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   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

   「総会特別講演は,
    『金星探査機「あかつき(PLANET-C)」プロジェクトから学ぶ
              (金星をめぐる軌道再投入までの道のり)』
    と題して開催します!」

                    2016年 5月31日発行 第73号

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≪ 第73号 目次 ≫

 ・はじめに
 ・2015年度QMS委員会総会開催のご案内
 ・えくすぱーと・のれっじ・セミナー「TL 9000 セミナー」のご案内
 ・異業種見学会 『独立行政法人 製品評価技術基盤機構(nite)』ご案内予告
 ・QKMアクティブラーニング第四弾のご案内予告
    ~2015年版対応で未来志向のQMS再構築をしてみませんか?~
 ・ISO 9001:2015改正に伴う第三者審査の品質向上シンポジウムご報告
 ・ISO 9001関連の最新動向
 ・TL 9000コーナー「APAC Regional Conference」のご報告
 ・知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
 ・編集後記

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●はじめに
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風薫る 5月も残りわずかですが,吹き抜ける風がなんとも心地よく爽やかに感
じます。ゴールデンウィークには,近場,遠出とリフレッシュされた方も多か
ったのではないでしょうか。

私は,世界の夢の旅行先10ヵ所に選出されている“あしかがフラワーパーク”
に行ってきました。そこには,移植は不可能とされていた大藤が見事に咲いて
おりました。当初,棚面積73㎡であったものが移送され,今では10倍以上の
1,000㎡を超える棚に成長しており,幻想的な景色であるとともに見事に復活
した生命力,幹の太さなどの凄さに驚かされました。

さて,明日から6月です。関東地方ではそろそろ梅雨入りとなります。そして,
QMS委員会は6月17日の総会を境に新しい1年が始まります。今回の総会では
宇宙航空研究開発機構様による特別講演も行います。

また,7月にはクエストフォーラム日本ハブ様と共同開催のTL 9000セミナー,
異業種見学会,QKMアクティブラーニングを実施の予定です。詳細は追って
ご案内をいたしますが,本メールをお読みいただきご期待ください。
皆様のご参加をお待ちしています。

それでは,メルマガ73号をお届けいたします。


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●2015年度QMS委員会総会開催のご案内
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既にご案内しておりますが,2015年度QMS委員会総会を開催いたします。

総会は,次第の通りで,前年度の事業報告,今年度の事業計画を中心に行いま
す。回答期限は6/8(水)となっております。会員各社の代表者は,出欠もしく
は委任状の提出を期限厳守でよろしくお願い致します。

特別講演は,『金星探査機「あかつき(PLANET-C)」プロジェクトから学ぶ
(金星をめぐる軌道再投入までの道のり)』と題して,宇宙航空研究開発機構
(JAXA)のプロジェクトマネージャ 中村 正人様をお招きして,金星探査機
あかつきの軌道再投入成功までの取組みとそこから得た教訓などについてお話
をいただきます。

また,講演終了後には,講師ならびに会員相互のコミュニケーションの場をと
して懇親会を行います。特別講演と懇親会は,会員企業以外の方も参加は可能
です。申込み期限は総会同様6/8(水)となっております。

1. 開催年月日:2016年 6月17日(金)

2. 開催場所:情報通信ネットワーク産業協会 会議室B〜E

3. 総 会:13:30〜14:30  (会員企業のみ参加可)
  <総会次第>
  (1) 2015年度 QMS委員会事業報告
  (2) 2015年度 決算報告・会計監査報告
  (3) 2016年度 役員改選 
  (4) 2016年度 事業計画
  (5) 2016年度 予算計画
  (6) 意見交換(QKMアクティブラーニングの運営やテーマ選定など)

4. 特別講演:15:00〜17:00 (Q&Aを含む)
 [テーマ]
   『金星探査機「あかつき(PLANET-C)」プロジェクトから学ぶ
              (金星をめぐる軌道再投入までの道のり)』
 [講 師]: 中村 正人様
    宇宙航空研究開発機構(JAXA)あかつきプロジェクトマネージャ

