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━ CIAJ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

「ポスト2015年版移行は,QMS委員会の企画でより賢くなりませんか!」

                     2017年11月30日発行 第82号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━
≪ 第82号 目次 ≫

 ・はじめに

 ・第9回 QKMアクティブラーニング開催の速報
  『QMSにおける価値判断を今一度考える』

 ・第23回 QMSサロン報告
  『プロセスついて,あらためて考えてみる』
   〜プロセスアプローチの本質と課題に迫る〜

 ・QKMアクティブラーニング開催予定のご案内
  『バランススコアカードの基礎と構築まで』

 ・ISO 9001関連の最新動向
  『バリ総会報告 & 今後のJIS対応方針』

 ・日本国内の標準化の動向
  『JSAS(ジェイサス)をご存知ですか?』

 ・TL 9000コーナー
  『TL 9000セミナー報告 & クエストフォーラムとTIAが統合』 

 ・【連載】知識活用型企業への道
   『QMSにおける知的資産運用への取り組み』

 ・編集後記

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●はじめに ─────────────────────────────────── 今年の富士山の初冠雪が平年より遅かったのですが,最近では雪を被った美し い姿をみることができ,少し早目の冬の訪れとなっています。 そういえば,今年は気象の話題が多かったように感じませんか。 今月も「二つ玉低気圧」という言葉が話題になりました。 「二つ玉低気圧」とは,2つの低気圧が日本海と日本の南岸を挟むように通過 するもので,各地で大気の状態が不安定になり、強風,雷雨,爆弾低気圧を もたらし,低気圧が抜けた後は冬型の気圧配置に変わるものです。 このような言葉(用語)を知る事は,気象変動やそのインパクトが大きくなった 今,日常の生活における備えとして役立つものと思われます。 ISO 9001:2015では,市場や環境の変化においても一貫したパフォーマンスを 生み出すことを求めた規格となっていますが,2015年版に移行された皆さんは 何らかの備えはされていますか? 昔から”企業は人なり”と言われています。 QMS委員会では,QKM e-ラーニング,QKMアクティブラーニング, QMSサロンと多様な機会を提供しています。 是非,会員企業の人財育成にご活用いただきたいと思います。 それでは,メルマガ82号をお届けいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●第9回 QKMアクティブラーニング開催の速報   『QMSにおける価値判断を今一度考える』 ─────────────────────────────────── 11月29日にQKMアクティブラーニングとして,『QMSにおける価値判断を 今一度考える』というテーマで株式会社イノベイション代表取締役 山上 裕司 様によるワークショップを開催いたしました。 テーマは毎回,山上講師ならではのユニークなもので,テーマへの興味と共に 組織のQMSを有効かつ役立つものにしたいという期待をもった方たち17名に参加 いただきました。 QMSは概念に基づき構築され,組織で体系的に実施される活動ですが,システム において評価・判断が求められる場合でも,最終的には個々人の価値判断による ことが多く,その"価値判断"には個々人の持つ感情が根底にあり,結果的に組織 の"意図する結果"が得られないことがあります。 今回は,このような人と組織が運営するQMSにおける,"価値判断"にフォーカスし 組織で運営している QMS の"動かし方"についてISO 9000:2015の 品質マネジ メントの7原則をベースに,対面式のワークを行いました。 最初に山上講師から質問の形で問題提起がありました。  QMSを形作っているモノを感じとっていますか?  〇〇部長がOKを出したから出荷OKで良いのですか?  自社の取りまく状況が変わってくることに私たちのQMSは追従していますか?  一人一人の知恵を出していますか?  文字だけの判断基準で足りない部分は何ですか? この問いかけに始まり、例えば、設計レビューの視点をどこに置くかだけでも 各人の価値判断が異なることを解説いただき, 各個人がどのよう自分のマネジ メントシステムを見ているか, QMSの7原則に照らし合わせて書き出す演習を 行いました。 例えば、原則1 Customer Focus(顧客への焦点)について自分のマネジメント システムは  ・どのようなものですか?  ・他にありますか?  ・どこにありますか?  ・わかったことは何ですか? と質問を行い, 回答を書き出します。この方法を山上講師は「認知のエンジニア リング」と呼んでいます。一般には前提や固定観念が入っておらず,質問者の 思いで汚染されない質問の言葉なので「クリーンランゲージ」と呼ばれています。 質問者と回答者を交代して実施することや他チームの回答を参照することで 考える範囲や判断基準の相違が明確に見えてきます。これを各原則について 行うことでさらに視点が広がり,気づいていないことに気づく場合もあります。 「クリーンランゲージ」のポイントを整理すると以下の3点が挙げられます。  ・内部監査においても, 誘導が入らない有効な質問の手法です。   質問自体が組織の学習を推進してゆくのです。  ・原則の下には価値が隠れています。実際に見えるのは原則を元にした実践   プロセスです。人間の体で喩えると,プロセスは臓器(機能),原則は骨格  (枠組み), 価値は体質(強靭/脆弱)になります。  ・判断基準に関する思考や概念は言葉を通じて”描写する”と良いです。   そして言葉で描写した思考,概念は現実化することができます。 所感:クリーンランゲージは全く先入観の入る余地がないため, 回答者の視点が 明確に露出できます。監査だけでなく,日常のコミュニケーションや業務    においても有効だと思います。ゆっくりと質問をすることは,回答者に    余裕を与え,本質を深堀できる可能性が広がることを実感できました。    このQKMアクティブラーニングは,講義の時間帯の殆どがグループ討議と受講者 が考えるワークということもあり,受け身の聴講ではなく,参加型の形式で, まさにアクティブラーニングに相応しい時間を過ごすことができました。 なんといっても,日頃,何の気なく接しているものに対してスポットを与えて 考えることで,自然体がどういうことなのかを理解していくことも,これまで の座学的学習とは異なる良さがあると思っています。 次回のQKMアクティブラーニングは3月頃の開催予定です。 どうぞご期待ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●第23回 QMSサロン報告  『プロセスついて,あらためて考えてみる』        〜プロセスアプローチの本質と課題に迫る〜 ─────────────────────────────────── 10月27日に第23回「QMSサロン」を開催しました。 山本正 QMS委員会特別委員(MBA,Ph.D)をファシリテーターに迎え, 上記テーマについて話し合いました。 ここ数回のQMSサロンでは,統計処理したデータから見えること,数値化情報 と質的情報とマネジメントの関係など,QMSの周辺を取り巻くデータを扱って きましたが,今回は,QMS事務局に是非聞きたいとされたテーマでしたので, 参加者が多く大変賑わいました。 はじめに,山本ファシリテーターから,2015年版規格に準じプロセスアプローチ とは何か,またその有効性とはどのようなことか,あらためて参加者の皆さん と一緒に考えたいという投げ掛けがあり,プロセスアプローチの本質について の説明から始まりました。 プロセスアプローチは,ISOの部品という前置ののち”品質マネジメントの原則” について解説がありました。現在,品質マネジメントの原則は7つですが, 改定前の原則は8つありました。 現在の原則からなくなったのは,”マネジメントへのシステムアプローチ” です。しかし,これは,なくなったのではなく,”プロセスアプローチ”に 組み込まれたとのことでした。 現在の品質マネジメントの原則は以下の通りです。  ・顧客重視  ・リーダーシップ  ・人々の積極的参加  ・プロセスアプローチ  ・改善  ・客観的事実に基づく意思決定  ・関係性管理 プロセスアプローチの本質を探るためには,用語の定義をしっかりと押さえる ことが大切であるとのことで,「プロセス」,「マネジメント」,「組織」 の語解説がありました。 特に,「マネジメント」は「組織を指揮し,管理するための調整された活動」 という定義で「調整された活動」が大事であるということでした。 これは,マネジメントするという言葉が入った途端“調整”活動が発生する という意味で,企業活動の中で手順化できることは実際ごく限定的で,手順化 できないところにその企業の付加価値が生まれてくるとのことでした。 ここでは,3つの用語の定義を挙げただけです。QMS事務局として用語の定義 は目にしていても,深く読み込まないと,実は大切な意図を汲まずに通り過 ぎてしまうという説明に,感心しきりでした。 また,要求事項のなかに「組織」という用語がたくさん出てきます。 これは,会社/組織/個人など,自分で訳して欲しいとのことでした。 