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   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

     「2016年度新体制が発足しました!」

                       2016年8月1日発行 第74号

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≪ 第74号 目次 ≫

 ・はじめに                           川津 済

 ・2016年度QMS委員会体制紹介                 川津 済

 ・QMS委員会総会特別講演報告                 橋本さん 済

 ・異業種見学会『nite独立行政法人 製品評価技術基盤機構』報告  宮下さん 済

 ・QMSサロン報告                         青柳さん 済

 ・QKMアクティブラーニング報告「組織の未来を創るモデリングの実践」吉崎さん 済

 ・ISO 9001関連の最新動向                    相澤さん

 ・TL 9000コーナー「TL 9000セミナー報告」            吉崎さん 済

 ・知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」 山本さん 済

 ・コラム/トピックス(あれば)                 どなたでも 吉崎さん1件

 ・編集後記                           飯田さん 済


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●はじめに ─────────────────────────────────── 2016年度 QMS委員会 委員長の川津 一郎です。 どうぞよろしくお願いいたします。 いよいよリオデジャネイロオリンピックの開幕です。いつもは何となくテレビ や新聞のニュースで試合結果を見る程度の私ですが,今回は応援に気合が入っ ています。その理由は,私の職場から7人制ラグビーのオリンピック選手が誕 生したからです。 身近な人が代表選手として頑張っているのかと思うと,応援の入れ込み方もい つもとは違ってくるのではないでしょうか。試合に出る・出ない,勝つ・負け るに関係なく,日本から声援を送っていきたいと思います。 QMS委員会でも,会員企業からの代表選手が各種取組みを企画・実行してい ます。本年度もQMS委員会へのご支援をよろしくお願いいたします。 それでは,メルマガ74号をお届けいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●2016年度QMS委員会体制紹介 ─────────────────────────────────── 6月17日のQMS委員会総会でご承認いただきました,2016年度の新体制をご 紹介致します。 委員長  NEC     川津 一郎 副委員長 NEC     飯田 政良 (TL 9000WGチェア)      日立製作所   相澤 滋  (TC176委員) 運営委員 アンリツ    青木 一浩      サンコーシヤ  大貫 信夫      富士通     宮下 正則 (普及分科会 主査)      富士通     橋本 辰憲 特別委員         山本 正  (元)ソニー 会計監事 沖電気工業   青柳 礼子 (研究分科会 主査) 今年度の運営方針は昨年度と同様【QMSを学ぶ】とし,より骨太なQMS組織にな るための役立つ活動の推進とISO 9001:2015改訂対応の支援を,各種取組みを 通して行なってまいります。 また,ご自身もQMS委員会の代表選手となり,役立つ取組みを私達と共に企 画・実行されたい方,QMS委員会への積極的な参加をお待ちしております。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QMS委員会総会特別講演報告 ─────────────────────────────────── 6月17日に開催しました総会特別講演では,宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙 科学研究所太陽系科学研究系教授 兼「あかつき(PLANET-C)」プロジェクト マネージャの中村正人様をお招きし,『金星探査機「あかつき(PLANET-C)」プ ロジェクトから学ぶ〜金星をめぐる軌道再投入までの道のり〜』をテーマにご 講演をいただきました。 2010年12月7日に金星の周回軌道に入る予定が軌道投入に失敗し,金星に近い 軌道で太陽を5年間も周回した後,2015年12月7日に金星周回軌道への再投入が 行われ,12月9日に成功しました。今回の講演では,世界の金星探査に対して 日本が挑戦し,失敗から学んだことをどのように活かし乗り越えたのか体験談 にもとづく貴重な教訓についてお話しをいただくことができました。 ●失敗をした人間をプロジェクトマネージャにつける 太陽系研究でプラズマをやりはじめた学生の頃から,修士,博士に至るまで数 々の失敗をしてきた。博士2年目でうまくいかない時期に一緒に研究し失敗を 繰り返していた3人,後に水星探査のプロマネとなる兄弟子と私ともう一人が ,後に日本の惑星探査の先頭を走ることになった。JAXAには失敗をした人間を プロマネにつけたいという傾向があった。最近,ソニーもそうらしいという記 事を目にした。 ●他の国と同じことをやっても・・・ プラズマのサイエンスは,かなりのことがわかったので,21世紀に何をやるの か。次は金星探査だということになり,先行する他の国と同じことをやっても 面白くないので,地球とまったく違う金星の気候に着目した。地球は自転に対 し場所によって風が異なるが,金星は緯度によって風は異ならずどこでも同じ 風が吹いている。太陽系に2つのパターンの流れがあるということ。現在の気 象学では金星の風が流れるメカニズムを説明出来ない。金星を調べることによ って,汎用性のあるメカニズムを解明し新たな気象学を作り出し,地球の気象 をより深く理解しようということに取組んだ。 ●日本の挑戦 金星探査機あかつきの軌道投入失敗 金星気象ミッションの課題(惑星全体を覆う厚い雲と大気が阻止していた観測 方法)を解決し,2010年5月21日にあかつきを載せたH2ロケットが発射成功。 ところが,2010年12月,金星への軌道投入に失敗した。探査機への横方向の力 モーメントに対しリアクションコントロールが制御できない状態になり,軌道 投入のための十分な減速が得られなかった。その原因は,通常の衛星探査機は 発射後1週間以内に推進系を燃焼させるが,半年間使われなかったことにより 塩が生成され弁の一部が閉塞し,燃料タンクに十分な押しガスが供給されなか ったことによる軌道制御エンジントラブルであった。 ●金星周回軌道への再投入 想定した結果でないことに衝撃を受けたが,失敗から数日後,コントロールで きることがわかった。太陽周回軌道から次の金星周回軌道へ再投入に向けて何 ができるのか検討を開始した。特に太陽周回軌道上では金星周回軌道と比べ最 大熱入力が30%高くなる。各機器の設計マージンを超える場合もあり,どのよ うに耐えうるか,劣化を抑えるのかが最大の課題であった。温度を抑えるため に充電レベル,太陽にあてる面を制御し,姿勢制御の手順では,万が一のこと を考えて繰り返した。そして,2015年12月7日に金星周回軌道に投入。仲間と ドップラーモニターを見つめる中で再投入成功を確認した。 ●まとめ 金星軌道投入失敗という絶望的な状態の中で乗り越えられたのは,仲間の結束 力,工学系+サイエンス系がそれぞれががんばりプロマネが間を調整し,ラス トチャンスに対して入念に準備したことによる。 失敗をしたことで何かを学ばなければならない,ちょっとやそっとではくじけ ない,ということが重要である。 2001年に提案された金星探査機あかつきは,15年たって初めて他の惑星を廻る 人工衛星となった。これにより日本が日々変化する惑星のデータを速やかに全 世界に向かって発信出来る時代が来た。世界中の研究者が日本の取得したデー タを使う事こそが,日本の惑星探査が成熟したことの証である。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 講演の中では,実際のプロジェクト関係者へのインタビューや成功の瞬間を捉 えた映像の紹介もあり,挑戦し失敗し,失敗を乗り越えて得た達成感,失敗か ら学ぶ,あきらめないで継続すること,の重要性について熱く語っていただき ました。 アンケート結果では,「失敗から先頭に立つ。苦労は買ってでもする。最も重 要なのはやりぬく強い信念。あきらめないこと。チームの活気や結束力」がい かに大切か,推進系の故障に対して細かな所まで設計値への対比も含め一つ一 つきちんと確認している様子に対し,あきらめずに一つ一つを可能性を信じて 取り組むことの重要性を学んだ,など多くの気付きを得られたと回答がありま した。 参加された皆さまには,心に響く,腑に落ちた講演になったことと思います。 なお,本講演のアンケート結果は以下のURLからご参照できます。  <会員専用サイト(ID,PWが必要です)>  http://www.ciaj.or.jp/qms_m/pdf/160617.pdf