5. 懇親会:17:15〜
  講師の中村様にもご参加いただきます。会員相互のコミュニケーションの
 できる絶好の機会ですので,奮ってご参加ください。


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●えくすぱーと・のれっじ・セミナー「TL 9000 セミナー」のご案内
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来る7月4日にえくすぱーと・のれっじ・セミナーとして,クエストフォーラム
日本ハブ様とQMS委員会 TL 9000WGの共同で,「TL 9000 セミナー」を
開催いたします。

今回のセミナーは,TL 9000 要求事項及び測定法等について解説を行います。
TL 9000は,ISO 9001をベースとしたグローバルに普及している通信分野の
セクタ規格です。その内容と動向を知る絶好の機会となりますので,奮って
ご参加いただければと思います。

1. 開催年月日:2016年 7月 4日(月)14:00〜17:00

2. 開催場所:情報通信ネットワーク産業協会 会議室C〜E

3. 講師:クエストフォーラム公認訓練機関(株)テクノファ 講師
     吉崎 久博 氏,  小林 真一 氏

4. セミナー内容:
    1) クエストフォーラム日本ハブの紹介
    2) TL 9000規格の基本説明
     ・ TL 9000要求事項(R5.5)
     ・ TL 9000測定法 (R5.0)
    3) TL 9000規格の最新動向と質疑応答
     ・ 最新動向
       ISO 9001改正に対するTL 9000の対応
     ・ 質疑応答
       これまでに寄せられている質問への解説。質疑応答。

5. 参加申込み 以下のWEBサイトから参加申し込みいただけます。
   <CIAJ>
     https://cp11.smp.ne.jp/ciaj/seminar


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●異業種見学会 『独立行政法人 製品評価技術基盤機構(nite)』ご案内予告
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毎回好評をいただいております異業種見学会は,7月 8日(金)に独立行政法人
製品評価技術基盤機構(nite)の見学を企画いたしました。

niteは,社会全体の奉仕者として『国民のくらしの安全と未来への挑戦を支え
続ける』ことをミッションとして掲げ,時代と共に多様化する国民や社会のニ
ーズに対応すべく,法律などに基づき,消費生活用製品の事故情報を収集・調
査・分析し,事故の原因究明やリスク評価を実施しています。

今回は,事故再現テスト室等の現場の見学に加えて,nite様による『製品安全
分野の活動』のご講演,さらには,「電気用品安全法の規制対象の考え方及び
大括り化5品目の定義・解説の検討状況について」というホットな情報につい
て,ご担当をされている方から直接お話をいただけるという貴重な機会のお計
らいのもとでの開催となります。

準備が整い次第,募集案内のメール通知をさせていただきます。ご期待くださ
い。( 6月10日頃の通知の予定です)


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●QKMアクティブラーニング第四弾のご案内予告
    ~2015年版対応で未来志向のQMS再構築をしてみませんか?~
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QMS委員会では,ISO 9001:2015改訂を契機に,QMSの運用における弱みを解消
させ,強みはより強化していただくことを意図して,2013年度から正しい知識
を身につけていくように以下の取組みをして参りました。

◆2013年度
 ・榎本徹様 QMS戦略セミナー~リスクセミナー(第一弾)
       『リスクマネジメントの本質と
                  QMSにおけるリスクマネジメント』
 ・榎本徹様 QMS戦略セミナー~リスクセミナー(第ニ弾)
       『リスクマネジメントと意思決定』
           及び『次期改正ISO 9001情報とリスクマネジメント』
◆2014年度
 ・山田秀様 ISO 9001次期改定動向説明会(ISO/DIS 9001:2014発行時)
 ・ISO/DIS 9001:2014の Validation Programへの委員会としての参画
 ・山上裕司様 QMSにおけるコンテクストの意義を考える
             (QKMアクティブラーニングの試行として実施)
◆2015年度
 ・山上裕司様 QKMアクティブラーニング(第一弾)
          「ISO 9001:2015年版の”入れ方”」
 ・山上裕司様 QKMアクティブラーニング(第三弾)
          「QMSのやる気スイッチ」