ISOは,あらゆる組織に対応するので,是非読み替えて欲しいとのことでした。 次に「0.3 プロセスアプローチ」の内容を,一つひとつ紐解きました。 箇条0.3から見えてくる,”プロセスアプローチの基本要素”は,以下です。 ・プロセスの相互関係,相互依存性  →組織(企業)全体の有効性やパフォーマンスを向上させる。 ・リスクに基づく考え方  →不確実性を考慮した予測に基づく行動と対応 ・PDCAサイクルの実施  →意図した事柄と実際に起きた出来事を比較し,継続的に改善する。 プロセスアプローチの内容から見えてくるプロセスアプローチの本質とは, 「事実に基づく考え方と予測に基づく考え方を基底として,意図した結果を 実現させるために,各プロセスをシステムとしてマネジメントする包括的 思考であり,また願望でもある」とのことでした。 難しいまとめでしたが,理解しやすくするために”事実” に基づくの考え方 が提示されました。事実とは,同じ出来事を2人の人が見た場合,立場によって 片方は出来事を成功と考え,片方は失敗と考えることがあるということで, 例えば,“今期,100億儲かりました。”は事実か?に対して,経営者は昨年 から全く売り上げが伸びていないので良くないというのが事実で,現場は 昨年とイーブンなので十分頑張ったので良いというのが事実となるかもしれ ない。 事実に基づくは,”誰の事実”であるかを把握しないと,相手が何を言って いるのか真意を掴めないこともあるとのことでした。 このようなことを念頭におき,事務局は,トップの目線,現場の目線など, バランスを見ながらプロセスを調整する必要があるとのことでした。 後半は,プロセスアプローチの課題について話し合いました。 まず,「各プロセスの意味化」とは何かについて,ISOは,自分たちが成長 していくためのネタである。現場が理解するために,やっている行為はどう いう意味を持つのか現場に教える。規格の裏返しのマニュアルを作っただけ では意味がなく,なぜそれをやるか意味を与える。自分たちの言葉で語らせ ることが必要であるとのことで,これはプロセスを意味化する行為であり, 自分達が自分達でプロセスを理解するとのことでした。 次に,マネジメントへの意思決定モデルの話をしました。 ISOには,意思決定プロセスは規定されていないにもかかわらず,マネジメント しなさいと要求しているのは,意思決定しなさいとの要求です。 以前のQMSサロンで学んだ ”シナプス・モデル”を参考に「閾値:意思決定 レベル」の話がありました。閾値を越えるか超えないかで,アウトプットが 変わってくる。閾値を越えないと何も行動しない。すなわち「0」ゼロという 判断である。実際は,頭の中でそのようにマネジメントしているとのことで した。 人は一つの要素では判断していない。状況に応じてバイアスを変えているし 変わっている。すなわち,プロセスアプローチは変わる。ダイナミックに動い ている,日常的に突発的なことが起こる,“マネジメントする”ということは 日々変わるということで,シナプス・モデルを使ったとても分かりやすい説明 でした。 意思決定のマネジメントは,QMSを意思決定モデルと考えると7つあるという ことでした。  1.製品およびサービスに関連する意思決定  2.結果に基づく意思決定  3.情報に基づく意思決定  4.改善とリスクに基づく意思決定  5.資源に関連した意思決定  6.プロセスに関する意思決定  7.システムに関する意思決定 プロセス間の相互依存性と意思決定の閾値の例として,それぞれのプロセスは 様々なインプット/アウトプットを持って連続して進んでいる。 各プロセスには,いろいろな制限がかかっていることを図示で説明を受けまし た。 プロセスのフィードバックの例では,自分のプロセスのアウトプットを インプットとしてフィードバックする場合がある,つまり自分自身が自分の プロセスに影響するという概念の説明があり,その場合はフィードバックの かけ方が重要とのことでした。 QMSがうまく機能しない理由として,ISOは意思決定の要求事項はないが, 経営論は,意思決定の連続であり,意思決定は人の判断であり,固定的な物で ないため,体系的になじまないという説明に納得しました。 ルールは決めたけれど動かないのは,閾値はどんどん変わるし,起きている 事実は目の前にしかない。見えないところは事実とは言えない。リスクと いっても見える範囲しかできない。見えないところも拾い上げるにはシステム を変えないといけないとのことでした。 プロセスアプローチの仕組みを理解するには,意思決定モデルが必要であり, プロセスとインプットは一緒,しかし,シナプス・モデルで説明した通り, 意思決定は重みがつくので,アウトプットが異なることは,とても良く理解 出来ました。 まとめとして,ダイナミックさを持っている活動がISOである。マニュアル化 するとプロセスも固定化しがちである。