる2015年版以降の共通の枠組みが示された文書ですが,制定5年を迎えJTCG によるフィードバックコメントを受け,MSSとの一貫性をより向上させるべく 本年1月から2021年5月までの予定で改訂作業が行われています。 今回の改訂の詳細については情報入手ができていません。情報を入手した 時点でメルマガにてご報告をいたします。 なお,最新版の英和対訳版は日本規格協会の以下のサイトからダウンロード できますので,是非ご活用ください。 <ダウンロードサイト> 「ISO/IEC専門業務用指針第1部及び統合版ISO補足指針(2019年版)英和対訳版」  https://webdesk.jsa.or.jp/common/W10K0500/index/dev/std_shiryo1/ JTCG:Joint Technical Co-ordination Group(合同技術調整グループ) MSS:Management System Standard(マネジメントシステム規格)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●TL 9000コーナー TL 9000説明会報告(7月8日) ─────────────────────────────────── 恒例になりました「TL 9000 説明会」を (株)テクノファにおいて, TIA日本ハブ様とCIAJ QMS委員会で共同開催致しました。 当日は,10社26名の参加があり,QMS委員会内部に留まらずCIAJ会員とTIA日本 ハブ会員から幅広く参加がありました。 初参加の方が8名と3分の1で,TL 9000 をご理解戴く機会となりました。 セミナー内容     1.TIA日本ハブの紹介     2.TL 9000要求事項の基礎(R6.0/R6.1) 3.TL 9000測定法の基礎(R5.6) 4.TL 9000に関するWEB等の情報の見方, TL 9000認証取得プロセス 5.質疑応答 講師:吉崎 久博 氏, 小林 真一氏    TIA公認研修機関(株)テクノファ講師 今回のアンケートの結果からは, ・ISOとの違いが理解出来ました。 ・要求事項ハンドブックのR5.5とR6.0/R6.1の差分説明が充実していました。 ・業界の品質向上に寄与の点, 参考になりました。 ・改善の数値化も良いポイントで参考になりました。 ・直近の測定法ハンドブックR5.6に関する最新情報も確認することができま  した。 ・具体事例で説明していただいたので分かりやすかったです。 等,好評を博しました。 次回開催は, 2019年下期を予定しています。 TIA:Telecommunications Industry Association
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●【連載】知識活用型企業への道    『QMSにおける知的資産運用への取り組み』 ─────────────────────────────────── 最近,無人運転システムで営業している横浜市の新交通シーサイドラインが, 始発駅で逆走し,車止めに衝突し負傷者を出しました。 その数日後,今度は市営地下鉄が脱線したことは記憶に新しいかと思います。 前者はその後の調査で,電車と構内との方向切り替え確認は異常なしでしたが, 車両内信号系統の一部が断線したことにより,実際には進行方向が切り替わっ ておらず,事故を起こしたと報道されていました。 この事実は,このシステムが全く信用できないことを示しています。 それゆえ,事故後1か月以上が経過した現在でも,抜本的な見直しが必要なのか どうかわかりませんが,まだ有人運転で運行されております。 後者の脱線事故は保守点検装置を線路に置き忘れ,それに電車が乗り上げ脱線 した事故でした。 調査報告では,置き忘れ防止警報装置がありましたが,その警報装置が切られて おり,結果として保守点検装置の撤去を忘れたことが原因だと報じられていま した。 この誰かが単純な作業を怠っただけで重大事故になったことは,安全を担保 するシステムが機能しなかったというよりは,そもそもシステム自体が 無かったという印象を受けました。 この二つの事例から学ぶべきことは,一部の故障や現場の軽微なエラーが全体 の安全や質を大きく損なう場合があることを再認識するとともに,これらの 事故は,相互に補完するシステム的なアプローチが全くなされていなかった という点です。 さて,もう一つの直近の話題は,スマホ決済サービスのセブンペイが運用開始 直後から不正利用,不正アクセスが発生し多くの利用者に損害と不安を与え, サービスを緊急停止した例です。 この事例の驚くべき点は,ほんの少し前に同様のサービスのペイペイが,運用 開始直後からセキュリティの脆弱性により不正利用が多発し,見直しをした 事実があったという点です。 この事件の本質的な問題は,すでに同様のセキュリティ課題が表面化していた にもかかわらず同様の問題を再発させた点です。それゆえ金融システム全体の 信頼性を損なうものなので,金融庁が報告命令をだし調査に入っています。 このような出来事が実際起きてしまうと,何故なのかと考えてしまいますが, QMS(品質マネジメントシステム)の中にも,当然あり得る話題だと思えます。 さて,ここで少し話を変えますが,不都合な情報を無視したり,正確に理解し なかったことにより生じる話題もありました。 