ロゴ

メルマガ

HOME→メルマガ

            

━ CIAJ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

「2018年度もQMS委員会の企画と継続的“学習”で,
                  あなたと会社に金メダルを!」

                       2018年3月30日発行 第84号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━
≪ 第84号 目次 ≫

 ・はじめに

 ・QMSサロン(第24回)のご報告
   『QMS内にある情報・知識の活用を考える』
   〜QMSにおける知識循環と知識展開について〜

 ・異業種見学会の報告
   『独立行政法人 造幣局 さいたま支局』

 ・QKMアクティブラーニング(第11回)の報告
   『学習するマネジメントシステム』

 ・第6回 JABマネジメントシステムシンポジュウムへの参加報告
    『2015年版の有効活用と構築のポイント』

 ・ISO 9001関連の最新動向
   JIS Q 9002:2018の発行 と JIS法を含む法律改正の報告

 ・TL 9000コーナー

 ・【連載】知識活用型企業への道
   『QMSにおける知的資産運用への取り組み』

 ・【緊急特報】「"品質立国日本"を揺るぎなくするために
          〜品質不祥事の再発防止を討論する〜」の報告

 ・編集後記

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●はじめに ─────────────────────────────────── この冬の気候は,最初は全国的に気温は低めで,日本海側では降雪量が多かっ たのですが,太平洋側では日照時間が長かったため,全体としては歴代10位の 気温の高さと説明されていました。 その結果,桜前線が早いところで例年より10日近く早く進んでいるようです。 そして,東京地方は桜が満開の状況で,一気に春の訪れを感じていますが,皆 さんのお勤め先やお住まいでは如何でしょうか。 この冬は,ピョンチャンオリンピック・パラリンピックの話題は外せませんが, メダルの数もさることながら,選手のみなさんが着実に実力をつけて,競技に 取組む姿はハイレベルかつ美しさを感じるもので,思わずテレビに釘付けに なった方も多かったのではないでしょうか。 QMS委員会では,3月8日のQKMアクティブラーニングの開催をもって2017年度の イベントは予定通り全て終了しました。全般的に各イベントの参加者は,僅か ながら増加傾向でリピータの方も増えてきています。 これは,事業とQMSの一体化が求められるISO 9001に対する,皆さんの自己研鑽 への意識の変革ではないかと思っております。 引続き,QMS委員会の各種教育事業をご活用いただけるようお願い致します。 それでは,メルマガ84号をお届けいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QMSサロン(第24回)のご報告    『QMS内にある情報・知識の活用を考える』    〜QMSにおける知識循環と知識展開について〜 ─────────────────────────────────── 2月23日に第24回「QMSサロン」を開催致しました。 山本正 QMS委員会特別委員(MBA,Ph.D)をファシリテーターに迎え,表題の テーマについて話し合いました。 今回は,QMS内で行われている情報・知識の循環,知識展開および知識創造など を視野にいれつつ, QMSにおける情報・知識の活用について考えてました。 まず最初に,「働き方の変遷」として,科学的管理法が発表されたテイラーの 時代から,デミング博士の統計的品質管理,ISO 9001導入の近代企業の管理 までの概要説明がありました。 面白かった点は,生産性は規格書,基準書,手順書など,作業を測るものを 最初に作らないと向上しないという話と,メイヨーのホーソン工場での実験の 話でした。メイヨーは,人はどうしたら働くかを8年間研究し,共に働く人達の 仲間意識と集団規範が,生産性に影響するとの結果を得たということでした。 次に,「情報と知識の違い」,「働き方の違い」の説明がありました。 情報で動かされる人は,他律的で自発的学習が難しい人で,知識で行動する人 (ナレッジワーカー)は,自律的であり,自発的学習と成長があるということ でした。情報と知識はうっかりすると混同しがちですが,このような説明を 聞くと違いがはっきりしました。 QMSの知識循環は,「仕事には,マニュアルに従って行うものと,マニュアル 化できないものが混在している」とのことで,人々は以下の2つに分類される とのことでした。 ①マニュアル・ワーカー:他律的,情報による行動 ②ノン・マニュアル・ワーカー:自律的,知識による行動 企業内で知識を循環させるために,トップの人たちは,ナレッジマネージャー になって欲しいとのメッセージがあり,規範となる企業「3M:スリーエム」の チーフ・プロセス・オフィサ(CPO)の事例紹介がありました。