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━ CIAJ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

 「新しい時代の幕開け,QMSを通して未来のカタチを考える!」

                     2019年3月29日発行 第89号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━
≪ 第89号 目次 ≫

 ・はじめに

 ・QKMアクティブラーニング/BSC(第14回)報告
   〜バランススコアカードの基礎から構築まで〜
    2019年1月17日(木)〜18日(金)(2日間)開催
 
 ・知識活用型企業を目指す/QMSサロン(第26回)
  『未来志向のQMSを考える』
   〜未来を視野に,マネジメントシステムの活用を考えてみる〜
    2019年2月6日(水)開催

 ・異業種見学会 
  『有明水再生センター・東京都虹の下水道館』
    2019年2月27日(水)開催

 ・第7回 JABマネジメントシステムシンポジウムへの参加報告
    『実態から考える第三者認証制度の期待-
              社会に認知され信頼されるには』   
    2019年3月18日(月)開催

 ・ISO 9001関連の最新動向 
   〜 JIS Q 19011の意見公告が行われています 〜

  ・TL 9000コーナー

 ・【連載】知識活用型企業への道
   『QMSにおける知的資産運用への取り組み』

 ・編集後記

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●はじめに ─────────────────────────────────── 桜の花がちらほらと咲き始め,冬色だった並木道に可愛いピンク色が映え春の 訪れを感じる今日この頃になってきました。 会員の皆様は新年度に向けていかがお過ごしでしょうか? さて,新元号の発表がもうすぐですね。「平成」の発表をテレビで観たのが, ついこの間のように感じます。本当に早いものです。 平成は世界経済の激動期で,日本は失われた10年,20年などと言われていま すが,私たち情報通信の業界では技術革新が進んだ時代でもありました。 ですから,決して失われたというネガティブな感情だけではなく,IoT技術が 生活に浸透したからこそ,私たちは便利な毎日を送れていると思っています。 そして,様々な技術革新を支えるためには,当然のことながら品質の確保が 重要になります。QMS委員会ではマネジメントシステムの側面から品質支え, QMSを活かす様々な活動を行っています。 今回のメルマガでも,皆様にお役に立てる内容を盛りだくさんでお届けします ので,是非最後までお読みください。 それでは,メルマガ89号をお届けいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QKMアクティブラーニング/BSC(第14回)報告    〜バランススコアカードの基礎から構築まで〜  ─────────────────────────────────── 1月17日(木)〜18日(金)にQKMアクティブラーニング第14回として,国内 第一人者の横浜国立大学大学院 吉川武男名誉教授を講師に2003年より開催 しているバランススコアカード(BSC)講座を開催いたしました。 BSCの基本的考え方(*)は,業務遂行基本スキルの一つである, “実践的なマネジメント思考” を身に付けるために役立ちます。 また,この思考は,事業企画部門や品質部門に限らず,全ての部署に おける業務の遂行・改善に役立ちます。 *目標を立てるための因果関係・思考のつながり,検討手順の大切さ,   問題に対するアプローチの仕方 ①BSCの基本的考え方は,決して古い考え方ではなく加速度的な社会変化に直面  する今だからこそ,ビジネスリテラシーとして,与えられた材料から必要な  情報を引き出し,活用する能力を高めることもできます。 ②高度・複雑化するマネジメントに必要な思考力をバランスよく体得できます。  柔軟な思考訓練となる良い機会にもなります。 受講者アンケートでは,「自分の所属組織の方針作りやその見方に役立つ。」, 「様々なスケールの組織に対して実用できる。」等の評価をいただきました。 また,「期初の業務計画立案の際に活用していきたい。」,「因果関係のチェッ クとともに,シンプルな思考こそ大切なことがわかった。」