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●異業種見学会『nite独立行政法人 製品評価技術基盤機構』報告 ─────────────────────────────────── 7月8日,38名の会員の方に参加いただき,東京都渋谷区にある独立行政法人 製品評価技術基盤機構(nite)の異業種見学会を開催いたしました。 今回は,これまでに発生した製品事故品を展示してあるナイトスクエア室の見 学をはじめ,事故原因の究明のための再現テスト室の見学,製品安全分野の活 動説明や電気用品安全法の規制対象の考え方及び大括り化5品目の定義・解説 の検討状況(ご講演)という構成で見学会を行いました。 展示室見学では,これまで新聞報道やテレビコマーシャル等で皆さんがご存知 な石油ファンヒーターやガス給湯器等の実際の事故発生品に触れて,知ってい ただく他にも原因究明結果を解説したパネルの展示により,事故がどのように 発生したのかを詳しく知ることができました。 また,再現テスト室では,製品の発火事故を安全に再現させるための排煙設備 や床の耐熱タイル化等,様々な安全対策を施し実験していることが認識できま した。 ご講演では,製品安全センター製品安全企画課の山崎主任様より,「製品安全 分野の活動説明」と題し,様々な製品事故が世の中では発生している事や,事 故原因の究明だけではなく,その事故が二度と発生しないよう注意喚起する所 等,消費者視点による活動を理解することができました。 質疑のなかで,製品安全分野については,事故原因追究のための再現実験や広 報活動等,一般消費者が安全・安心に製品をご使用いただくための地道な取り 組みを専門化集団が行っているというお話が非常に印象的でした。 なお,参加者アンケートの結果,再現テスト室での実際の実験が無く残念であ ったとのご意見はあったものの,製品事故発生に対する取り組み活動について 実際のご担当者と意見交換できる部分は,大変満足のいく内容との回答をいた だきました。参加者アンケートの結果は,以下の会員専用サイトからご覧いた だけます。是非,ご一読くださるようお願いいたします。  <会員専用サイト(ID,PWが必要です)>  http://www.ciaj.or.jp/qms_m/pdf/xxxxxx.pdf
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QMSサロンのご報告 『QMSで意図した結果を導くためのポイントを考える』 〜主体的QMSの促進と効果的運用〜 ─────────────────────────────────── 7月15日に第19回「QMSサロン」を開催致しました。 QMS委員会フェロー 山本正様(MBA,Ph.D)をファシリテーターに迎え, JIS Q 9001:2015(ISO 9001:2015)の要求事項の構造を,語彙の関係性からひ も解き,QMSの意図した結果を導くポイントを探りました。 従来から,ISO 9001規格に準じ品質マネジメントシステムを構築したにも係わ らず,その有効性が確認できず形式だけの業務を導き形骸化を促進しているの ではないかという課題がありました。 2015年の規格改訂では,形骸化など規格ユーザーが感じている課題に対し,い くつかの見直しが行われました。そして,箇条もPDCAサイクルを意識した構造 となりプロセスアプローチが明示化されました。 一方,要求事項ごとの逐条型のQMSでは,QMSが目指しているプロセスの相互作 用によるシステム的効果をうまく導けない場合があります。 そこで今回のサロンでは,要求事項で使用されている重要な語彙の関係性を分 析し,“QMSで意図した結果を導く”ためのヒントを参加者で話しました。 最初にファシリテーターの山本氏から「なぜQMSを構築し運営するのか?」と の投げかけがありました。 これは,ISO 9001の「序文0.3.1」にある, 「システムとして相互に関連するプロセスを理解し,マネジメントすること は,組織が効果的かつ効率的に意図した結果を達成する上で役立つ。 組織は,このアプローチによって,システムのプロセス間の相互関係及び相互 依存性を管理することができ,それによって,組織の全体的なパフォーマンス を向上させることができる。」 この一言に尽きるとの説明があり, 規格の要求事項は,箇条4から始まるので,序文を読み飛ばしてしまう方もい ますが,序文に大切なことが掲載されているため目を通す大切さを再認識しま した。 QMSを構築する“意義”とその“ねらい”を考える上で,現在の立位置を知 り,将来起きるリスクも考えておくことが大切である。そして,「狭義の諸問 題」は,個々のプロセスの細かい問題であるのに,何でもQMSが悪いという問 題に置き換えられてしまうことが,QMSが役に立たないと勘違いする要因のひ とつだが,大局でシステムで考えることが必要で,リスクを考え将来に向けて 視野を広げていくことを意識することを理解しました。 ISO 9001:2015において,意図した結果を導くということは,組織の品質方針 及び戦略的な方向性の一致をいっているのが特徴的だと感じました。 戦略的な方向性の一致のためには,リスクを配慮しましょうというのがポイン トで、QMSを運用していても組織は常に不確かさの中にいる。それは,外部の 状況が変化するからであり,周りが変わればQMSも変わらないとならないとの 説明がありました。 QMSで意図した結果を導くためには,組織のQMS自体が変わらないといけないと いう提言はその通りだと納得しました。 “意図”の推移サイクルは時間の軸があり、 リーダーシップ→戦略→方針→目標→目的→(リーダーシップに戻る) 上記の流れになっていて,それぞれのリンケージが取れることが大事である。 