特に,2015年からは,ISO事務局及びQMSに係る全ての方々の学びの場を指向し
たQKMアクティブラーニングを立上げ,講師に山上裕司様をお招きして,現場
目線でISO 9001を理解していく独特の体感型ワークショップを行って参りまし
た。

このような経過をたどってきた今,2015年改訂を規格というモデルの模倣する
ような改訂で終わらすことなく,規格改訂をレバレッジとして使い,「今まで
できていないこと」「やっていないこと」にチャレンジしてもらいという気持
ちを講師を勤められた山上様と共有しております。

この具体化として,7月28日(金)に,再度,山上裕司様をお招きして,QKM
アクティブラーニング(第四弾)を企画しております。
テーマとしては,「組織の未来のQMSを創るモデリング(仮称)」のようなも
のを考えております。引続き,講師と調整の上,6月末頃に募集のご案内をす
る予定です。こちらもご期待ください。


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●ISO 9001:2015改正に伴う第三者審査の品質向上シンポジウムご報告
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4月23日に日本科学技術連盟で開催された第157回日本品質管理学会シンポジウ
ム「ISO 9001:2015改正に伴う第三者審査の品質向上」に参加しましたので,
概要を報告いたします。

テーマは「第三者審査の品質向上−2015年版に対応する審査技術」で,審査を
行う立場からのISO 9001:2015改正についてです。

冒頭,品質マネジメントシステム規格国内委員会の中條武志委員長より以下の
解説がありました。

 ISO 9001は制定から30年,今年の改訂は 4回目,規格を押し付けることで,
 思考を妨げる懸念が発生している状況の中,今回の改訂は有効性の向上と
 多様なMSの整合を図るのが 2つのポイントである。
 2008年版の追補改訂の移行期間は2年間であったが,今回は大幅改訂なので
 移行期間は3年と長くとってある。

 改訂のポイントは以下の 4点である。
 ・改訂の意図(要求事項に反映したもの)は,10年以上15年は持たせる。
  QMSの安定利用を目指す。
 ・規格の構造と表現上の特徴は,附属書SLの構造に従うこと。サービス業に
  配慮すること。
 ・QMS のモデルは,リスクに基づく考え方で計画を行いプロセスアプローチ
  でPDCAを回すこと。
 ・要求事項に関する特徴は,附属書SLによる強化及びQMS固有の強化で,QMS
  の信頼度の向上を目指している。

  ISO 9001の基本性格は変わっていない。リスクに基づくアプローチをどう
  活かすかは組織,認証機関次第。基本的には形式的認証取得はやめて欲し
  いと考えている。

審査員の力量についてQMS部会WG2の福丸典芳リーダーより講演がありました。

 審査員は組織が定義したQMS を評価することが基本。組織によって QMSは
 画一化されていない。審査員の力量が審査の質を左右する。
 審査の対象は方針管理, 日常管理がベース。
 要求事項の根底にQMP があり,各原則について説明,根拠,主な便益,取り
 得る行動が明記されており審査員はこれをベースとすることで本質的な審査
 ができる。

審査する側からは日本科学技術連盟のISO の審査登録センターの小野寺将人担
当理事から今回の改正について以下の説明をされました。

 ・リスクベースのマネジメント
 ・事業プロセスとISOマネジメントシステムと統合

 が大きな特徴で,この2015年版は,組織としても審査機関としても大きな
 正念場である。

 また日科技連の審査では逐条審査を行わないなどの特徴が紹介されました。

受審する立場からは既に2015年版で審査を終えた企業代表として清川メッキ
工業の清川卓二専務取締役が,規格の内容は元々行っていた内容であり,漸く
規格が実態に追いついてきたという感想を述べられていました。