その場合,その妥当性を常に確認しな ければならない。インプットやフィードバックの重みづけは,状況に応じ日々 変化し,手順化など表面的な体系化で有効に機能する場面は定型的業務のみで ISO要求事項では,“マネジメントする”と一般的に記載しているが,プロセス 連鎖におけるマネジメントの本質は,何も述べられていない。 現場でプロセスを意味化して主体的に動けるかどうかは,意思決定レベルが 影響を与えるという結論でした。 参加者からは,以下のような感想が上げられました。 ・プロセスアプローチの本質はISOの概念なので分かりづらかったが,その  企業なりに答えを出す/企業が自らの状況に応じて答えをだす。それがISO  をやるということだと分かった。 ・プロセスアプローチはQMSの手法のひとつだと思ったが,経営の基盤である  ということが分かった。 ・ISOで不明確なところが明確になった。「事実に基づく」は,誰の事実かが  明確になった。 ・プロセスアプローチにも書けない,意思決定があるのは初めて知った。 ・ISOは何も書いていない。必要に応じて変るので,ISO9001の解釈は,  いろいろ あってもいいと思う。 ・プロセスは遵守することだけが良いのではない。 ・手順はあるが,役に立つかというギャップがある。適用範囲の人たちに   やって もらう。行動をきちんとする。プロセスを他との関連性で考える。 ・マネジメント部分,意思決定部分をいかに見える化するか,頭の中を  見せる化 しないと形骸化の道をたどる。 ・今の行為とISO要求事項との意味付け。自分達の言葉で語れということが  分かった。 ・規格の枠組みをやればいいのかと思ったが,自分で解釈してやらないといけ  ない。 ・事務局として進めたことが間違いではなかったことが分かって良かった。 ・組織を見たときに,定型で出来ない組織は定型でやらなくてもいいが  エビデンスは残しすこと。人,職場によってプロセスアプローチは違って  良いことが分かった。 ・規格が何を言っているかを自分で解釈しないと相手に説明できない。 ・プロセスアプローチはプロセスの間を取り持っている。両者の言い分が  違うのは,重み付けが違うということ。 ・経営者の責任に,事業とプロセスを統合がある,9000,9001を通して  みると,人の重要性が入っている。人間系で考える。自然体で目に映る  QMSにすること が重要。 ・品質マニュアルが出来れば,QMSは動くのかというと違う。本質的な部分が  見える。 ・プロセスと言っているのは,実はシステムアプローチで,自分たちのQMSを  動かすことであること,プロセスアプローチだけでは何も解決しないことが  分かった。 ・プロセスフローを会社で作っているが,意思決定プロセスを考えないと  アウトプットが変わってくる。そういうことを理解してマネジメントして  いない人もいるのではと思った。 今回は,QMS事務局にとって興味を引くテーマ設定だったため,多くの新しい 方に参加いただき,活発な議論と,多くの感想をいただきました。 毎回メルマガで,内容のダイジェストをお伝えしていますが,参加するから こそ味わえる素晴らしさをお伝えできないのが残念です。 一度参加いただければ,QMSサロンの良さをお分かりいただけるでしょう。 是非,メルマガ読者の皆様にも,“場に参加するからこそ腑に落ちる” 感覚を直接味わい,自身の知識として持ち帰っていたがきたいです。 次回,第24回は,2018年2月後半に開催予定です。 QMSサロンは,自身の勉強目的のみならず,会員間コミュニケーション, リレーションを築くことにも最適な場です。新たな参加者を大歓迎します。 皆様のご参加をお待ちしております。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QKMアクティブラーニング開催予定のご案内   『バランススコアカードの基礎と構築まで』 ─────────────────────────────────── バランススコアカード(BSC)の基礎学習であるとともに,実践的な ビジネスリテラシーの向上につながる内容であるとして定評のQKMアクティブ ラーニングも今年で15年目を迎えます。 今回も少人数の中でグループ演習主体のカリキュラムを吉川先生の直接指導が 受けられる恵まれた環境の学びの場として少人数2日間コースとして開催いた します。 前号でもバランススコアカードのご案内をさせていただきましたが,メルマガ 発行後に吉川先生とキックオフの打合せを行い,その追加情報を紹介します。 ISO 9001:2015は,ISOマネジメントシステム規格の共通構造により開発された ことによりマネジメント面での強化がされています。特に,組織を取り巻く 環境・業界・社会の変化や利害関係者の期待やニーズから課題を見出し, リスクを特定していく要求が加わっていますが,皆さんは違和感なく対応が できていますでしょうか。 