それぞれの立場・言葉に全て“意図”がある。 それを見誤らないことが大切であり,例えば,マクロ(全体)を見るには望遠 鏡,ミクロ(現場)を見るのは虫眼鏡と用途がある。全体は虫眼鏡では見な い。とのことでした。 この説明はとても納得をしました。QMSの意図と一口にいっても,上司が思う こと,部下が思うことでは異なりますし,所属組織でも意図はそれぞれだと思 います。そこをひとからげにしてしまうと活動がぼんやりしてしまい何のため のQMSか意図を見失うことになります。 次に,QMSの効果的運用をするためにもQMSの意図の理解とともにQMSの構造 を,ISO 9001:2015に使われている語彙を分析することにより導き出すという 試みが紹介されました。 これは,多く使われている語彙をクラスター分析することにより,語彙同士の 関連をデンドログラムで示して,どのようなクラスター構造になるかを見るこ とにより,規格が何を言いたいかを導くもので,大きく3つのクラスターに分 類されました。 「計画・確実にする」,「不適合・改善」,「情報・顧客」 ここで「あなたの所属する企業で,着目したいクラスタ群は,何でしょう か?」 という問いかけがあり,参加者が自組織の状況とともに,着目するクラスター を話し合いました。 結果的には,参加者の意見は様々で,共通してどのクラスターが重要というこ とはなく,置かれた状況で変わってくることを実感しました。 それぞれのクラスターで,どの用語が多く,その用語はどの箇条で頻発してい るかグラフで示されると,クラスターの姿が映し出され,今まで考えたことが ない視点から規格を見ることができ,規格開発者の思いや意図などにも踏み込 めたような気がしました。 最後に参加者の感想として,以下が挙げられました。 ・逐条で要求をみるのではなく,箇条の関連性を読む。 ・2008年版,2015年版両方読んでみる。思想を読み取る。視点を変える。 ・新しい視点で良かった。理解が深まった。 ・予防はリスクに置き換わった。是正にまで至らないように未然防止が大事。 ・見える化する。文書ではない方法で見ることは収穫であった。 ・2015年版を漠然と捉えていた。 ・グループ分けをすると,言葉のつながりが見える。 ・社内規定を作る側としてはヒントとなる。 ・QMSを作るときの経営のシナリオはマッチングしておかないといけない。 ・いろいろな見方をすることが,新たな気付き。 ・予防処置は,計画を立てて実行は,未然防止的なことは盛り込まれている。 ・小説の一行だけ見ても,ストーリーは分からない。ISOもストーリーとし  て,企業の活動に貢献しようとしている。  企業のためにやる。システムとして運用していこうという思い。 ・QMSを組み合わせて,自分なりのシナリオを作って人々に説明したい。 今回は,QMSで意図した結果を導くためのポイントとして,様々な視点の意図 があることを理解するとともに,クラスター分析を使った語彙分析により,規 格の意図を理解するという新しい試みも行なわれ,まさに,QMSサロンという 場を共有したからこそ得られる内容でした。 QMSサロンを主管して感じることは,この場に参加するからこそ腑に落ちるこ とがあり,自分の知識として持ち帰ることができる場だと思います。 根強い固定ファンも増えつつあり,開催して良かったと感じる瞬間です。 次回,第20回は,2016年11月に開催予定です。 「QMSサロン」は,自身の勉強目的だけではなく,会員間コミュニケーショ ン,リレーションを築くにも最適な場です。新たな参加者を大歓迎します。 皆様のご参加をお待ちしております。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QKMアクティブラーニング報告  「組織の未来を創るモデリングの実践」 ─────────────────────────────────── 7月28日にQKMアクティブラーニング第四弾として,第三弾と同じく株式会社 イノベイション代表取締役 山上裕司様をお招きし, 「組織の未来を創るモデリングの実践」を開催しました。 今回は,猛暑の中18名の参加をいただきました。タイトルは毎回,山上講師な らではのユニークなもので,テーマへの興味とともに,未来のQMSを創造した いという期待をもった方たちにお集まりいただきました。 講義では,これまでの2015年版の規格要求事項をどのように組織のQMSに入れ 込むかではなく、組織のQMSを記述する際、私たちは何のために文書としてま とめているのかの原点に立ち返り,組織の方針に基づいたQMS の運用で具体的 に適用できる視点が学べるよう,ある具体的な意図する結果を実現するため の,『システム描写(モデリング)』について,山上流のワークショップで学 びました。 冒頭で,路上の自動車の眼前に一本の雑草が生えている写真からこの植物の生 存している理由を挙げるという,聴講者の発想力をかき立てるユニークな演習 から開始しました。 組織の未来をどう考えるかについて,こうありたい,これは避けたい,問題だ という観点があり,周りから影響を受けている我々組織人はこの点で植物とお なじで,QMSも同じではないかという視点で解説がありました。 