,「BSCセミナーは テンプレートを使用しているためか,これまで形にこだわり過ぎ自身誤解して いるところがあった。今回はじめてBSCの本質を正しく理解できた。」という 意見もありました。 これらの貴重なご意見は,次回以降の企画に反映させていただきます。 また,QKMアクティブラーニングへのご意見,ご要望がございましたら QMS委員会宛にお知らせください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●知識活用型企業を目指す/QMSサロン(第26回)報告   『未来志向のQMSを考える』    〜未来を視野に,マネジメントシステムの活用を考えてみる〜 ─────────────────────────────────── 2月6日に第26回「QMSサロン」を開催しました。 山本正 QMS委員会特別委員(MBA,Ph.D)をファシリテーターに迎え, 上記テーマについて話し合いました。 はじめに,QMSは,過去の出来事を起点に課題をフィードバックさせることに より,再発防止と業務の安定化に多大な貢献をしてきたこと,また変化が多い 時代には,堅牢な構造を持つQMSの中にもある程度の柔軟さが求められている ことが紹介されました。 そして,QMSを常に若々しく保つには,知識と情報の循環が滞りなく,迅速に 行われることが必要であるとの投げ掛けが行われました。 まず,主題にもある,未来志向について話し合われました。 ここでは,現在は“未来への作用点”ということで,是正処置,予防処置の 考え方を以下の関連図で示されました。 経験(理解)⇒ 対応(再発防止)⇒ 予防   過去      現在      未来 予防処置は未来の処置をしていることはなんとなく感じていましたが, 具体的に説明を受けると良く分かりました。 すなわち,過去から未来が一直線なら,未来は確定で良いのですが,実際は 想定外がありベクトルがずれるため未来は確定ではないということです。 未来は円錐になっているので,色々な未来があると補足があり,必ずしも図に 示した通りに未来は確定しないというものでした。 これをQMSの運用で考えると,円錐に広がる未来への準備として,QMSでは 「変化させたくない要素」,「変化させたい要素」がせめぎあいになるので, よく考える必要があるというものでした。 これは,QMS事務局としてはかなり耳の痛いものでした。 運用が上手く行っていると,もっと良い方法があるかもしれない場合でも, システムの安定を求めて,上手く行っているシステムは動かしたくないとの 心理が働くだろうと思ったからです。 変化させたくない要素への対応としては,以下の3つの説明がありました。 「明文化」   マニュアル化(手順書,チェックリスト)などは慎重に変える。 「システム化」   システムの要素として取り組む,他の要素との整合性を保つように変える。   (暗黙のシステムが固定されている,どのようにプロセスをつなぎ変える    かが重要,上手く行っているシステムは動かしたくないという反対) 「教育・訓練」   基盤技能・知識の伝承,経験知の継承を上手く行う。   (コンピテンシーを変えたくない,過去から上手く行っているから伝承    したい,経験値,ものの考え方を継承したいという考えがある) 一方,変化させたい要素への対応は,以下の3つの説明がありました。 「変化させるべき点の認識」   何を変化させるべきかの認識(外部環境の変化,経営方針の変化等)。   おかしいと思わないと変化させられない。   深堀りしていくと変化すべき点が出てくる。 「リスク」   得られるメリット(生産性,財務,名声等)。   生じるリスク(失敗コスト,顧客関係・経営資源の損失等)。   認識があってはじめてリスクが出てくる。   リスクをとってチャレンジしないと成功は見込めない。 「変化能力」   経験の呪縛,そこから抜けられるか。   不確実・不安定への挑戦。   新たな知識を獲得する組織的能力。組織として能力を蓄える。   企業風土(失敗を許容する風土,新規探索能力,好奇心,チャレンジ精神) 次に「企業の未来を考えてみる」ということで,SDGs(*)の中で, 「QMSが貢献できるゴールはあるか?」について話し合いました。  * Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標) SDGsを参考にしてQMSを考えて欲しい。 SDGsをQMSに置き換えてみると,QMSを通してゴールに貢献している。 というお話がありました。 SDGsから「未来を考える」と,例えば下記のようなものが挙げられました。 ・未来のあるべき姿の意識(ゴールの意識) ・現状の理解 ・変化すべき箇所の認識 ・資源(人,もの,金,知識,時間,健康,意欲,経験) ・実現可能性の見通し ・システムとして変化させるものを認識 ・個々人が変化すべきものを自覚 そして,QMS内にある情報には以下があるということと共に,知識活用型企業 においては,知識獲得が重要であるとの説明がありました。 ・目指すゴールに関連する情報 ・変化して対応すべき事柄の情報 ・プロセスのさまざまな情報 QMS事務局として,QMSに必要な知識をどのように獲得しているのか, 改めて考える場となりました。 組織として情報,知識を活用するために,QMSで何を行っているのか,何が 必要なのか(不足しているのか)を考えながら,QMSという道具を上手く使い たいと感じました。 次に,未来志向のQMSに関する思考実験ということで, 未来を「QMSを通し思い描く」イメージを共有しました。 QMSがどうなりたいか,経営者/管理責任者/事務局の立場で思い描けるか について,考えました。 未来を思い描くだけでも意味があり,マインドセットの見直しになりました。 確かに,事務局の立場で言うと,上手く行っていることは変えたくないという 意識が頭をよぎります。これが,QMSの固着化や形骸化を招くかもしれないと 思っていても,変えたくない想いが優先してしまいます。 新しい事をするにはメタファー(抽象概念)が必要というお話しがありました。 QMS運用の先に何があるのかなど,メタファーとして考えたこともなかったので, 目から鱗の考え方でした。 思考実験からは,「問題意識を持たないと未来志向のQMSは考えられない」との 解に辿り着き,自分はQMSを過去/現在を中心に観ていたことが分かりました。 また,トップ駆動型の知識マネジメントの例として,三行提報(*)の事例が 紹介されました。  * ある会社の会社をよくする創意工夫で,全社員が「現場で耳にした情報」   「オフィスの改善案」「新製品開発へのヒント」などを三行にまとめて,   毎日,会長・社長あてに提出する仕組み。 これは,以下のような効果があると説明がありました。 ・アナログ的フィルタリングにより,「多様性を許容する組織体質」を形成 ・“今ここにある知”として,「暗黙知の交流の場の提供」を提供 ・経営トップが直接的に指示・コメントするため迅速性・適時性に優れている ・組織の枠を超えて発言し行動する者への「組織的スポンサーシップ」の提供 その他,情報を知識化し循環させるにはイネーブラーが必要とのお話もあり, まとめとして「未来志向のQMSへの配慮すべき点」が提示されました。 ・外部情報に注目する ・未来のゴールを想定する ・未来を思い描き,変化させるべきもの有無を意識する ・QMS内に豊富に在る情報を分析,整理する ・評価指標など変化を促進させるドライバーに注目する ・情報の縦・横の知識循環をイメージする ・情報を知識化させるには,イネーブラーが必要 ・結果として変化を好む企業風土を確立する 参加者からは,以下のような感想が上げられました。 ・現在が未来の作用点(将来を変えるには現在が大事)。 ・本来になりたい・したい目的が大事,その次に現実・現物が大事。 ・自分でQMSを改善する知識を身に着ける,受け身から能動的になる。 ・QMSのメタファーを描けるようにする。  (変わろうという意識を持っていないと駄目である) ・三行提報で社員を前向きにする。当事者意識を持つ。 ・スキルをもった人がコントロールする,イネーブラーは情報共有が大事。 ・未来型QMSを考えてみようと思う。 ・未来を変えるには今しかない。 ・違和感,空気を読む,センシングが重要となる。 ・QMSは意図的にファイヤーウォールを設けないといけない。 ・これからやることに対してのヒントを得られた。 ・QMSに関してメタファーを描く。  (知識を創造するには,メタファーを描くことが大事,考えるのは自由,  大きなメタファーを描く。QMSのあるべき姿を思い描くだけでも変化していく) 次回の第27回は,2019年7月に開催予定です。 QMSサロンは,自身の勉強目的のみならず,会員間コミュニケーション, リレーションを築くことにも最適な場です。 新たな参加者を大歓迎します。 皆様のご参加をお待ちしております。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●異業種見学会 報告   『有明水再生センター・東京都虹の下水道館』 ─────────────────────────────────── 2月27日(水)に,東京都の臨海副都心にある「有明水再生センター・東京都 虹の下水道館」を見学しました。 まず最初に「東京都虹の下水道館」において,下水道の構造や修理の工法,ポ ンプ所,中央監視室の仕事など展示物を中心に見聞きしました。 