パネル討論では QMS部会の平林良人副部会長がパネルリーダを務め,審査に関
する話題がでました。

 ISO 9001:2015年版ではトップ自らが QMSに関するコミットメントを実証す
 ることが要求事項となり, トップ自身が QMSをきちんと理解していることが
 必須となった背景から,トップインタビューに関し,相手が話しやすいよう
 に聞いていく,経験を積みながら研鑽する,審査側のメンバ選定も含めた工
 夫と準備を行うことなどについて議論がなされました。

質疑応答では参加者より,

 「2015年版ではeffect(効果)は要求しているが,efficiency(効率)に
  ついては言及がない。これは片手落ちではないか?」
 
との質問が発せられ,中條武志委員長が

 「確かにISO 9001では効率に関しては言及していないが企業活動なので
  当然 効率は視野に入れなければならない。」
  
と回答されていました。

最後に中條委員長からISO 9004は2018年改訂の予定で開発中であり,マネジメ
ントに役立つ指針を作りたい,即ち,経営環境が変わる中,その中でどんな経
営をしたら良いかの方針を示すガイドラインとしたいとの情報紹介がありまし
た。


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●ISO 9001関連の最新動向 
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当月は,ISO 9001関連ではお伝えすべき大きな情報はありません。そこで,
ISO 9000ファミリーの開発状況として,改訂に着手している規格の紹介をい
たします。
この中で,ISO 9004は前号で報告の通り,全く新しい規格として改訂される
方向性にあるとのことで,今後の動向が注目されます。

 <2015年改訂着手の規格>
 ・ISO 9004:2009  組織の持続的成功のため運営管理
            −品質マネジメントアプローチ
 ・ISO 10005:2005 品質マネジメントシステム
            −品質計画書の指針
 ・ISO 10006:2003 品質マネジメントシステム
            −プロジェクトにおける品質マネジメントの指針
 ・ISO 10001:2007 品質マネジメントー顧客満足
            −組織における行動規範のための指針
 ・ISO 10002:2014 品質マネジメントー顧客満足
            −組織における苦情対応のための指針
 ・ISO 10003:2007 品質マネジメントー顧客満足
            −組織における外部における紛争解決のための指針
 ・ISO 10004:2012 品質マネジメントー顧客満足
            −監視及び測定に関する指針
 ・ISO/TR 10013:2001 品質マネジメントシステムの文書類に関する指針
           ・・・ ISとして発行予定
 ・ISO 10015:1999 品質マネジメントー教育訓練の指針
 ・ISO 10018:2012 品質マネジメントシステムー手引
            −人々の参画及び力量


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●TL 9000コーナー「APAC Regional Conference」のご報告
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4月12日〜14日にクエストフォーラムのリ−ジョナル会議(APAC Regional
 Conference)が中国(深セン)で開催されました。
中国をはじめ,欧米等から約150名の情報通信業界の関係者が集まり,
 「Collaboration and Innovation for a Better ICT Industry」
をテーマに各種講演やベストプラクティス(BP)発表等がありました。

 <APAC Regional Conference報告>
  開催日:2016年4月12日(火)〜4月14日(木)
  会場 :InterContinental Shenzhen(中国,深セン)
  日程 :4/12(火)  VIP講演,基調講演,Executive講演,BP発表
      4/13(水)  基調講演,Executive講演,TL Expert講演,BP発表
      4/14(木)AM Workshop
  会議内容:
  ・VIP講演  :中国深セン当局や認証機関による中国国内動向の講演
  ・基調講演  :ISO TC176/SC2, ASQ(American Society for Quality)
          によるマネジメントシステム等に関する基調講演
  ・Executive講演:QuEST Forum Chair/CEO,参画企業Executiveから
           業界動向を鑑みた品質活動や環境・社会問題への積極
           的な取り組み紹介等,非常に興味深い講演が多々あり
  ・TL Expert講演:ISO 9001 2015年度版を考慮したTL9000改訂概要の
           紹介
  ・BP発表    :参画企業による品質向上に関する改善活動事例発表
  ・Workshop   :通信業界における品質マネジメントの考え方や
           TL 9000の価値や具体的な各社適用に関する質疑応答