これに対して,今年は「組織像をどう特定していくか」「組織のゴールをどう 決めてそこへのシナリオをどう決めていくか」の2点が企業における様々な 場面で必要となることから,吉川先生とは,この部分を重視して,全体の7割 の時間を充てるケーススタディを行うことにしました。 このように,ISO 9001:2015 とも密接な関係ができた今,ビジネスリテラシー の向上も図れることから若手の育成のカリキュラムとしての導入を是非とも ご検討下さい。 <次回の開催> ・2018年1月22日(月)〜23日(火) (2日間) ・講師: 横浜国立大学大学院 名誉教授 吉川武男様 ・募集人員: 12〜16名程度 ・テーマ:『バランススコアカードの基礎と構築まで』 募集案内は12月中旬頃にご案内の予定です。 年に1回の開催に付き,この機を是非ご活用下さい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●ISO 9001関連の最新動向   『バリ総会報告 & 今後のJIS対応方針』 ─────────────────────────────────── ◆ISO/TC176バリ総会 品質マネジメントシステム規格国内委員会からは、9月に開催のインドネシア でのISO/TC176バリ総会の報告がありました。 ここでは,ユーザサイドで関連する部分のみ報告いたします。 ・ISO 9000及びISO 9001のFuture Concept 次期改定に向けて,SC1/WG1‐Future Conceptワークショップが開催された。 2015年のISO 9000及びISO 9001の改訂の際にも同様の検討がなされ,改訂時の 重要なインプットとなった。メンバー募集はまだ開始されておらず,ワーク ショップで挙がった意見をまとめた文書も回付されていない状況である。 今回のワークショップでは,幾つかのFuture Concept案が書かれた資料が配布 され,それについて意見交換を行ったが,いずれの案も参加者の納得が得られ るものではなく,これから議論を始めようとしている段階である。 →重要な議論となることは間違いないので,今後の動向を注視して,日本も  積極的に参加を行う必要があります。 ・ISO 9004の改訂について SC2/WG25(ISO 9004改訂)について,中條委員長から説明があった。 DIS投票時に反対を投じた3か国(ドイツ,フィンランド,スイス)のうち, フィンランドはAnnex A(成熟度評価)そのものに反対する提案,スイスは Annex SLに合わせるという提案を理由とした反対であったが,いずれもDIS コメント審議の結果,不採用となった。FDIS投票においても,この2か国は 引き続き反対を投じる可能性が高いが,FDISに進むことは全会一致で可決 された。なお,審議の内容についてはここでは割愛します。 ◆今後のJIS対応方針について ISO/TS9002(品質マネジメントシステム−ISO 9001:2015の適用に関する基準) は2016年11月にTS発行済みであったが,国内ではJIS化をすることになり,JIS 原案及び解説案をISO 9001対応WGで作成し,国内委員会で審議・承認を行った。 2018年初旬にJIS公示の予定です。 ISO 9004(品質マネジメント−組織の品質−持続的成功を達成するための指針) は,バリ総会の報告の通り,FDIS段階に進むことが決議された。ISは2018年4月 発行を目指す。日本では,国際一致規格(IDT)となるJIS原案を作成するが, ISO 9004対応WGでJIS原案及び解説案の作成作業を行い,国内委員会で 審議・承認を行うこととしており,それに先立ち,2017年12月からFDISの翻訳 作業を開始し2018年4月にIS発行によるFDISとの差分確認後に,6月頃から国内 委員会によるJIS原案の確認を開始し,2019年初旬のJIS公示を目処にして推進 いたします。 ISO 10006(品質マネジメントシステム−プロジェクトにおける品質マネジメント のための指針)は,プロジェクトマネジメントの規格としては,既にISO 21500 があり,ISO 10006は本来プロジェクト固有のマネジメントをカバーすることを 意図したものにもかかわらず,現在の版は,ISO 9001との整合性を考慮しすぎた 結果,多くの一般的に適用できる指針を含んでいることからSR投票(定期見直し) の時点で「廃止」と判断している。この意見を品質マネジメント規格国内委員会 からの提案とし,JIS Q 10006の原案作成団体である一般財団法人エンジニア リング協会へ対応を相談することとなります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●日本国内の標準化の動向    『JSAS(ジェイサス)をご存知ですか?』 ─────────────────────────────────── 日本における国家規格と言えば,JIS規格を思い出しますが,これは工業標準化 法に基づく鉱工業品関連に限定されたもので,これ以外ではJAS(日本農林規格) が思い出されますが,このたび,日本規格協会では,この両者には含まれない JSA規格(JSAS(JSA Standards & Specifications):ジェイサス)なる規格の開発 発行する制度を創設することを発表した。 JISや業界規格と調和しつつもJISの範囲や業界にとらわれることなく,サービス を含めた幅広い分野の規格を開発対象にすることにしている。 また,開発プロセスにおいては,国際規格・国家規格と同等のコンセンサス レベルを有した透明性,公平性,客観性を確保しているようです。 最初は民間規格としてスタートするが,将来は法改正により工業標準化法への 取り込みを視野においているようです。 <JSA規格(JSAS)制度> https://www.jsa.or.jp/dev/jsas
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●TL 9000コーナー   『TL 9000セミナー報告 & クエストフォーラムとTIAが統合』 ─────────────────────────────────── 11月13日,浜松町CIAJ会議室において第10回目(年2回開催)となるTL 9000概要 説明会が開催され,その冒頭,クエストフォーラム日本ハブ会長の新橋氏から, 『クエストフォーラムとTIAが統合』とのホットなニュースが紹介されまし た。  ・2017年9月19日,クエストフォーラムとTIA (Telecommunications Industry   Association)が統合  ・統合の背景は,お互いの会員の共有化と,会員数も500を超える拡大  ・統合によるシナジー効果,例えば市場適応性を迅速に行使可能  ・今後もTL 9000に関する活動は統合された組織として継続 というものです。   紹介が後になりましたが,当日のTL 9000概要説明会には,31名の聴講者の 出席を得ました。アンケートいただいた25名中の20名が初参加でした。 アンケート結果からは,ISO 9001との違い,ベンチマーキングへの活用,WEBの 見方の紹介など好評をいただいた反面,初参加者には難しい面もあったようで 初開催から5年を経過し,今後に向けては各組織に役立てるセミナーとなるよう ブラシュアップを図りたいと思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●【連載】知識活用型企業への道    『QMSにおける知的資産運用への取り組み』 ─────────────────────────────────── 年の瀬が近づくと,いつも今年は何を成し遂げたのだろうかと振り返りつつ 思い返すのですが,日々起きる出来事には何とか対処してきましたが,新たな 試みは道半ばといったところです。皆さんはいかがでしょうか。 さて,今年は例年に比べ雨の日が多かったのが印象的でした。これには慣れて 来ましたが,個人的には活動が低下する期間が長かったような気がします。 そのような雰囲気の中,国内の出来事として注目すべきは大きな選挙戦です。 政局の動向に関心が集まり,報道をふくめ右往左往したけれども,結局は相変 わらず先行きが見えてこない妙な状況になっているような気がします。 一方,外部要因もあり日経平均が2万2千円を超えバブル崩壊後の最高値を付け たと報道され好景気だとされています。しかし,景気が良いと実感できない層 が過半数を超えていると報じられ,インデックスと実生活のズレが感じられま す。 このように,最近は表面的な事柄と本質的な実態とのズレが大きくなってきて いるような印象を強く受けます。よく実態を見据え行動しなければならない 時代になってきているとも言えます。 さらに,鉄鋼や自動車業界の有名企業で,検査データの改ざんや有資格者でな い検査員の無資格検査などの不正が発覚しました。 その企業の中には,問題発覚後も無資格検査を行いつづけ,ISO 9001(QMS)の 認証取得が取り消されたと報道されていました。 検査には有資格者を割り当てることはQMSだけでなく,企業活動の基本中の 基本だと思うのですが,スローガンでいうところの顧客重視の姿勢とは全く 逆の方向です。これも,表面的なものと実質のズレが生じている証左だとい えます。 その上,問題発覚後でさえも現場では従来通り無資格検査が継続されていたと の報道に接すると,トップを含めたマネジメント層の指導力と責任感覚を問う と同時に,企業の本質である企業文化や企業倫理も疑いたくなります。 いずれにせよ,認証取得はしたもののQMS自体が実際には機能していないことが よくわかる事例として,残念ですが私たちの教訓としなければなりません。 