いつもあたり前の様に使っているシャワーやトイレの排水など,一日で一人 230リットルもの水量になるとのことを聞き驚きました。 下水道管の修理も進化し,今では下水を流しながら内側から塩ビ素材を巻き付 け修復する工法が実現され,約50年もの耐久性を有するとのこと。東京都だけ でも下水道管は16,000kmになり,その維持管理は想像を超えます。 水質検査では水の中に生息する生物を観察して水の汚染度が分かるとのこと。 マクロビオツス(クマムシ)が有名らしいのですが,クマムシはマイナス270度 から150度まで耐えられ,乾眠状態(乾燥状態で休眠した状態)では宇宙空間に さらされても地球に戻って水に戻せばまた活動し始める,という最強ぶりです。 次に「有明水再生センター」地下の浄化施設のツアーでした。 地下の浄化施設(沈殿池)の鼻を突くにおいは尋常ではありませんでしたが, 工程が進むにつれ水が浄化されにおいも無くなっていくことを体感しました。 下水道の役割は,汚水処理にて快適な生活環境の確保,雨水などを排除し浸水 から街を守ること,下水を処理し川や海の水質・地球環境を守ること。 説明員の方の熱心で丁寧な説明と姿勢より,そこで働く人々は上記の任務を 全うし,自分たちが都市を,地球環境を守っていることに誇りをもっている という姿を,参加者の方は肌で感じられたのではないでしょうか。 説明員の方との質疑の中で「技術・ノウハウの継承のための工夫」として専用 の施設・訓練所での訓練があるとのこと,研修だけでなくOJT重視の点は私たち 情報通信業界とも通じるところがありました。 見学後の参加者アンケートから, ・想像以上に各施設・プロセスが無人化(遠隔制御化)され人手が少なく驚いた ・環境を考えたインフラが整っていることの有難さを感じた ・地下に大型の仕組み(浄化施設)が構築されていることが印象的だった ・周囲の環境にそくし建物もモダンなビルで地域社会への配慮を感じた などの声をいただきました。 私たちのライフラインに直接かかわり厳しい品質・安全性が求められる水資源 マネジメントの現場を通して,QMSへの気付きにつながれば幸いです。 これからも,異業種見学から気付きを得られるよう企画してまいります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●第7回 JABマネジメントシステムシンポジウムへの参加報告     『実態から考える第三者認証制度の期待-               社会に認知され信頼されるには』 ─────────────────────────────────── 3月28日に一橋大学一橋講堂で開催された『第7回 JABマネジメントシステム シンポジウム』に参加しましたので,概要を報告いたします。 主催者理事長による挨拶,経済産業省によるゲスト講演, 品質マネジメント システム規格国内委員会副委員長でもあるJAB MS委員会主査による基調講演 にて今回のテーマについての説明があり,それを受けて2つのワーキング グループ(WG)からの検討結果の報告,リスクに関するゲスト講演, 最後に 参加者からの質問に対するパネルディスカッション形式のQ&Aが行われました。 1.挨拶:公益財団法人 日本適合性認定協会 飯塚悦功理事長  第三者適合性評価の構造, 認証制度とは何か, QMS認証の意義,社会に有用な  適合性評価の条件について,解説がありました。  認証の価値は社会的有効活用が行なわれていることで,  ・能力証明(認証結果の利用)  ・脳力向上(認証の副次作用)  の2つが目的となると強調されていました。  一方, 認証の価値として不祥事に対応できるのかに関しては, これまで,  JABとしては, 組織不祥事に関する情報公開,認証機関の不祥事対応プロセス  の確認を行なってきており, 今回は審査で不正行為を発見できるかをWGで  検討し, この結果を発表すると挨拶を締めくくられました。 2.ゲスト講演 「標準化動向と適合性評価の期待」 経済産業省 産業技術環境局 基準認証政策課 総合補佐 上原 英司氏  日本の状況及び,グルーバルな視点での講演をいただきました。 ・標準化を巡る環境変化 ・サービス分野の標準化  ・欧州のサービス規格の例  ・中国のサービス規格の例  ・ISOにおける環境ファイナンス分野の国際規格化の動向  ・イノベーションマネジメント規格(非認証規格)  ・標準化を巡る環境変化(官民挙げた「ルール形成競争」の激化  ・標準化活用支援パートナーシップ制度 ・工業標準化法改正の概要(2018年5月成立,2019年7月施行:法律名を   日本工業規格(JIS)日本産業規格(JIS)に,法律名を「産業標準化法」   に改める,   3. 