品質向上活動に限らず,環境・社会問題への対応や将来の技術動向等,幅広い
内容の会議でした。今後,機会がありましたら是非ご参加ください。

 URL:http://www.questforum.org/events/2016-apac-regional-conference/

ご参考情報:
EMEA Regional Conference:6月21日〜22日スペイン(バルセロナ)で開催予定


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●知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
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ISO 9001: 2015 品質マネジメントシステム(QMS)は,旧版(ISO 9001:2008)
に従った QMSで指摘されてきた,形骸化と有効性などの諸課題に対処すべく見
直しが行われました。
見直された個所は多岐にわたりますが,その本質は旧版と一貫性があり QMSが
適切に機能している企業では見直す部分はあまりないかと思います。
一方,要求事項の箇条ごとに逐条的に対応した QMSは要求事項の配列が変わっ
たため,見直しが必要な部分が少なからず出てくるかと見えます。

ご案内のように QMSの要求事項は特別なことを望んでいるわけでもなく,基本
的な事柄に徹しています。しかし,実現するとなると何かしら無用と思われる
形式的なものが多くなってしまうのではないかと懸念する声も聞こえてきます。

 QMSを単純化して見れば,品質方針を実現するため,必要なプロセスを基本単
位にシステム的な要素を組みいれ連携させ,運営管理するところにあります。
理路整然としたアプローチです。 QMSの主体は要求事項ではなく,プロセスを
要素としたシステムです。

要求事項はプロセスをシステム化する手段ですが,ともすると外部監査を強く
意識した適合性が最大の関心事となりがちです。その様な場合,監査が終われ
ば見直される機会もなく結局は形骸的した QMSに向かってしまうことが予想で
きます。今回の改訂を契機に思考も整理すると良いのではないでしょうか。

さて,今回の改訂内容で注目している点のひとつに QMSへのトップマネジメン
トの“リーダーシップ”および QMSの有効性についての“説明責任”がありま
す。これまでもトップマネジメントの“役割と責任”について言及されていま
したが,トップマネジメントの代行者として管理責任者(今回の改訂で廃止さ
れましたが)が,事務局とともに QMSの構築,運営管理にあたっていたと思い
ます。

しかし, QMSは品質保証体系と異なり企業全体にかかわることが多く,設計・
開発から製造・サービスと,その裾野が広いためトップマネジメントの裏付け
がなければ,うまく一体感ある QMSは構築できません。トップマネジメントの
積極的な理解と支援が必要です。

 QMSの最初の原則に「顧客重視」の原則があり,またトップマネジメントのリ
ーダーシップにも「5.1.2 顧客重視」として三つの要素で具体的に展開されて
います。ひとつは“法令・規制の遵守”であり,もうひとつは“製品及びサー
ビスの適合”と,“顧客満足の向上”を阻害する要素の除去・対応であり,最
後の要素として“顧客満足の重視”が維持されていることです。
これらはビジネスを行う上で,基本すぎるぐらい基本的な要求事項ですが,行
うことはそれほど簡単なことではないことはお分かりだと思います。

今回の改訂は,要求事項を盲目的または逐条的に満たすことは望まれておらず
その狙いは企業の“戦略と整合したQMSの品質方針”を設定することにより,
“一貫性をもって意図した結果”が達成できるよう主体的に QMSに取り組むこ
とを重視しています。

 QMSが企業の能力証明の役割を担うことは当然として, QMSがその企業の“戦
略的な経営資産”であることを認識し活用していく工夫を重ねなければなりま
せんが,それにはトップマネジメントの積極的リーダーシップが不可欠です。