以前,QMS委員 会の異業種見学会でも3Mを見学しましたが,まさにナレッジワーカーが,自律 的に働く企業であると感じました。それは,3Mが知識をどうやって組織に循環 させるかのマネジメントに長けているからであり,マニュアル・ワーカー, ノン・マニュアル・ワーカーを上手くマネジメントする仕組があるからのよう に見えました。 山本氏の説明で,衝撃的かつ納得したのは,「ナレッジ・マネージャーの役割 は企業の意図した結果を達成するために,QMSのフレームワークを活用し,知識 をシステム的にイネーブルし,マネジメントすることを考えることであるが, 日本は,この20年間,知識をイネーブリングすることを怠ったのだ」という ことでした。 「近年,日本企業が業績不振に苦しんでいるのは,日本企業が知識創造の イネーブリング条件に十分に注意を払わなかったことにある」という言葉は インパクトがありました。 日本では,失われた20年とよく言われますが,ナレッジ・マネージャーの立場 にあるトップ層のほとんどが,知識創造に関して社員の成長・自立を促すこと をしてこなかったということです。 失われた20年は,マネジメント層の功罪なのかは,分かりませんが,当時は 経費削減は「教育費」からというのは当たり前でしたから,とても興味を惹か れるお話でした。 この話題に続き,その条件として「メタ認知能力の要素」について説明があり ました。  知る:物事の内容を理解する。  理解:物事の道理を悟り知ること。意味をのみこむこと。  知識:ある事項について知っていること。  認知:事象について知っていること,ないし知識を持つこと。 メタ認知能力を整理すると,“知る” → “理解” → “知識” → “認知” を要素とした知識イネーブリングの循環過程が,仮説として想定できるとの ことでした。メタ認知というと,「認知を認知する」,「知っていることを 知っている」と言われ,やや分かり難かったのですが,この要素説明を通じて 理解が深まりました。 知識スパイラルとして,「SECIモデル」と「QMSと知識イネーブリング」の 説明があり,以下の通り,関係性がとても良く分かりました。  共同化(Socialization):コミュニケーション  表出化(Externalization):文書化した情報  連結化(Combination):文書化した情報の連携  内面化(Internalization):文書化した情報の個々人の理解 山本氏の「まとめ」で,既存の知識をイネーブリングして循環させるマネジ メントを,今後QMS内で考えなければならないとのお話しがあり,QMSは,別な 角度から見れば知識の循環システムであることが理解できました。 また,参加者からは以下のような感想があり,大変盛り上がったサロンでした。 ・実施した仕事が知識として残っているのか,役に立つ状態になっているのか  気になった。 ・QMSについて国内と海外のベンチマークしたことを思い出した。 ・知識を組織で循環させるには,教育,コミュニケーションが大事だと分かった。 ・トラブルを起こして振り返り,なかなか成果が出ない。ある部署は,知識が  引き継がれるが,別な部署では知識が引き継がれない。 ・コミュニケーションで知識伝達で共有して次につなげることが重要だと思った。 ・コミュニケーションは,知識を循環するために必要な過程だと分かった。 ・情報と知識の違いを知ることが出来た。 ・知識の活用がされているか,知識として使えているのかが気になった。 ・製造現場には,マネジメントがきちんと見ているというアナウンスをする,  良かったことを褒めてあげる。認知をきちんとすることで正当性を出せると  思う。 ・産業史とISOの対比は良かった。 ・知識のイネーブリングは良い。知識はあるが実現可能性に持ち上げることが  難しい。 ・SECIモデルの連結化を使って,要求事項の近しいもの同士の手順の連携を  考えるなど,文書化を見直すきっかけになると思った。 今回は,知識というテーマに参加者の関心が集まり,情報・知識の活用に 対する意識の高さを強く感じました。 毎回メルマガで,ダイジェストをお伝えしていますが,参加しているからこそ 味わえる素晴らしさまでは,お伝えできないのが残念です。 一度参加すれば,QMSサロンの良さをお分かりいただけことでしょう。 是非,メルマガ読者の皆様にも,“場に参加するからこそ腑に落ちる”感覚を 直接味わっていただき,自身の知識として持ち帰っていただきたいと思います。 次回は,2018年7月(第25回)に開催の予定です。 QMSサロンは,自身の勉強目的のみならず,会員間コミュニケーション, リレーションを築くことにも最適な場です。新たな参加者を大歓迎します。 皆様のご参加をお待ちしております。