基調講演「社会で活用される第三者評価制度」   慶應義塾大学 理工学部 管理工学科 教授 山田 秀 氏  マネジメントシステム研究会(MS)のこれまでの活動テーマと中期計画が  示されました。さらに,  ・MS研究会の位置付けはMS認定・認証を取り巻く状況や時代のニーズに   即した新たな価値を認証取得組織及び社会に提供すること。  ・社会から信頼され得るMS認証制度のために考慮すべき事項は, 以下の通り。   ・規格:評価方法が社会の要請と合致しているか   ・関係者にとって納得しうる評価になっているか   ・評価によって対象者が識別されているか   ・関係者, 社会による第三者評価の効用認知 そして, 2018年度のMS研究会におけるWG1とWG2のテーマを紹介いただきました。 4. JAB MS研究会の報告  WGメンバーは,運用組織,審査機関,認定機関,研修機関,コンサルタント,  及び学識経験者で構成され,以下の報告(抜粋)がありました。 WG1:ISOマネジメントシステム認証制度の活用の実態と活性化     − ISO 9001を中心に −         ・ISO 9001の認知度をアンケート調査した結果:      知っている,聞いたことがある人が30%以上     ・金融機関での活用例として,ISO取得企業に対する融資比率の低減が      実際に行われているがあまり知られていない。    WG2:不祥事事例に対する認証制度における対応方法の提言     不正行為はISO 認証制度により     ・発見できる可能性がある。     ・予防できる可能性がある。     ・抑止することが可能である。     ただし, 審査での発見, 予防には限界がある。 5.ゲスト講演「マネジメントシステムにおけるリスク概念の活用」  横浜国立大学大学院環境情報研究員 教授  リスク共生社会創造センター長 野口 和彦氏  リスクに関して以下の解説(抜粋)をいただきました。  ・ISO 31000:2018のリスクの定義:目的に対する不確かさの影響   注記1: 影響とは,期待されていることから乖離することをいう。   影響には,好ましいもの,好ましくないもの,又はその両方の場合があり得る。   影響は,機会又は脅威を示したり, 創り出したり,もたらしたりすることが   あり得る。 ・リスクマネジメントの意義は価値の創出及び保護 ・リスクは内外の環境によって変化する。  ・リスクは未来の指標 ・組織の管理下にあるリスクだけでなく,管理下にないリスクも含めることが   望ましい ・リスク分析の本質はシナリオの多様性を前提とすること   何が起きるか   どの様な影響があるのか   どの様な確率で起きる可能性があるのか   なぜ起きるのか ・機会と脅威は事業目的によって入れ替わる   例:初期の鉄道会社の場合,自動車の出現は競合の増加というリスクだが,     この会社の事業目的を輸送会社とすれば自動車の出現は選択肢の増大     という機会として捉えることができる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●ISO 9001関連の最新動向   〜 JIS Q 19011の意見公告が行われています〜 ─────────────────────────────────── メルマガ第87号(2018年9月28日発行)で,ISO 19011:2018発行の情報を 発信いたしましたが,国内ではJIS化の準備が整ったようで2/20から60日の 期間で日本工業標準調査会(JISC)より以下のURLで閲覧のみ可能で意見受付 公告がされております。   http://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrOpinionReceptionNotice   List?toGnrOpinionReceptionNoticeStandardList  [規格番号] JIS Q 19011  [規格名称] マネジメントシステム監査のための指針  [英文名称] Guidelines for auditing management systems  [概要]   この規格は,組織がマネジメントシステム監査を実施するための指針に   ついて規定したものであるが,昨今の生産及び使用の実態を踏まえて,   規格内容の充実を図るため,改正を行うものである。   主な改正点は次のとおりである。   − 監査の原則(箇条4)において,七つ目の原則として“リスクに基づ    くアプローチ”を追加   − 監査プログラムのマネジメント(箇条5)において,監査プログラム    におけるリスク及び機会の特定や,被監査者の組織の状況の理解等に    関する手引を追加   − 監査の実施(箇条6)において,監査計画の策定へのリスクに基づく    アプローチに関する手引や,情報技術の変化を考慮した,必要な情報    へのアクセスに関する手引等を追加   − 監査員の力量及び評価(箇条7)において,リスク及び機会の監査に    関連して考慮することが望ましい監査員の知識及び技能の追加や,監    査実施へのリスクに基づくアプローチの理解等を追加                        (JISC資料より引用) 今回の改訂は前述の通り,規格としてはISO 9001であれば,ISO 9001:2015 (JIS Q 9001:2015)に対応したもので,リスクに基づく考え方などが追加され たことはもとより,組織の状況に相応しいQMSを構築することが前提であるこ とを忘れてはいけません。 QMS委員会主催の各種イベントのアンケートでいただいた回答では, 2015年版の要求事項への適合はしたものの,組織の状況にあわせることへの 対応はあまりされていない,という状況があります。 ISO 9001の内部監査の要求事項は,以下の通り,組織自体が規定した要求 事項への適合を重視しています。  9.2.1 組織は,品質マネジメントシステムが次の状況にあるか否かに   関する情報を提供するために,あらかじめ定めた間隔で内部監査を   実施しなければならない。  a) 次の事項に適合している。   1) 品質マネジメントシステムに関して,組織自体が規定した要求事項   2) この規格の要求事項  b) 有効に実施され,維持されている。                     (JIS Q 9001:2015より抜粋) そこで,内部監査プロセスが組織の状況に対応した独自の部分の善し悪しを 明確に顕在化できるようになっていることを今一度ご確認いただくことで, 2015年版QMSの再構築の総仕上げの機会としていただきたいと思います。 ISO 19011は,当初,品質と環境のマネジメントシステム規格に対応して開発 されましたが,今や乱立気味の多くのマネジメントシステムに対する監査の ための指針と位置づけが変わりました。 また,附属書SLの開発により各種マネジメントシステムは必要な対応を迫られ ましたが,ISO 19011は同様に監査へのインパクトのある指針となります。 各会員企業では複数のマネジメントシステムを運用されていることと思います。 是非この機会にご一読いただき,会員企業の各種マネジメントシステムの監査 プロセスの見直しにお役立てください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●TL 9000コーナー ─────────────────────────────────── 1.TL 9000説明会の予告  2019年夏(7月前後)に恒例のTL 9000説明会を, TIA(前クエストフォーラム)  とQMS 委員会で共催で開催いたします。  今回は,「TL 9000要求事項ハンドブック,TL 9000測定法ハンドブック」  及び,「TL 9000に関するWEB等の情報の見方」を中心に説明を行う予定です。  ISO 9001:2015年版をベースとした情報通信分野のセクタ規格である  TL 9000の最新の内容を知る絶好の機会です。奮ってご参加ください。  6月頃に,CIAJ「えくすぱーと・のれっじ・セミナー」のHPに正式案内を  掲載予定です。   2.TL 9000ハンドブック 発行予定 TL 9000を推進する団体:TIAビジネスパフォーマンスコミッティ (前クエストフォーラム)は, 3月19日,20日に米国にてリーダシップ会議を 開催いたしました。 この会議で,統合グローバル品質要求事項測定法作業グループ(IGQ)により 確認したTL 9000ハンドブックの最新の発行予定は以下の通りです。 (1) TL 9000品質マネジメントシステム要求事項ハンドブック  R5.6 内容:製品の除外とカテゴリーテーブル6.2の変更         2019年6月発行予定  R5.7 内容:2019年末までにIGQに提出された追加変更の盛り込み         2020年6月発行予定  R5.8 内容:2020年末までにIGQに提出された追加変更の盛り込み         2021年6月発行予定 (2) TL 9000品質マネジメントシステム測定法ハンドブック  R6.2 内容:インドハブより提出された推奨内容及び         2019年6月までにIGQに提出された追加変更の盛り込み          2019年12月発行予定  R6.3  内容:2020年6月までにIGQに提出された追加変更の盛り込み          2020年12月発行予定  R6.4 内容:2021年12月までにIGQに提出された追加変更の盛り込み          2022年以降発行予定