目の前の目標手順を遂行するのではなく,本来の目的は何だったかという視点 が無いと、単にやっているだけになってしまう。目標は会社のトップが決める べきものかも知れないが,一人一人の立場でも使うべき考え方ではないかと示 唆がありました。 山上講師の得意とする,物で表現,比喩すること,五感,感情,概念,出来 事/ 事象での代理表現で理解を深めることができると解説されました。 ワークショップは,パン屋の事例で,成功状況と失敗状況の両者を睨んで,か つ複数の要因を含めて,将来へ向けての行動,改善の対策を考察する手法を実 践しました。 講義の時間帯の殆どがグループ討議と受講者が考える作業で,受け身の聴講で はなく参加型の形式で,アクティブラーニングに相応しい時間を過ごすことが できました。 今回の受講者アンケートの結果においても,回答者全員から有益なことが得ら れたとの回答を得ています。 近日中に結果詳細を掲載予定です。会員専用サイトからご覧いただけます。 また,QKMアクティブラーニングへのご意見,ご要望がありましたらQMS委員 会宛にお知らせください。  <会員専用サイト(ID,PWが必要です)>  http://www.ciaj.or.jp/qms_m/pdf/160318.pdf
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●ISO 9001関連の最新動向 ───────────────────────────────────
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●TL 9000コーナー「TL 9000セミナー報告」 ─────────────────────────────────── 1.TL 9000 セミナーご報告  クエストフォーラム日本ハブとCIAJ QMS委員会と共催で年に二回 TL 9000説  明会を開催しています。 7月4日にCIAJにおいて2016年最初のTL 9000説明会を開催いたしました。  TL 9000要求事項ハンドブックR5.5及びTL 9000測定法ハンドブックR5.0の解  説が行われました。 41名,15団体からの参加で,初参加の方が27名と多かったです。  初参加の方ではISO 9001とTL の関係を理解できたという感想が多く, TL 9000導入済の方ではR6.0秋の説明会に期待するというコメントがありま  した。NFVの最新動向の説明も好評でした。 秋には2016年第二回目のTL 9000説明会を開催予定ですので復習される方も  これから導入される方もご参加をお待ちしています。  開催案内は,CIAJホームページにて掲載いたします。 2.TL 9000要求事項ハンドブックR6.0  ISO 9001:2015が2015年9月に改正されました。  TL 9000規格はISO 9001規格をベースとしており,ISO 9001の改正は毎回全 て網羅することになります。  これに伴い,クエストフォーラムではTL 9000要求事項ハンドブックの改版 をISO 9001:2015を包含した形で行ない,R6.0版が 7月11日に発刊されまし た。  これを受け,日本規格協会が日本語翻訳版を発行予定です。翻訳委員会に より翻訳作業が行われ,2016年冬には発刊の見込みです。 QMS委員会TL 9000WGも翻訳委員会のメンバとして参加し貢献する予定です。  内容的にはISO 9001に合わせた箇条の変更及び内部監査に於いて測定法ハン ドブックを包含する等のTL 9000独自の更新を一部行っています。  邦訳版が発刊されましたら本メルマガにて紹介いたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」 ─────────────────────────────────── この2カ月間,さまざまなことが国内外でおきました。東京都知事の辞任,参 議院選挙,そしてなんといっても圧倒的な出来事は,英国の国民投票による EU(European Union:欧州連合)離脱でしょう。 この国民投票の結果は国の将来を決めるにはあまりにも賛否の票差が少なく, 本当にこれで良いのだろうかという疑問が浮かびます。また,どの程度投票し た人々は国の将来を見通し投票したのだろうかという疑問も残りました。 この種の意思決定は人気投票ではなく,政治的リーダーがそのリーダーシップ のもと決断すべきものだと思っていますが,今回の事例をみると国民一人ひと りの個々的な思いがあまりにも直接的に表に出てしまったような気がします。 まさに“船頭多くして船山に登る”の観があります。 さて,この話題と立場がかなり異なりますが,改訂されたISO 9001:2015 品質 マネジメントシステム規格(ISO規格)では,「リーダーシップ」が箇条5とし て新たに設けられています。リーダーシップの役割は多々ありますが,品質マ ネジメントシステム(QMS)では,そのシステムに目的を与え,意図した結果 を達成すべく,活動を導くものです。 