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●異業種見学会のご報告    『独立行政法人 造幣局 さいたま支局』 ─────────────────────────────────── 毎回好評を戴いております異業種見学会ですが,今回は2月27日に独立行政法 人造幣局さいたま支局の見学を企画し20名の方にご参加いただきました。 造幣局さいたま支局は平成28年に現在のさいたま市に移転し,東日本唯一の貨 幣製造拠点となります。1円から500円までの6種類の通常硬貨のほか,全47都 道府県の記念貨幣や,表面に光沢を持たせ模様を鮮明に浮き出させる等の付加 価値を持たせたプルーフ貨幣の展示・製造工程などを見学できました。特に勲 章の製造工程は細かな手作業となり,まさに匠の技そのものでした。 造幣局は全体でISO 9001の認証を取得されており,高い技術を有していれば その必要はないのではと考え質問をしてみましたが,目的を持った活動に改善 を加えていくことは必要なことで,この活動を通して成果もでているとのこと でした。質疑応答を通して,技術の伝承はOJT中心で行われること,コスト度 外視で品質第一かと思いきやQCDをしっかり意識されてること,QCサークル (小集団活動)による直行率の改善検討など,私たち民間の企業と共通する点 も多く感じられました。 この見学で,職員の皆様は,貨幣を製造する仕事に,自信と誇りを強く持たれ ていることが伝わってきました。 今回の見学会についての参加者アンケートでは,ほとんどの方より「期待に沿 う内容だった」との回答をいただき,貨幣/勲章/メダル等の高品質な製造技術 の高さに関心した,通常貨幣だけでなく付加価値を持たせる製造/管理に驚いた など,多くの感想をいただきました。 見学コースでは,職員の方が実際に作業される様子が見学できただけでなく, 製造ラインが停止している箇所では,ビデオで製造の様子が見学できる工夫が されていたことや,職員の方の丁寧な説明があり,工場見学後に博物館で現物 をまじかに見ることができ,理解が深まった点も好評価の要因と思っています。 参加者の皆様からいただいた異業種見学会への期待では,製造業に関する希望 が多く,「普段見られない/個人では見学できない業種・場所」の見学を期待 する声を複数いただきました。今後の企画検討時に,参考にさせていただき ます。 今回見学させていただいた造幣局さいたま支局は,通常の見学コースであれば, 個人でも見学可能とのことです。今回参加いただけなかった方にも,是非,足 をお運びいただければと思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QKMアクティブラーニング(第11回)のご報告    『学習するマネジメントシステム』 ─────────────────────────────────── 3月8日に第11回のQKMアクティブラーニングとして,株式会社イノベイション 代表取締役 山上裕司 様をお招きし,「学習するマネジメントシステム」を テーマにワークショップを開催いたしました。 今回は,年度末の多用な時期ながら,16名に参加いただきました。 タイトルは期待通り,山上講師ならではのユニークなもので,テーマへの興味 と共に,組織のQMSを何とか有効に活用したい,そして「また,山上講師の話を 聞きたい!」という方々にお集まりいただきました。 内容は,好評な「クリーンランゲージ」の演習と「QMSについて時間軸を用いて 考えよう」の豪華2本立てでした。 講義はアナログを合言葉に,「時間軸」を設定して「システムとは何なのか?」 を探っていくことから始まりました。 模造紙に1980年代〜2020年までのISO規格の変遷を示し,参加者は,その年代に 思うことをポストイットで張り付け,自分はそのボードから何を読み取るのか? ファシリテータは,ポストイットの内容を紹介しながら,心に響く1枚を選び, それを書いた人がクライアントになり,「クリーンランゲージ」の質問セッシ ョンへ。 クリーンランゲージと初めて接する参加者が多く,二人一組のワークを通して, ゆっくり,まったり,相手の言葉を尊重する,空間を大切に扱う,という雰囲気 作りから入り,前提なくシステムのモデリングを行い,人の考えや本質を理解 していく質問スタイルを学びました。 その独特の質問方法に戸惑う方もいらっしゃいましたが,ファシリテータ役の 時は「自分ならこう答えるだろう」と想定していたのに,いざクライアント役 になって同じ質問をされると,考えもしていなかったことを回答してしまった そうです。これはまさにクリーンな,自身の表面上ではなく,深層にあるもの を引き出されたと驚かれていたのが印象的でした。 ・システムは,自分自身を見ることが出来ないと思いませんか? そして自分  の居場所も見失ってしまう。良いも悪いも外からしか見えないのです。 ・ISOはドキュメントの監査ではなく,人に目を向けてはどうですか? ・内部監査で相手に語らせていますか? ・「点」で見る内部監査で終わらず,「時間軸」で表すと,流れの中にマネジ  メントシステムがあります。それが組織の状況なのです。 