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●【連載】知識活用型企業への道    『QMSにおける知的資産運用への取り組み』 ─────────────────────────────────── 最近,当QMS委員会が開催した異業種見学会に参加し,「有明水再生センター」 および「東京都虹の水道館」を見学させていただきました。 その施設は,2020年の東京オリンピックに向け改装中の有明コロシアム, テニスコートが48面もある「有明テニスの森公園」の隣にあります ご存知のようにこの地域は,お台場,豊洲に接し,東京,銀座,新橋のビジ ネス街にも近いため,以前からなんと高価なテニスコートなのかと不思議に 思っていました。 しかし今回の見学会で,実は公園の下が有明水再生センターの浄化槽だという ことがわかり,思わぬところで謎が解けました。 施設の詳細は省きますが,この水再生センターは東京都の中で最も小さい規模 だという説明を受けますと,下水処理に必要な設備の大きさを実感するもので した。 また,浄化槽から発生する悪臭を含む空気は,フィルターできれいに浄化され 排出されていますし,再生された水の一部は周辺ビルのトイレ用の水として 供給されていると説明を受けました。 また,この施設は宇宙船を模しデザインされたビルであり,まさかそのような 設備が地下にあるとは見えませんし,実際モダンなオフィス街にあっても 何らの違和感もありませんでした。 一般的にこのような施設は,人がいない町はずれに目立たないように設置され るのでしょうが,堂々と町中に設置されております。 さらに,都会には稀な広々とした空間を提供し,機能以外の効用も地域社会に 提供しているように見えました。 さて後日,都庁関連の知人にその話をしたところ,有明水再生センターは 1996年に予定されていた「世界都市博覧会」に間に合わせるため,通常の工事 期間の半分程度で完成させたと聞きました。 しかし,その後博覧会の中止が決定されガッカリしたとの話を聞きました。 まさか当時は,オリンピック施設として再び注目されるとは,だれも思って いなかったのではないでしょうか。 この話をキッカケに,幻に終わった世界都市博覧会のことを少し調べてみま した。さまざまな点で意外な結果として現在に影響していることを知りました。 例えば,最近注目を集めました築地市場の豊洲移転は,博覧会が中止となった ことにより,あまた土地の再利用案として浮かび上がったと聞きますし, また当初は遊園地や関連施設として計画された場所が,東京ビックサイト,日本 未来館,水の科学館等など文化的な施設に生まれ変わったともいわれています。 ご存知のようにこの地域は,リニア新幹線の始発駅となる品川駅,また新設 される高輪ゲートウェー駅,さらに拡張計画がある羽田空港などに近いため, 海外,国内へのアクセスが非常に便利な場所に位置しています。 ゆえに,現在ならばビジネス関連のビルが林立する地域となるのでしょうが, すでに公園,スポーツ施設や文化的な施設があるため,他のビジネス街とは少し 異なる発展が期待できます。 また,これらの地域は,ガス,電気,上下水道などのインフラは計画的に地下に 設置されていますので,オフィス街はとてもスッキリとしたものとなって います。これも当初の博覧会計画が及ぼした結果だと言えます。 このような事柄をみてみますと,当時は失敗と見なされる事柄でも,その基盤が しっかりとしていれば,その後の応用により思わぬ果実を実らせることもある ことを実感するものです。 しかし,過去の失敗や変更が,その後どのような影響を与えるかを,その時点 では想定することは容易ではありません。そこで今回は,過去と未来に関連した 話題を少し考えてみたいと思います。 私たちは時の流れを“過去—現在—未来”という三つの区分で見ています。 当たり前ですが,過去の延長線上に現在があり,現在の延長線上のどこかに 未来があるとしています。 また,過去は実際に起きた事柄で確定したものであり,未来はこれから起きる ものなので不確定なもととらえています。本当なのでしょうか。 今回の事例から皆さんもお分かりのように,今何をするかということで過去が 見直され,過去の出来事に新たな意味を発見するでしょう。