さて話題を変えます。私事ですが勤務していた企業の5年に一度の,関連企業 も含めた全体OB会が最近開催されました。初めて参加したのですが,出席者も 約3000人と大規模で少し驚きました。最初はだれもわからず浦島太郎状態でし たが,次第に見覚えのある顔に出会い昔話に花が咲きました。 OB会のシンボルマークは創業者がよく言っていた“社会のモルモットになるの だ”ということでモルモットでした。このような企業風土なのかもしれませんが 仕事は忙しかったけれど“面白かったよね”というワクワク・ドキドキした 思い出が多かったような気がします。良き時代だったのでしょうか。 また会場で,現社長とお話しする機会がありました。業績が振るわない中で 抜擢された現社長ですが,なかなか業績が上がらずテレビ報道ではいつも頭を 下げている印象が強く,少し地味な感じを受けておりました。 幸い今年はこれまで我慢してきた各ビジネスユニットが自立し成績を上げ始め てきており,最近の報道でも経営的に好調になってきていると紹介されていま した。ようやく暗く長いトンネルの先に光が見え始めてきましたので,社長が どのように感じているのか個人的に興味がありました。 そこで現社長に“今期は業績が良さそうですね。”とお尋ねしたところ, “私が頑張ったというよりは,皆さんが本当によく頑張ってくれました。” と自分の苦労は棚に上げ,まずは現場に感謝するご返事は,嫌みな謙遜では ない本音に聴こえました。現場にいた人間としては大いに安堵しましたし, 好感が持てました。 このように直接会ってお話しすることは,報道やレポートなどでは読み取れな い多くの情報をくれるものです。文書類や電子メールのコミュニケーションも 重要ですが,フェース ツウ フェースのコミュニケーションも必要です。 丁度,忘年会シーズンでもありますから,重い腰を上げる良いチャンスかもし れません。 さて,今回のさまざまな不祥事の中で“現場が悪い”といった趣旨の発言をし た経営者がいましたが,現場から“とんでもない”と反発され発言を訂正した と聞きます。経営者には最高責任者としての責任の取り方があり,現場には 現場の責任の取り方があります。 今回の問題はある現場でたまたま起きたにすぎず,他の場所でも同じようなこと が起こる可能性が高いのですから,それを引き起こした真因に目を向け現場では 対処できない事柄を大きな視野で対処するのがリーダーの姿勢だと思うのですが 皆さんはいかが思われるでしょうか。最高経営者が現場と同じ感覚で犯人捜しを するようでは困ります。 このような事例を見ると思い出すのが,既にご紹介したことがある宮本武蔵の 五輪書で引用されている「観(かん)の目,見(けん)の目」という言葉です。 「観」とは仏教的には智慧(ちえ)を指すのですが,広く,遠くを見通す目で あり,「見」とは近くを詳しく見ることだと解説されています。 また,兵法では実践に際し“観の目を強く,見の目を弱くする”のが極意だと 述べられています。 真剣勝負となると,どうしても相手の剣に目が向かってしまい視野が狭くなる かと思います。そうこうしているうちに足元の小石に足を取られ負けることも あり得ます。それでは長年の苦労が報われませんから,バランスよく視野を 広げる努力も怠ってはいけません。 さて,これをQMSに置き換えれば,各プロセスは「見の目」で観察し,次に目標 や他のプロセスとの関連性や外部環境の変化に注目し全体的な「観の目」で 考察すべきでしょう。 一方,トップマネジメントなどリーダーシップを発揮する人々は, マネジメントレビューなどを通し,まずは品質方針に照らし「観の目」で広く QMSを考察し,次に個々の目標とプロセスの状況をマネジメントレビューなど で報告を受け,現場の意見も捉えつつ「見の目」で判断し,必要な支援や指示 を検討することになるでしょう。 これら両者の目を通し,QMSを媒体にコミュニケーションを行うことにより, より現実的な対応を導くことができるようになるのだとみえます。 QMSがシステムであることを再認識し活用されることが肝要だと思います。 さて,ガラリと話題を変えます。つい最近Windows10の新規コンピュータを1台 購入しました。その理由の一つに,今年10月のWindows10の大型バージョン アップがあります。 ご存知の方もいるかと思いますが今回のバージョンアップは,人工知能(AI) 関連も含めオープンソースが大量にあるリナックスOSが,Windowsのアプリ ケーションとして簡単に動作させることができるようになったことにあります。 今までは,OSごとに別々のPCで動作させていたのですが, これで一つのコンピュータで動作させることが可能になります。二つのOSを コラボレーションさせ,役割分担させることが可能となるので魅力的です。 