山上講師は要所要所で,このような「はっと」する気付きに繋がるワードを 心地良いけれども,凛とした声で参加者に語りかけられ,最後に「時間軸を 持つコンテクスト,それらに基づく“視点,価値観,意図”により,システム に意味が宿る。事業組織の目的と受益者の織り重なり」という言葉をいただき ました。 私自身は2度目の参加ですが,初回に「クリーンランゲージ」という質問方法 に衝撃を受け,すっかり魅了されてしまいました。 日々の仕事で課題と向き合う時や,難しい回答を求められたときは,まず自分 に「それはどんな○○ですか?」「それはどこにありますか?」「○○で何が 起きますか?」「○○で何が起きてほしいですか?」と問いかけています。 自問・自答もOKだそうです。今までは,質問に即答しなければいけないと, 考えていましたが,相手に「それはどんな○○なんでしょう?」と問いかけて, 相手も自分も有意義な解が見出せるような試みを始めました。 受講者アンケートでは,「クリーンな質問を心がけることにより,相手の本音 を引出せそうな気がする」「自分の考え方やイベント,印象に残ったことを 時間軸で振り返ることの大切さに,あらためて気付いた」「組織のQMSを,どう 改善していくかは,今日のクリーンランゲージで,自分がどうしたいかである ことが分かった」「マネジメントシステムに対する取り組みや,今後どうした いか,何が大切だと思っているか等,グループワークで熱い思いを聞くことが できた」等の評価をいただきました。また,学びの場として足りない部分に ついて,「完全ではないかも知れないが,毎回参加する事でメリットがある」 という意見がありました。 ところで,「月刊アイソス3月号」では,今回のQKMアクティブラーニングと 同じテーマで山上講師の特集記事が掲載されています。また,その一部にQKM アクティブラーニングについて,山上講師とQMS委員会委員長との座談会の記 事が掲載されています。ご興味のある方は,是非,ご覧ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●第6回 JABマネジメントシステムシンポジュウムへの参加報告     『2015年版の有効活用と構築のポイント』 ─────────────────────────────────── 3月20日に有楽町朝日ホールで開催された『第6回 JABマネジメントシステム シンポジウム』に参加しましたので,概要を報告いたします。 テーマは『2015年版の有効活用と構築のポイント』で,主催者理事長による挨 拶,品質マネジメントシステム規格国内委員会副委員長でもあるJAB MS委員会 主査による基調講演にて今回のテーマについての説明があり,それを受けて3つ のワーキンググループ(WG)からの検討結果の報告,最後に参加者からの質問に 対するパネルティスカッション形式のQ&Aが行われました。 1. 挨拶:公益財団法人 日本適合性認定協会 飯塚理事長 2015年改訂に係るJABの使命として,「第三者適合性評価が社会に有用」と するために,以下を継続して推進すると挨拶がありました。  ・認証基準の適切な適用への誘導  ・認証制度の有効活用  ・能力向上 また,その中で以下について強調されていました。  ・第三者適合性を受けていた組織の不祥事が多発,社会から信頼される   第三者適合性評価でなければならない  ・審査基準が変わったのを社会は認識しているか  ・第三者適合性評価制度の改善と発信の重要性  ・組織の不祥事防止のためにトップマネジメントが果たす必要条件がある  ・トップインタビューも審査であることの認識  ・標準の定期的改訂を実践する重要性 2. 基調講演『マネジメントシステムの第三者認証制度が目指すべき姿』   慶應義塾大学 理工学部 管理工学科 教授 山田 秀 氏 マネジメントシステム研究会(MS)のこれまでの活動を振り返り,「社会から 信頼され活用される第三者認証制度」を目指す中期計画が示されました。 社会に信頼されるとは「社会が認証の有無により行動を変えている」ことで, 信頼獲得には検討すべき項目は多数であるが,以下の4項目が考慮すべき事項 であると説明がありました。  ・規格:社会の声の代弁となる基準文書  ・組織の運用:事業目的に役立てる自律的な運用  ・認証,認定審査:逐次審査から脱却し事業目的に応じた審査  ・制度の整備,発信:内容,有効性の社会への発信 3. JAB MS研究会の報告 WGメンバーは,運用組織,審査機関,認定機関,研修機関,コンサルタント, 及び学識経験者で構成され,以下の報告がありました。 WG1:リーダーシップに着目した2015年版QMS      − 組織の飛躍を索引するリーダーシップ − WG2:リスク及び機会で組織を活性化するEMS WG3:認定認証制度の価値向上への提言   なお,主催者よりこの日の模様は,月刊アイソスの特集で紹介されるとのこと でした。