その結果をうけ 描ける未来の姿も変わる場合があるということです。 前述の博覧会中止の例が示すように,過去の出来事も,それをどのように理解し 次の行動に結びつけるかにより,過去の出来事の意味が変わってくるものです。 また同時に未来像も変わるものです。 このように考えますと,過去の出来事自体は確定的ですが,その理解と意味づけ は時点ごとに変化し,その意味で不確定的な要素を持っていると考えることが できます。 また,過去の出来事を再解釈し新たな意味を付与することにより,未来に備える ことにもつながります。未来の不確実性を軽減してくれます。 これに関連し話を変えますが,企業内にある手順書,基準,記録類などを,確定 したものと考えることはリスクを導く可能性が出てきます。 状況が変化すれば意味も価値も変わりますので,安定し確定しているとみえる 事柄でも,時点ごとに必要に応じ再評価し見直し続ける必要があることは お分かりのとおりです。 これを放置しますと,業務の固着化を誘発し,また新たな発展の種をつぶす可能 性も考えられます。さらに,思考停止型社員を増産し,結果としてさまざまな 変化に対応できない形骸化した組織をつくりかねません。 ゆえに現在の状況に応じ,確定しているとみえるものも再度意味づけし, 整理・修正すことが予防的意味からも必要です。 このように見ますと,過去を見直すことは将来に備える基盤となるもので, 未来に備えるためには,まずは過去を精査し見直すことが肝要だといえます。 それをおこなえるのは,過去と未来への作用点である「現在」でしかできません ので,今日の行動を大事にしたいものです。 このように見ますと,「現在」という時点は,事実的な事柄を軸にした「過去」 という引力と,どうなるかわからないという「未来」のもつ不確実性のもつ引力 の狭間にあり,過去と未来の引力の綱引きの緊張関係の中に「現在」が保持され ているように思えます 過去を放置すれば,未来という不確実性に振り回されますし,過去にこだわり すぎれば,不確実性により生じる新たな価値を生み出す機会を逃すかもしれ ません。この緊張感の中で現在を過ごさなければ意味がないかと思います。 さて今回は,異業種見学会への参加を契機に思わぬ話へと展開しました。 現場に行かなければ気が付かないこともありますので,今後もさまざまな 場面に参加していきたいと思っています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記 ─────────────────────────────────── 平成も後1ヶ月を残すのみとなってきており,またひとつの時代が終わりを 迎えるような思いがあります。この元号は,645年の「大化」よりこれま で247つ定められ,それぞれの元号には,いろいろな意味を込めたものと なっております。 「平成」の名前の由来は,『史記』五帝本紀の「内平外成(内平かに外成る)」, 『書経(偽古文尚書)』大禹謨の「地平天成(地平かに天成る)」からで 「国の内外,天地とも平和が達成される」という意味になっています。 実際の平成は,バブルや失われた20年などさまざまな呼ばれ方をするよう な激動の時代ではなかったかと思われます。 次の元号についてもどのような意味を込めた言葉になるのか,発表直前では ありとても気になります。また,次の時代はどんな新しいことが起こるのか 今から楽しみです。 最後までお読みいただき,ありがとうございました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」── * 配信追加は下記にお知らせください。  mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp * 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会     QMS委員会メルマガ編集部  http://www.ciaj.or.jp/top.html  http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ) * 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(勝田 秀樹) * 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!  qmsmelg@ciaj.or.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C)2004-2019 CIAJ QMS committee All rights reserved.