その例は,何といっても「年金2000万円不足」で国民的話題となっている件 でしょう。 人生100年時代を迎え公的年金だけでは生活できないと指摘した金融庁の 「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日)を,大臣が受け取り 拒否したことで話題となりました。 そこには老後の生活は人の状況で異なるものの,全体としてみれば年金だけ では生活できず,2000万円程度の貯蓄が必要になることを指摘したことに 端を発します。 この報告書の発表が参議院選挙直前の時期でもあり,政治的な問題となった ことはご存知の通りです。また個人的にも無視できない情報です。 この報告書を読んでみますと,その冒頭に『金融サービスの利用者である個々 人及び金融サービス提供者をはじめ幅広い関係者の意識が高まり,令和の時代 における具体的な行動につながることを期待する。』と,その目的が明記され ております。 その内容は,老後の生活を支えるためには個々人の自助的行動と,それを支える 金融サービス提供者の行動が必要であり,それを促すためにまとめられたもの であることがわかります。 この報告書は,公的年金システムの現実を直視し具体的な対応を促進させよう としたものとみえますが,国民の不安をあおったと政治家から非難され,見直し の機会を失う気配を感じます。論点が何か変な方向に無理やり曲げられている ような印象を受けます。 この例をみますと,都合が悪いことは解決すべき本質から目をそらし,結果的に 解決する機会を逃すことの愚かさを感じます。 さて,その報告書の印象深い記述として,終わりの部分で,『標準的なモデルが 空洞化しつつある以上,唯一の正解は存在せず,・・・遠い未来の話ではなく 今現在において必要なこと,「自分ごと」として捉え,考えられるかが重要で あり,これは早ければ早いほど望ましい。』と記述されています。 この指摘は,品質マネジメントシステム(QMS)にも当てはまる部分があるかと 思います。例えば,  1)QMSが空洞化している  2)QMSに唯一の正解は存在しない  3)QMS内で,現在必要なことを自分ごととして捉え考える  4)考え始めることは,早ければ早いほど望ましい など,結構うまく当てはまるものです。 現在,品質マネジメントシステムをはじめ環境,情報セキュリティ,個人情報 保護,労働安全衛生,食品安全など,さまざまなシステム規格が制定されおり, 必要に応じ企業内に導入されているかと思います。 これらの規格類に準じシステムを構築したとしても,必ずしも求める能力が あるとは言い切れないことは皆さんご存知の通りです。 システム規格が求めていることは,唯一の正解を示しているわけではなく, 基本的な要素を示しているだけです。それを実現するためには問題を自分ごと とし,また企業目的に照らし,働く人々の能力と構築したシステムがうまく融合 し効果的に機能することが必要となります。 さらに前述のさまざまな例を参考にシステムを考え始めますと,既存のシステ ムから除外された要素,軽視された要素の存在がとても気になります。 除外・軽視されてしまう原因を考えてみれば;  1)気が付いていない  2)気が付いているが理解できない  3)対応できないので,無視する  4)文書化できない要素への配慮がたりない など,少し考えただけでもさまざまな要素が浮かびます。 前述のセブンペイ問題は,導入半年前に大幅な変更があったことが報道され ていますし,またすでにペイペイ問題で同種のスマホ決済システムの脆弱性 が露呈していました。 それにもかかわらず,なぜ同じような不正アクセスを許したのでしょうか。 例えば,導入ありき,不都合な情報の軽視または無視,必要な見直しや検証を 怠ったなどの原因が思い浮かびます。 特に,一旦システム上で除外・無視された要素は,他で事故や問題が生じたと しても,システム上の関心事ではなくなっているので,うまく対応しない危険性 を意識する必要があります。 関心事でなくなった要素は,既存システム上ではフィードバックも改善する 機会も少ないため,システムの外に出て冷静に認識する必要があります。 この点ISO9001品質マネジメントシステム規格では,計画的また定期的に 妥当性確認を行うこと,また顧客先で妥当性確認をすることを求めています。 アウトプットを計画に照らし定期的に妥当性を確認することは,製品やサービ スの妥当性を確認するとともに,それを実行しているシステムの健全性をも 確認する行為です。 また顧客先での妥当性確認は,システム外に視点を移し,現状システム全体の 妥当性を確認する良い機会でもあります。 特に刻々と変化するビジネス環境下では,現状のシステムの健全性をたびたび 外部視点で確認する必要があります。 さて実際には,既存システムだけではうまく対応できないさまざまな変化や, 複雑化した課題に対し,システム的に対応するのには資金も時間もかかります。 それでは業務がうまく機能できなくなることもあるので,その部分は個別の 工夫が必要になります。 システム化の前に,自分ごとと捉え課題に向き合い,注意を重ねる姿勢が必要 ですが,単に一時的な対応で放置しますと問題を深刻化させてしまう危険が あります。 このような複雑な世界に向き合っている例が,地域福祉活動です。ご紹介しま す。 地域福祉の世界は,多様で極めて個人的な世界であり,個々の状況に合わせ適切 な対応が求められますから,システム的にひとまとめに対応することがむずか しい世界です。 