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●ISO 9001関連の最新動向   JIS Q 9002:2018の発行 と JIS法を含む法律改正の報告 ─────────────────────────────────── 1. JIS Q 9002:2018の発行 このコーナーでたびたびご報告してきたJIS Q 9002:2015が,1月22日に発行 されました。 品質マネジメントシステム—JIS Q 9001の適用に関する指針       Quality management systems           -- Guidelines for the application of JIS Q 9001 国際的には,ISO/TS 9002(品質マネジメントシステム—ISO 9001の適用に 関する指針)という技術仕様書として発行されましたが,ISOの技術仕様書に 対するJISの規定により,日本独自でJIS規格化されました。 内容的には,JIS Q 9001:2015についての手引を,箇条4〜箇条10に箇条ごと に関連付けながら提示していますが,附属書A及びBの手引はありません。 2. JIS法を含む法律改正案の閣議決定についての報告 2月27日付けで,工業標準化法改正部分を含む,不正競争防止法等の一部を 改正する法律案が閣議決定されました。国会に提出し,今年4月以降,国会 で審議をされる予定です。主な改正事項等は以下の通りです。 ① JISの対象拡大・名称変更  ・標準化の対象にデータ,サービス等を追加し,「日本工業規格(JIS)」を   「日本産業規格(JIS)」に,法律名を「産業標準化法」に改める。 ② JIS制定の民間主導による迅速化  ・一定の要件を満たす民間機関からのJIS案について,調査会の審議を経ず に制定するスキームを追加する。 ③ 罰則の強化  ・認証を受けずにJISマークの表示を行った法人等に対する罰金刑の上限   を1億円に引き上げる(現行は自然人と同額の上限100万円)。 ④ その他の措置  ・法目的に国際標準化の促進を追加する。  ・産業標準化及び国際標準化に関する,国,国研・大学,事業者等の努力   義務規定を整備する。 プレスリリースは以下に掲載されております。 http://www.meti.go.jp/press/2017/02/20180227001/20180227001.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●TL 9000コーナー ─────────────────────────────────── 1. クエストフォーラム リーダーシップ会議 1月28日から2月3日に米国ダラスにてクエストフォーラムリーダーシップ会議 が開催されました。 各ボードメンバから提案された以下の課題を2018年に検討していくことが確認 されました。[()内は提案会社 ]  ・ 持続可能性について   (AT&T, Telus, Huawei, Arris)  ・ サイバーセキュリティについて   (Great Plains, RigNet, Arris)  ・ アジャイル:平行開発,ディブオプス:開発と運用のプロセスについて    (Fujitsu, Nokia, Cisco)  ・ Software Metrics(ソフトウェア測定) について   (CenturyLink, AT&T, Telus, Nokia, Cisco)  ・ その他 また,日本から提案した以下の課題も,上記と同様に今後検討してくことに なりました。  ・TL 9000におけるアジャイル開発プロセスのガイドラインやプロジェクト   計画の簡略化などの必要性    ⇒ 将来はTL 9000ハンドブックへ反映  ・フィールドにあるレガシー機種におけるTL 9000品質測定のEOL(製品収束)   についての柔軟性   ⇒ 将来はTL 9000ハンドブックへ反映  ・NFV(ネットワーク機能仮想化)における   Network RAS(信頼性,可用性,保守性)機能の測定やベンチマーク   ⇒ NFVの作業グループで検討 2. TL 9000要求事項ハンドブック アジャイル(Agile:平行開発), デブオプス(DevOps:開発と運用) および,その他,新規の業界標準開発手法を活用している(しようとしている) 組織向けのTL 9000要求事項ハンドブック(R6.1:R6のセクション8.3及び8.6を 更新)が発行され,日本語翻訳版も公開されました。 内容詳細は,クエストフォーラム日本ハブのWEB   http://qfweb.questforum.org/japanhub/index.htm をご参照ください