これは,他の企業と合併し相互にメリットを出す戦略に似ていますが,構造が 全く異なる企業同士の合併なので問題が生じやすい懸念もあります。 一方,Apple社のOSは,リナックスと同じUNIX OSをベースにしていたので, すでにリナックスユーザーがAppleに流れているため,Windowsがリナックスと コラボレーションせざるを得ない状況もあるようです。 以上が表向きの新PC購入理由ですが,本音は現在メールや文書きをしている 時代遅れになってきたゲーミングPCを最新版にしたかったからです。 本格的なPCゲームを行うには,高度で高価な画像処理ボード(GPU)が必要になり ます。これは高速演算装置ですからゲーミングPCだけでなく,最近は膨大な データを扱うデーターマイニングなどの人工知能分野で計算装置として大量に 使われ始めています。 ゆえに個人的にはゲーミングPCを購入するのではなく,人工知能の研究に使う ために必要なのだと言い聞かせつつ,ゲームでは少しオーバースペック気味な 高性能PCを導入しました。 これまでリナックス用PCで試してみた簡単な人工知能テストプログラムでは, かなりの時間を要しうんざりしていましたので,今回の新PCで相当時間が短縮 されるはずと期待しております。 実際のところ現在の情勢では,人工知能を使うのかどうかを議論している段階 は終わり,人工知能をどのように活用していくかの段階に入っておりますから, QMSも遅れをとらないようにと考えています。 組織が大規模になるに従いプロセスの関連も多様で複雑化しますので,人が行 うには限界がありそうです。このような複雑系には人工知能を使い解き明かす ことが期待でき,隠れた関連性を発見しつつ,状況に合わせ適切なマネジメント をすることも今後は期待できます。 このように今後の知識活用型企業では現実的な視点で人工知能の活用が不可欠 となりますから,時代に遅れないように少しずつ勉強していこうと「観の目」 で見て判断しました。 しかし,実際のところは「見の目」で見るところのゲーミングPCが利用の主流 になるのかもしれません。使う側の能力次第ということなのでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記 ─────────────────────────────────── TL 9000セミナーは年2回のペースで10回目の開催となり,これまで,延べ327 名の方に参加いただきました。 当初はTL 9000導入済み企業からの参加者が多く,ニーズにマッチした説明内 容でしたが,今回は「導入コース(初心者向け)」に開催したため,アンケート 回答で25%程度の方から「難しかった」「要求事項や測定法の詳細が知りたい」 などの要望をいただきました。 TL9000といえば,ISO 9001にはない「測定法」が売りでありますが,関心も高 く,TL 9000の目的である「パフォーマンスに基づく効果的な測定法を定め, 運用結果の評価やQMS運用の向上に活用する」ことへの期待も高いようです。 TL 9000ワーキングでは,「測定法」は現場で役立つKPIの参考にもなるため, 来年度に向けて「初心者向けの説明拡充」「“要求事項”や“測定法”に特化 したセミナ開催」など,現場で役立つセミナー企画を検討しています。 明日からは師走です。既に,2015年版の移行期限まで1年を切っております。 QMS委員会では,「ポスト2015年版移行」を視野において,事業とQMSの 統合のなかで,QMSがより役立つものとなるように基礎的な力を伸ばすため の企画を増やして提供しておりますので是非ご活用ください。 最後までお読みいただき,ありがとうございました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」── * 配信追加は下記にお知らせください。  mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp * 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会     QMS委員会メルマガ編集部  http://www.ciaj.or.jp/top.html  http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ) * 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(勝田 秀樹) * 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!  qmsmelg@ciaj.or.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C)2004-2017 CIAJ QMS committee All rights reserved.