このようなことは,すでに皆さんはスタディーされているでしょうから,今さ
ら言葉を重ねる必要もないかと思います。

そこで話題を切り替えますが,今月は企業の決算発表が集中しております。日
銀の低金利政策の影響により金融系の業績も明暗が分かれましたし,さらに世
界的な資源あまりの状況で総合商社系でもその決算内容は明暗が分かれました。
また,為替レートの影響で企業業績も一喜一憂しています。
これらの決算内容をみると,さまざまな外部環境(コンテキスト)から“不確
かさの影響”を企業業績が受けざるを得ない状況であることをあらためて実感
するものです。

その一方,今回の決算内容について遵法(コンプライアンス)に関わる不祥事
を起こした企業に関心が向かってしまいます。

安定的なビジネス環境が期待できない状況において,何らかの挑戦を続けなけ
れば企業の継続的成長は難しくなりますから,戦略をねり挑戦しつづけます。
それでも狙い通りの結果が出ないことが少なくありません。
しかし,これは主体的に挑戦した結果であり,仮に狙い通りでなくとも投資家
および利害関係者の皆さまも納得できる部分があるかと思います。また,学習
と成長という観点から企業にとって何らかの有益な資産が残るものですから,
次の挑戦に期待が残ります。

一方,法令・規制へのコンプライアンス違反により引き起こされる不祥事は,
挑戦によるリスクとは全く異なるものです。企業倫理や社会的責任(CSR) に関
連するものであり,世間(すなわち顧客や潜在顧客)から厳しい目が向けられ
ることになります。

この点,前述したように QMSは「顧客重視」(5.1.2) へのリーダーシップと
して「顧客要求事項及び法令・規制要求事項を明確にし,理解し,一貫してそ
れを満たしている。」ことを実証することを求めています。納得できる要求事
項ですね。

しかし,昨今の不祥事を見ていますとそうとも言えなくなっていると思えます。
 QMSの有効性を議論する以前に,基本事項を再度確認する必要がありそうです。

昨年は,世界的なシェア—をもつ欧州自動車会社の排ガス偽装問題がありまし
た。現状失墜した信頼を取り戻し名誉回復することに一生懸命です。

一方,ごく最近国内の伝統的な財閥系グループ傘下の自動車メーカーの燃費偽
装疑惑が発覚し,日々報道されています。
しかし,この企業は以前もリコール隠しとして再三問題となり抜本的な見直し
が行われたことになっていましたので,新たな不祥事が露呈したことにより経
営陣の責任は当然として,その企業の本質的体質が問われるものとなるでしょ
う。また,この不正が長期にわたり行われていたという報道もあり,これから
その真相が解明されるかと思います。

その企業が開示している内容を見ますと,例えば「当社製車両の燃費試験にお
ける不正行為に係わる国土交通省への報告について」(平成28年 5月11日)を
読むと,要因のひとつとし“開発関連部門の管理職(複数)は,業務委託先と
のコミュニケーションを十分に行っていなかった上,高い燃費目標の困難性を
理解していたにも係わらず,実務状況の確認をしなかった。”と報告されてい
ます。
しかしその後も,対象外の車種でも次々と偽装が報告されることにより,単発
的なコミュニケーションエラーではなく企業全体として意図的に行われていた
のではないかという“戦略的偽装”の疑念があらためて生じます。この報告内
容の信憑性も怪しくなってきます。

伝統的な名門企業なだけに,このような疑惑が次々と出てくることは誠に遺憾
です。財閥グループも積極的に支援するわけにもいかず結果的に他の自動車メ
ーカーの傘下に組み込まれることとなりました。
企業のレピュテーション(名声)とブランド価値が急激に低下しますから,新
たな体制で名誉回復することが第一のステップでしょう。
それにしても,社員,地域社会,取引先企業などにさまざまな影響が予想でき
ますから,とても残念です。トップマネジメントのリーダーシップがうまく機
能しなかったように見えます。

また,昨年発覚した名門大手電機メーカーのトップマネジメントの意向に伴う
不正会計の影響を見てみますと,一時的な債務超過の話もあり現在でも財務的
に非常に厳しい状況にあります。