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●【連載】知識活用型企業への道    『QMSにおける知的資産運用への取り組み』 ─────────────────────────────────── ピョンチャン冬季オリンピック2018が,金メダルが4つ,銀メダルが5つ, 銅メダルが4つと過去最大のメダル数を獲得し,感動と興奮を呼び起こしつつ 無事に終わりました。 実は開催前はあまり関心がわきませんでした。なぜなら,前回のフィギュア スケート金メダリストである羽生選手のケガがあり,またジャンプの高梨選手 も,このところ成績が思わしくありませんでした。 唯一,女子スピードスケートが記録を伸ばしており,少し関心がわきましたが それ以外は期待が持てないため,自然と関心も薄れていきました。 しかし,オリンピックが始まってみるとモーグルで原選手,スキージャンプの 高梨選手が,続けざまに銅メダルを獲得し,日本選手団も勢いが出てきたような 気がしました。 そのような中,前評判が高かった女子スピードスケートや団体パシュートでは, 小平選手が金・銀メダル,髙木(美帆)選手が金・銀・銅メダル,そしてあまり 注目されていなかった髙木(菜那)選手が金メダル2つの快挙を成し遂げました。 また,フィギュアの羽生選手も金メダルを獲得し,66年ぶりの男子フィギュア での連覇という快挙をあげると同時に,宇野選手も銀メダルに輝き,日本選手 として初めてワンツー表彰台といううれしい結果となりました。 さらに,女子カーリングチームも銅メダルに輝きました。特にメダルをかけた 最後の試合は視聴率も25%と驚くべき高さであり,試合を重ねるに従い急速に 関心が高まったことがわかります。 このように大きな成果を残した今回の冬季オリンピックでしたが,競技内容も さることながら印象的だったのは,選手の皆さんのコメントでした。 なぜなら,今回メダリストになった選手の多くが,過去のオリンピックで失敗 した苦い経験を持っているからです。 国内代表に選出されるだけでも大変なことですが,オリンピックは国を代表する 重責もあり,そこでの敗北経験は心が折れてもおかしくない状況だったのでは ないでしょうか。そのような状況から自分を信じて立ち直り,やるべきことを 探求し,結果的に獲得したメダルなのですから,その眼の輝きとともに心に残る コメントがとても印象的でした。 そのコメントには気負いや変な謙虚さもなく,自分がやるべきことをやり切った ことへの確信と満足感があり,何かを成し遂げてきた人々だけが持つキラリと した雰囲気と,すがすがしさを感じることができました。 さらに,これまで支えてくれた周囲の人々への感謝にあふれていましたので, なにかとても良いものを見たような気がしました。 このような人々は天性の身体的能力だけでなく,努力を重ねることができる才能 にも恵まれているのだと思います。仮に結果が出なかったとしても,本質はメダ リストなのだと思います。すごいものです。 一方,オリンピック開催中でしたのであまり大きな話題になりませんでしたが, 最年少でプロ棋士となった藤井聡太四段が五段に昇格し,直後のトーナメント で,永世七冠を達成した羽生棋士に勝利し,その大会で優勝しました。 その結果,五段に昇格後2週間で六段に昇格し,最年少記録を再び更新しました。 前代未聞の記録です。 その際のコメントを聴くと,中学生ですが風格すら感じるものがあり,淡々と 話す内容は人の評価に左右されない強い自分自身があり,オリンピアとも通じる ものを感じました。 スポーツや将棋などの勝負事は勝ち負けが明確です。例え趣味のスポーツでも, 負けると悔しさがこみ上げ負けた理由を探すものです。人によっては,他の人に 失敗の原因を見つけ出す人がいますが,自分自身に眼を向けていかなければなら ないのでしょう。 さて,このように最近立て続けに歴史的快挙が続出していますが,その背景に 何があったのでしょうか。たまたまの偶然なのでしょうか。 20世紀初頭に心理学のカール・ユングがシンクロニシティ(synchronicity)と いう概念を提示し,同じような出来事が,場所や分野を超え同時期に起きると いうという共時性を提唱しております。 その主張は,人間同士は集団的無意識によりつながっており,人々の心の奥に 入り個性化するというような内容かと思いますが,その主張が正しいかどうかは 別にしても,偶然とは言い難い事柄が時々同時期に起きることがあります。 現代では,世界の片隅で起こったことでもインターネットを通して瞬時に世界中 に拡散しますので,ユングが提唱した集団的無意識が瞬間的に形成されてしまう 可能性を感じます。 場合によっては,ある出来事をきっかけに社会的ムーブメントとして機能する こともあり得ると思います。 一時的なムーブメントもありますが,例えばゆとり教育(1987年〜)を受けた 世代が,世界的経済の低迷に遭遇し,就職氷河期を経験し,個人を無視した 勝ち組・負け組といった理不尽な概念が社会的に定着するなか,「さとり世代」 とも言われる個性的な人々が生まれるムーブメントがあったといわれています。 その世代の子供さんたちの中に,人の評価に左右されない個性的で,何かを探求 する卓越した人材が生まれてきているような気がします。 そうであれば,親の世代のムーブメントが反面教師となり新たなムーブメントを 静かに生み出し,個性的な世代が育ちつつあるようにも感じます。 さて話題を変えますが,ビジネス環境の変化が激しく,安定した取引もままなら ない現在の競争環境においては,他と差別化する何かを探求し実現する組織的な 能力が求められているかと思います。 