QMSの基盤となる考え方は,ISO規格の序文0.3.1「システムとして相互に関連 するプロセスを理解し,マネジメントすることは,組織が効果的かつ効率的に 意図した結果を達成する上で役立つ。組織は,このアプローチによって,シス テムのプロセス間の相互関係及び相互依存性を管理することができ,それによ って,組織の全体的なパフォーマンスを向上させることができる。」と述べら れています。 この序文はQMSとは何かを端的に示しており,それを実現するために必要な “やるべき事”を要求事項として定められています。一つひとつの要求事項を 逐条的に見るだけではその要求事項の全体的な意味合いが分からないもので す。なぜそれを行わなければならないかという疑問を持ちつつQMSとしての意 図を理解し,現場のマネジメントに具体的に活かしていくことが必要なことだ と見ています。 さて,今回の英国の国民投票のように,業務に対する個々人の意見を問えば, その人たちの立場,目的,利害関係および持っている知識と能力の違いによ り,意見が異なるものです。 QMSでも人気投票的にプロセスの内容を集約すれば,結局は全体としてどうか というよりは個々の職場の都合により最低レベルのボトムラインに落ち着くこ とになるでしょう。 それゆえリーダーシップをとるべき立場にいる人々は,組織の将来を見据え方 針,目標,目的に展開し明確に指導する必要があります。またQMSが見すえる べき姿は,過去,現在ではなく,常に将来に目を向けることにあることを意識 したいものです。 さて話題を戻しますが,今回の英国EU離脱のインパクトは,瞬時に世界中に広 がりました。国内でも急速に円高がすすみ,株式市場は急速に落ちこんだこと は記憶に新しく,日本経済とそれほど多く関連性がない英国の動向ですら,多 大な影響を受けることを実感させられました。望む,望まないにかかわらずグ ローバルというシステムの中にいることを,今さらながら強く印象付けられた 出来事でした。 仮にこれをISO規格に置き換えれば,箇条4「組織の状況」に関連するものでし ょう。 組織を取り巻くビジネス環境はアウトソーシングを含め複雑です。実際のとこ ろ組織外のちょっとした出来事や変化で影響を受けてしまいます。これらに対 処するには個人的マネジメントでは限界があり,企業活動をシステム化し体系 的に運用せざるを得ないと言えます。すなわち,組織の内部および外部の変化 にシステムとして対応していく必要性を生じます。 事業環境や外部環境の変化に対し,その企業自体も体系的に変化しなければ不 安定になります。変化すること自体が不安定を導くと考える方もあるかもしれ ませんが,それは安定した環境がつづくという前提です。実際には企業の 内部・外部環境が変化しているので,それに呼応しシステムも変化し続けなけ ればシステムは陳腐化し安定化しません。 これまでQMSの世界のお話を聞くと,なぜか変化させないように活動にギブス をはめているようなお話を耳にすることがあります。秩序化と固定化を同一視 しているように見えますが,両者は全く異なるものです。 さて,システムの必要性を考えるとき,現実の世界で機能しているシステムは 無数にあります。例えば,社会システム,経営システム,会計システム,情報 システム,品質マネジメントシステム,環境マネジメントシステム,物流シス テムなど,さまざまなシステムが組み合わさり世の中で機能しています。 私たちが,コンビニでいつでも必要な物を手に入れられるのは,卓越した物流 システムがあってこそですが,私たちは通常そのシステムを見ることも意識す ることもありません。また,駅の自動改札システムが一時的でも停止したら, どのようなことが起きるかを想像するだけでも恐ろしいことです。 このように,何らかのシステムが機能不全にいたった時,初めてその重要性と 必要性を強く認識することになります。 ここで述べたいことは,自分たちは,何らかのシステムの中におり影響を受け ますが,日常それを意識するということはないということです。また傾向とし て,外部システムの不備には敏感で不満をよく述べますが,自分たちのシステ ムの不備に対しては意外と鈍感で寛容的ではないでしょうか。それは自分たち のことは客観視できないということを示すものなのでしょうか。 本来,システムが持つ特徴は,1) システムの構成要素は,システムの目的を 最大限に実現するために存在する。 2) システムはより大きなシステムの中 で,それぞれの目的を持つ。 3) システムの構成要素は,何らかの形で秩序 化されている。 4) システムは,変化と調整により安定化する。 5) システ ムは,フィードバック機能を持つ。 と言われています。 さて今回の英国のEU離脱は,英国の社会システムが変わることを意味します。 それゆえその構成要素である英国内の企業の経営システムも変わらなければな らなくなるでしょう。また,その構成要素であるさまざまな内部システムやプ ロセスにも影響が出てくるでしょう。大変無駄な作業とコストが発生すること になるかと思いますが,その対価は国民全員が結局は払うことになります。同 時にEU側もシステム変更せざる得なくなります。 