これらの事例を見ますと,コンプライアンスに基づく問題は大企業であったと
しても急激に経営状態を悲劇的に悪化させるという特徴があり,企業は教訓と
して学ばなければなりません。

さて話を戻しますが,トップマネジメントのリーダーシップの要求事項は,至
極当然のことであると冒頭で簡単に述べました。しかし,伝統的な大手企業の
不祥事を見ますと,トップマネジメントのリーダーシップは,要求事項が述べ
るほど簡単なものでもないように見えてくるのです。

まず, QMSとしては法令・規制も変わりますので偶発的な意図しない不遵守を
避けるためにも,変更をフローし確実に運用できる体制が求められます。コン
プライアンス要素は確実に守ることが前提であり,PDCAサイクルの改善プロセ
スでは対応できない事柄であると再認識しなければなりません。

宮本武蔵が著した「五輪の書」の中に,「観の目,見の目」(かんのめ,けん
のめ)という極意があるそうです。「観」とは全体を広く見ることであり,
「見」とは,対象を見据えることらしいのです。視野を広くもちつつ,かつ対
象(相手の太刀先など)をしっかりと認識している姿勢こそが,真剣勝負で相
手と対峙した時の姿勢だそうです。この二つの目を同時に持つことは極めて難
しいのですが,命をかけた真剣勝負となると,できないとも言っていられませ
ん。剣豪として生き残ることはそれだけ厳しいものなのでしょう。少なくとも,
コンプライアンス案件は“見の目”で見ていかなければなりません。

さて,企業経営でもビジネスの全体を見すえた戦略的な視点と,ある個所にフ
ォーカスした戦術的視点が求められますが,多数の組織が関連する企業では全
体と部分の関連を調整することは容易ではありません。一般的には,企業活動
全体の成果は財務諸表および経営のための適切な指標(主に財務的な評価にな
りますが)を組み合わせ企業全体の状況を把握しています。いわば“観の目”
です。

しかし,それだけではその財務を生み出す仕組みや資源の実態を理解すること
はできません。逆に,個々の組織のプロセスはその部分に置いて詳細に把握さ
れマネジメントされているかと思います。しかし,それが企業全体にどのよう
な有効性を示しているのかを知ることはむずかしいものです。

この点 QMSでは,戦略と整合した“品質方針”がトップマネジメントから提示
され,それに関連づけされた各プロセスの“品質目標”が明らかになります。
この品質方針を“観の目”とし,品質目標を“見の目”とし,さまざまな不確
実さの影響に対峙していけば,意図した結果をよりよく導けれるのではないで
しょうか。


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●編集後記
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先日,バレエ界の最高賞「ブノア賞」の女性ダンサー部門を,オニール八菜さ
んが受賞したというニュースを新聞で読みました。この記事によると,オニー
ルさんは日本人の母親とニュージーランド人の父親を持ち,日本的な職人かた
ぎとフランス流のエレガンスを持つ「新時代の申し子」と言われ,日本国内は
もとより世界のバレエ界でもこれからの活躍が期待されているそうです。

外国生まれのISO 9001ですが,2000年版改訂の際には日本流の品質管理に対す
る考え方が取り入れられたと聞いています。ひと昔前は品質を武器に,日本企
業もオニールさんのように,「時代の申し子」さながら世界で活躍する製品を
多く輩出していましたね。

勿論,現在でもオンリーワン商品や独特のビジネスモデルにより,世界を舞台
にビジネス展開している日本企業はあります。しかし,一部の企業は元気だけ
れども多くの企業が元気といえるまでには至っていないと思います。

8月にはリオデジャネイロでオリンピックが開幕します。スポーツ界はきっと
盛り上がることでしょう。昨年末から暗いニュースが立て続けて報道されてい
る産業界ですが,今以上に世界で活躍できるよう「がんばれ!ニッポン!」と,
エールを送ります。

最後までお読みいただき,ありがとうございました。


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