前述したスケート競技のチームパシュート(団体追い抜き)を例とすれば, “パシュート”(pursuit)とは,追撃,追跡,研究という意味で,その動詞 “pursue”は追い求める,追及する,やり通すなどの意味であることは, ご存じのとおりです。 パシュート競技は,3人が入れ替わり先頭に立ち風よけになりつつ,チーム全体 のパフォーマンスを最大限に維持し,チームスピードを追い求める競技です。 また,勝敗は最後の選手がゴールした時間であり,かなり戦略的チームプレー です。 日本チームは,一糸乱れぬフォーメーションとすばやく先頭を交代する技術が 卓越しており,個の力をチームの力に転換する能力を持っていました。 チームプレーとしてのリレーションシップと技術を追及していかなければ, 今回の金メダルの勝利はなかったのではないでしょうか。 これを企業活動に置き換えれば,それぞれのプロセスには求められる機能と質が 存在します。それらを適宜必要に応じ効果的に活用して行くためには,それらを まとめ上げるフレームワークをパシュートする必要があるように見えます。 そのフレームワークの一つにISO 9001国際規格に準じた品質マネジメントシステム (QMS)があるとみています。規格要求事項には直接は示されてはいませんが, 企業目的にそくし,強化すべきプロセスと他のプロセスとのリレーションシップ を探求し,戦略的にQMSをカスタマイズすることは重要なことです。 これに関連して話題を少し展開しますが,10年ごとに見直され2020年実施予定の 文部科学省(文科省)の新学習指導要領(平成29年3月公示)が最近公開されま した。 その中で興味を引いたのが,今回から総合的学習の選択科目の中に,例えば理数 探求,地理探求,日本史探求など,「探求」という言葉が組み込まれたことです。 その目標は「横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して,自ら課題を見付け, 自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を 育成するとともに,学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に 主体的,創造的,協同的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることが できるようにする」と解説されていました。 さらに関連資料を読んでみますと,育成すべき資質として, ①“どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るのか”ということで  「学びに向かう力 人間性」, ②“何を理解しているのか,何ができるのか”ということで「知識・技能」, ③ そして“理解していること・できることをどう使うか” ということで「思考力・判断力・表現力」を,三本の軸としていました。 これらの内容は,長年にわたりこのメルマガでご紹介してきた物事を理解する 能力「リテラシー」と,“知っていることを知っている”とした「メタ認知能力」 に関連するものです。企業で働いてきた者として,学校教育もより妥当な方向に 向かっているような気がします。 また,この実現に対し文科省では,主体的・対話的で深い学びの実現を称して 「アクティブ・ラーニング」と呼び,受動的学びからの逸脱を目指している ようです。 さて,最近はアクティブ・ラーニングという言葉をよく耳にしますが, これは受講者の内面的姿勢を示すものであり,積極的に講座に参加するとともに 探求したいとする気持ちがなければ,どのような講座でも単なる受け身的な講座 になるものです。 同様にQMSにおける受け身の姿勢は,形骸化や指示待ちの思考停止型社員を 多く生み出したのではないかと指摘がありました。これらの指摘を受け2015年に 改訂されましたが,その内容が適切であったかどうかは今後の実績を見てみなけ ればわかりません。ゆえに,QMSが持つ実現能力を探求していく努力が今後も 継続的に求められるとかと思います。 チームパシュート競技のようにQMSでも,ある時点では,例えば設計プロセスが 先頭を走り,それに連携して他のプロセスがついていきます。 そしてある段階から例えば製造技術プロセスが先頭を担当するなどし,次々と プロセス連鎖を起こしながら全体として最速の実現スピードを維持するように QMSをマネジメントすることが必要となるでしょう。 QMSは団体競技に似ています。個々の能力が単に優れているだけでは,勝負に 勝てず,チーム全体の能力を効果的に,場面に応じ引き出す必要があります。 それゆえに,個々のプロセスの専門的能力をパシュートするとともに, 他のプロセスとの関連性や相互依存性をもパシュートする必要性を感じます。 