この話題は一見すると,マネジメントシステムと縁もゆかりもない世界のよう に見えますが,少し見ていきましょう。 ここで参考にしたのは,「第3次 松戸市地域福祉計画 あなたが主役  〜参加と支え合いのまちを目指して〜」(以降 地域福祉計画)です。 まず,“あなたが主役”という言葉が気になりました。前述の金融庁の報告書 の“自分ごと”という言葉と共通しており,分野が異なるものの複雑な課題に 取り組む場合,同じ観点を持っていることに気が付きます。 また,地域福祉計画では,『…福祉サービスを「特定の人のため」にあるもの と考えることが一般的でした。しかし,本来,だれもが,日々の暮らしの中で, 常に,何らかの課題を抱え,個人の努力や家族,友人,近隣,ボランティア活動の 助け(「自助・共助」)や行政が担う福祉サービス(「公助」)によって, 課題を解決しています。そのため,自助,共助,公助がバランスよく地域の中で, 機能することがとても重要です。』と述べられています。 ここで,“自助,共助および公助のバランスがとても重要だ”との指摘に関心が 向きます。 この指摘をQMSに置き換えれば,まず“自助”とは,個人または各組織が自分 ごととして直面している課題を解決していく姿勢であり,この姿勢があること が全ての前提にあるとみています。 この姿勢がないままシステムとして助け舟を出し続けることは無理であり, 本質を見逃し問題を深化させるでしょう。 同様に“共助”とは,個人的なつながりや組織的な連携で課題を解決していく アプローチと見ることができます。すなわちQMSのシステム的なアプローチが 求められる部分でもあります。 このシステムを構築することは,共助の必要範囲と,その限界を明らかにして くれますので,この段階を経ることにより,初めて支援,すなわち公助の必要な 部分が明らかになってきます。 この流れで中,自助およびシステムの限界を認識することは,その限界を補完 するために必要な事柄と,柔軟に対応していかなければならない範囲も同時に 明らかにしてくれます。これも重要なことだと言えるでしょう。 対応できる限界が明らかになれば,具体的に自助として何をすべきか,その上で 共助(システム)として補完し合う部分は何かなどを具体的に考えることが でき,結果的に総合力を強化してくれるでしょう。 最後に“公助”とは,会社活動で見れば経営戦略,事業計画,資金,人的資源など 経営資源とのバランスを見極めることにも役立ちます。 このように地域福祉の世界では,すでに福祉を特定の弱者のものとはとらえて おらず,福祉支援が必要とならないための予防的対応へと舵を切っています。 同様にQMSも予防処置へと舵を切ってきましたが,今回ご紹介したさまざまな 事例をみていますと,予防処置が不足し,結果としてシステムが十分に機能して いない現実を,あらためて認識させてくれました。 さて,今回はシステムと見なしていたものがシステムとして機能していない例, システム外で起きたことへの対応の不備の例などをとおし,システムの限界を 理解し,これらを柔軟性で補完することの必要を示しましたが,同時に柔軟性の もつ危険性も感じますので,さらなる考察が必要かと思っています。 今回は事例が多くなり紙面が予定よりも増えてしまいました。お許しください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記 ─────────────────────────────────── 令和と改元されてから既に3ヶ月が立ちました。昨年なら連日の夏日でバテ 気味の時期のはずは,今年はどうしたことか,北日本や東日本を中心に低温が 続いています。 新聞記事によると東京都心では,7月前半では気温が30度を超える真夏日 がなく,1986年以来33年ぶりの記録となっているとのことです。 また,日照時間についても全国的に少なくなっており,東京都心では6/28 〜7/18で11.5時間となり平年比14%にとどまっているとのことです。 梅雨明けとともに例年通りの気温になるとの予報となっておりますので,みな さまも体調には気をつけてください。 最後までお読みいただき,ありがとうございました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」── * 配信追加は下記にお知らせください。  mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp * 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会     QMS委員会メルマガ編集部  http://www.ciaj.or.jp/top.html  http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ) * 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(勝田 秀樹) * 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!  qmsmelg@ciaj.or.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C)2004-2019 CIAJ QMS committee All rights reserved.