前述したようにその様な重大な決定を,庶民感情による人気投票方式を選択し たこと自体が疑問ですが,その結果は単に英国一国の問題ではなく,世界的に 波及する時代だからこそトップとしてリーダーシップを発揮し慎重に対処して ほしかったと思うわけです。 さてこの様な話をしている間に,ソフトバンク社の孫社長は携帯電話や IoT(Internet of Things:最近はおしゃれな言い方をするのですね!)分野 に広く使われている英国半導体開発メーカであるARMホールディングスを100% 買収することで合意したと発表し報道されていました。その買収金額はなんと 3.3兆円と前代未聞の巨額投資です。 その背景として,今回のEU離脱の決定による英国ポンドの下落が理由のひとつ にあげられており,ここにも国民投票の結果が作用しているのかと思うと複雑 な気持ちです。 またその後,ソフトバンクとホンダ技研工業㈱とがAI(人工知能)の部分で提 携すると発表があり,いよいよその戦略が明確になってきました。 これら一連の話題のほんの少し前,多額の報酬でスカウトした外人副社長を解 任したことが話題になりました。なぜか違和感をおぼえたのですが,一連のサ プライズのピースを並べてみて,ようやくソフトバンクが見すえている将来像 が少し読み取れました。 社長のリーダーシップのあり方と決断スピードの速さに驚かされるとともに, その計画性が鮮明に浮かび上がってきました。リーダーシップ,計画性,スピ ードなどQMSの中でも参考すべき内容がありそうです。 さて,ARM社と聞くと遠い国の話のように思えますが,携帯電話の中にしっか り組み込まれていますし,個人的な趣味に使っているコンピューターボードに ARM社のプロセッサーが搭載されているので何となく親近感がありました。安 価ですが低電力で想像以上によく働きます。その半導体開発メーカが国内企業 の傘下に入るのですから,ビックリです。まさに状況は日々変化するグローバ ル社会です。 そのコンピューターボードには英国製と中国性の二つが存在しますが,少し高 価ですが英国製をあえて購入しておりました。そのパッケージには “Made in the UK”と誇らしげに記載されていたことを,今回の出来事で今さ らながら思い出しました。 その表記には産業革命以来のプライドが見え隠れしていますが,日本製はまだ ”Made in Japan“ですね。いずれ”Made in the Japan“になると良いなと願 う次第です。 さて話をもとに戻しますが,英国に関連した話がISO規格の生い立ちにもあり ます。 現在のISO規格の原点は1987年ISOに採用された英国のBS5750がもとになってい ることはご存じのとおりです。当時英国政府は政府関係の仕事について ISO 9000シリーズの取得を要請し,またCEマーク(商品がEU加盟国の基準を満 たしていることを示すマーク)を付けるには,ヨーロッパ規格であるEN規格( 欧州統一規格)とISO 9000シリーズの両者を満たすことを条件としおりまし た。 それが現在のISO 9001シリーズが世界的に広まるキッカケを作ったという歴史 的な背景があります。 当初は品質システムという名称で,現在のようにマネジメントという言葉は含 まれておらず品質保証のための規格と言ったところでしたが,ご案内のように 2000年の改訂によりISO 9001は品質マネジメントシステム規格と名称を変え, 品質保証の範囲を超え企業活動全体に関連するものとなり現在に至っていま す。その時代のニーズに合わせISO規格自体も変化してきました。 また旧規格では,活動の形骸化や生産性が向上しないといった現象を指摘され ておりましたので改訂され,今回はより企業が主体的に取り組めるように要求 事項およびその構成が見直されました。 企業にはその企業独自のやり方があると思いますが,それを主張する前に今回 見直されたISO規格を鏡とし,企業がおかれている状況に応じたQMSを整備し活 用することがまずは賢いやり方だと思っています。今回の改訂では企業の主体 性と独自性を示すことは重視されており,その意味において何らの制約もあり ません。その企業の取り組み方が良く見えるようになるでしょう。 企業の独自性を示すには,まずQMS活動に明確な目的を与え活動ベクトルを整 えるものとしてトップマネジメントのより積極的参画が不可欠だと思います し,戦略との整合性を確保するために指導的立場にある事務局の卓越した専門 知識とそのリーダーシップがさらに重要になるのだと思っています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●日本品質管理学会規格「プロセス保証の指針」講習会ご報告 ─────────────────────────────────── 7月1日に日本科学技術連盟で開催された日本品質管理学会規格「プロセス保証 の指針」に参加しましたので,その概要を報告いたします。 日本品質管理学会は品質に関する規格「日常管理の指針」,「小集団活動の指 針」,「方針管理の指針」など多くの規格を発行しており,今回の講習会はこ れらの規格の一つである「プロセス保証の指針」について解説するものです。 