これを仮に「QMSパシュート」と呼ぶとすれば,オリンピックの興奮が冷めない うちに,皆さんも自社でQMSパシュートをそろそろ考え始めてみたらいかが でしょうか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●【緊急特報】「"品質立国日本"を揺るぎなくするために〜             品質不祥事の再発防止を討論する〜」の報告 ─────────────────────────────────── 昨今,国内で品質不祥事の報道がなされていますが,品質を扱う当QMS委員会 においても,そして,会員企業の皆様にとっても大きな関心事なのではないか と受け止めております。 2月21日に品質に関わる 一般社団法人 日本品質管理学会,一般財団法人 日本 科学技術連盟,一般財団法人 日本規格協会の共催,および経済産業省と日本 経済団体連合会の後援により, 「"品質立国日本" を揺るぎなくするために〜品質不祥事の再発防止を討論する〜」 なる緊急シンポジウムが開催されました。 当QMS委員会では,当日の参加はできませんでしたが,シンポジウムの内容と Q&AがWeb公開されていますので,ご紹介いたします。是非,ご一読下さい。 <日本規格協会の緊急シンポジウムのURL>   https://www.jsa.or.jp/support/sympo/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記 ─────────────────────────────────── 私事ですが,QMS委員会の企画(QKMアクティブラーニング)で知り合った 講師の方が主催しているQMSの勉強会に,1年半ほど月次で参加しています。 主に食品業界の審査に携わっている方々が参加され,業界横断的にQMSについて 熱く語り合い,電気通信業界のQMSとは違った視点で様々な気づきが得られます。 昨年,スーパーで買った惣菜を食べたお子さんが腸管出血性大腸菌(O157)に 感染し亡くなった悲しいニュースがありました。食品安全のFSMS(Food Safety Management System,ISO 22000)に不備があると,健康被害にダイレクトに繋が りやすいため,食品安全の審査では「絶対に起きてはいけないことは何ですか? それを防ぐ仕組みになっていますか?」「それは乳幼児などの弱者視点でも 適切ですか?」という確認を常に重要視されているそうです。 戦後最大の集団食中毒事件といわれる乳業メーカによる集団食中毒事件では, 工場で発生した停電事故により,製造された脱脂粉乳が汚染され,黄色ブドウ 球菌が産生する毒素(エンテロトキシン)が含まれていたことが原因と言われて いますが,製造工場の配管の淀みで毒素が発生していたことに,工場の誰も 気づけなかったことも問題だったと,食品業界の教訓として語り継がれている そうです。 電気通信業界でも,作業ミスなどの再発防止のために,規程やチェックリスト の見直し等を行いますが,例えば「関係者が10人いたら,なぜ10人とも気づけ なかったのか?」誰か一人でも気づけていたら問題は起きないはずで,そこが 本質ではないでしょうか? つまり「事故などの非定常時に,潜在的なプロセス の欠陥により,致命的な問題は発生しませんか?」などと言い換えると,気づき という観点で共通的な部分があり,まったくの異業種分野でありながら,勉強会 に参加する度に良い刺激と気づきをいただいています。 QMS委員会が提供する参加型で“学ぶ”ということを重視した「QKMアクティブ ラーニング」などのコンテンツも,参加者一人ひとりが,他社の方とのコミュニ ケーションや,様々な考え方に触れ感受性を高め考えることで,新たな気づきが 得られると思います。 また,使えば使うほどメリットが大きく,何度参加しても無料というのもQMS 委員会ならではの特典です。 QMS委員会の提供コンテンツで,あなたとあなたの会社に金メダルが輝くように してみませんか! 最後までお読みいただき,ありがとうございました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」── * 配信追加は下記にお知らせください。  mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp * 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会     QMS委員会メルマガ編集部  http://www.ciaj.or.jp/top.html  http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ) * 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(勝田 秀樹) * 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!  qmsmelg@ciaj.or.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C)2004-2018 CIAJ QMS committee All rights reserved.