冒頭,標準委員会 委員長の住本守氏より「プロセス保証の指針」の制定の狙 いはプロセス保証に関する総合的なパッケージを提供することで,この規格を 使用する対象者は  1.TQMを実戦している組織  2.ISO 9000シリーズを用いた認証制度を運用・活用している組織  3.安心・安全の確保が重要となる社会インフラを支える組織 であると解説がありました。 次に,「プロセス保証の指針」の原案作成委員の慶応大学 山田秀氏より,製 品の生産・提供におけるプロセス保証の構成要素は以下の5つの要素と定義し たと説明がありました。 (1)標準化 (2)工程能力の調査・改善 (3)トラブル予測・未然防止(4)検査・確認 (5)工程異常への対応 (1)から(5)について,前田建設工業の村川賢司氏,慶応大学 山田秀氏,元職 業能力開発総合大学校 入倉則夫氏,中央大学 中條武志氏より個別の解説があ りました。 標準化では,5M1E(MAN:人,MACHINE:機械,METHOD:方法,MATERIAL:材料, MEASUREMENT:測定,ENVIRONMENT:環境)の多岐にわたる要因の中で,プロセス のアウトプットに影響するものを対象にすると説明がありました。 質疑応答では, 「顧客の潜在化しているニーズをプロセスに取り込むイメージが湧かない が?」の質問に対し,「営業が顧客がこんなことを望んでいるのではないかと 考え,商品企画・製品設計でニーズをどう作りこむかを考える。潜在化してい ることをだんだん具現化させていくことで,実現していく。」との回答があ り,「但し,規格ではニーズを捕まえること自体ををプロセス保証とは言って いない。」との補足がありました。 「一般にQCD(品質,コスト,納期)という言葉があるが,コストと納期は品 質に含まれるのか?」という質問に対し「供給側から見ると品質,コスト,納 期は別物かも知れないが,顧客からみるとコスト納期を含めて全て品質に見え る。」との回答がありました。 「検査,確認を突き詰めるとプロセスにおける不具合がゼロになるのか?」の 質問に対しては,「現実にはゼロにはならない。取り得る対策をとり不具合を 減少させることが重要。」との回答でした。 最後に,前述の「プロセス保証5つの要素」があるが,これらをあらゆるプロ セスで行なうことが基本。そしてそれを行うのは人なので,人を育てられるか が鍵でここに品質保証の難しさがあると中條武志氏が述べられていました。 所感:全般的には,生産現場や製造現場の各プロセスにおいて,何を行うべき かを説いた規格で一つ一つの指針は「不具合があればそれを水平展開する。」 など既知のノウハウの集合体です。しかし,これらの個々の対応策を品質保証 体系図として,体系的,理論的に整理したところにこの規格の利用価値がある と理解できました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記 ─────────────────────────────────── 今年の関東甲信地方の梅雨明けは,例年と比べ夏の訪れも遅くなってしまいま した。梅雨明けが遅くなった原因は,テレビの天気予報でも取り上げられてい ましたが,「やませ」という現象で,春から秋にオホーツク海高気圧からの冷 たく湿った風の影響で,関東では雲が発生しやすく,気温が下がっているとの ことです。 夏休み中の子供たちは,この季節の変化に対応して,宿題の計画を見直せてい ますでしょうか?梅雨の間に宿題を終わらせて,これからの本格的な夏空の下 思う存分遊べるといいですね。 これから夏休みを迎える方も多いと思います。8月5日からはリオデジャネイロ オリンピックが開幕します。12時間の時差を乗り越え日本選手を応援しましょ う。 最後までお読みいただき,ありがとうございました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」── * 配信追加は下記にお知らせください。  mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp * 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会     QMS委員会メルマガ編集部  http://www.ciaj.or.jp/top.html  http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ) * 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(菅野 清裕) * 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!  qmsmelg@ciaj.or.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C)2004-2016 CIAJ QMS committee All rights reserved.