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   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

    「QKMアクティブラーニング ISO 9001:2015年版の“入れ方”開催!」


                      2015年11月30日発行 第70号

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≪ 第70号 目次 ≫

 ・はじめに

 ・異業種見学会のご報告「キッコーマン株式会社」

 ・QMSサロン報告「QMSの新7原則の意図を整理する」
   〜新7原則から見るISO 9001:2015の理解と展開〜

 ・QKMアクティブラーニング第一弾のご報告
   「ISO 9001:2015年版の“入れ方”」

 ・QKMアクティブラーニング第二弾のご案内
   吉川先生による「バランススコアカードの基礎から構築まで」

 ・ISO 9001関連の最新動向 〜 JIS Q 9001:2015公示

 ・TL 9000コーナー「TL 9000 セミナー報告」

 ・知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」

 ・コラム「予測法」

 ・編集後記

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●はじめに
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今年は戦後70年ということで「70」にまつわる話題やイベントが多く感じてい
ます。そんな中,QMS委員会メルマガもめでたく第70号となりました。

創刊号発刊の2004年7月30日から,ここまで続けられてきたのも皆さまのご支
援があったものと考えています。

さて,QMS委員会では,今年一番の目玉ともいうべき「QKMアクティブラー
ニング」の第一弾を11月20日に開催しました。募集定員を大幅に超えるご参加
をいただき,参加者からは有益であったと好評をいただいております。

また,第二弾として,12月には新たに「QKMアクティブラーニング」に仲間入
りした吉川先生による「BSC構築セミナー」を開催いたしますので奮って
ご参加をお願いします。

詳しくは「QKMアクティブラーニング第一弾のご報告」,「QKMアクティブラー
ニング第二弾のご案内」をお読みください。

それでは,メルマガ70号をお届けいたします。


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●異業種見学会のご報告「キッコーマン株式会社」
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10月16日,22名の会員の方に参加いただき,千葉県野田市にあるキッコーマン
株式会社の異業種見学会を開催いたしました。

今回は,工場の見学をはじめ,伝統的なしょうゆ醸造技術や当時の道具や装置
を保存・展示している御用蔵の見学,しょうゆの海外展開や各国でのしょうゆ
の使われ方を紹介したアカデミー(ご講演)という構成で見学会を行いました。

工場見学では,キッコーマンの原点であるしょうゆの製造工程を見学しました
が,想像以上に大規模な機械化がなされ,作業員の方が殆ど見受けられず,ほ
とんどの工程がオートメーション化され衛生的に管理されている点が大変印象
に残りました。

特に,しょうゆ造りで最も大切な,しょうゆこうじを造る製麹(せいきく)工
程では,常に最適の温度・湿度に保つように調整され,微生物を扱う工場なら
ではのきめ細やかな管理とやさしさを感じました。

また,キッコーマンの格別な計らいで,現在も宮内庁にお納めするしょうゆを
醸造している御用蔵を案内していただきました。昔ながらの伝統の手造りによ
る製法や道具を知ることができ,オートメーション化された現在の製造ライン
と対比して理解することができました。

アカデミーでは,海外管理部長の深澤様より,「食文化の国際交流〜しょうゆ
の国際化」と題し,戦後間もない頃から,国内市場の先行きを見極め,伝統的
な食文化である“しょうゆ”を海外で展開し始めたこと,日本の味の押しつけ
ではなく現地の食材・料理に合わせたレシピの提案をしていること,現地生産
により地域との融合を図るといった企業活動を知ることができました。

質疑のなかで,キッコーマンの味についての誇り,社員が自社を愛していると
いった企業文化が根付いているというお話が非常に印象的でした。

なお,参加者アンケートの結果,大変満足のいく内容との回答をいただきまし
た。参加者アンケートの結果は,以下の会員専用サイトからご覧いただけます。
是非,ご一読くださるようお願いいたします。

 <会員専用サイト(ID,PWが必要です)>
 http://www.ciaj.or.jp/qms_m/pdf/151016.pdf


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●QMSサロン報告
  「QMSの新7原則の意図を整理する」
   〜新7原則から見るISO 9001:2015の理解と展開〜
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第17回「QMSサロン」を 11月12日に開催致しました。

QMS委員会フェロー 山本 正 様(MBA,Ph.D)をファシリテーターに迎え,
ISO 9001:2015の構造を理解するために,7つの原則を起点に改訂の目的と
その本質と構造について活発に意見交換が行われました。

今回は,ISO 9001:2015発行のタイミングも良く,2015年度版規格の意図を
理解し社内推進に役立てたい,という目的で複数の初参加者も加わり闊達な
意見交換の場になりました。

今回のサロンでは,「現状のQMSをどのように見直すのか?」という構想を
明らかにするために,目的,本質,構造の視点からそれぞれ
・2015年版ではいったい何の“目的”ために要求事項の改訂を行ったのか?
・2008年版と“本質”的に何が変化したのか?
・要求事項の“構造”・関係は,一体どうなっているのか?
これらを前段の考え方に置き議論を進めました。

QMS運用で指摘されてきた課題例として山本氏から下記が挙げられました。
・QMS活動の形骸化
・パフォーマンスが向上しない
・過度な文書化の弊害→思考停止現象
・経営層の無関心(ISOやっている暇あれば仕事しろ)
・文書化できないインタンジブルズを含む分野への適切な対応ができない
 (文書化できるものはごく一部,文書化できない部分が実は企業の特質)

そして,参加者からもQMS活動で起きた以下の課題が挙げられました。
・認証最初の1,2年はボロボロだった。顧客要求があるので取得し形骸化した
・パフォーマンスが向上しない,クレームが減らない同じクレームを繰り返す
・ISOというとマニュアル通りにする文化
・文書化されていなことはやらない
・システムを導入し仕事がやりにくくなってしまった
・是正予防処置が弱い(形にこだわる,修正に留まっている)

以上のように様々な課題が挙がりましたが,そもそもQMS導入の目的は何かを
ISO 9001:2015の一般から導くと
「パフォーマンス全体の改善支援」
「持続可能な発展への取り組みのための安定した基盤の提供」であり,
ISO 9001に準じ組織のQMSを実行すると以下のような利点(潜在的な便益)が
あることが述べられていると,山本氏からの説明がありました。
・顧客・法令・規制要求事項を一貫して満たす
・顧客満足向上の機会を促進する
 (機会であり顧客満足向上そのものではない)
・組織の状況と目標に関連するリスクと機会への取り組み
 (2008年版からあったが2015年版でクローズアップされた)
・QMS要求事項への適合の実証

以上,今までの課題となっていた部分を洗い出し,ISO 9001の便益を明らかに
したところで,次に,ISO 9001:2015と7原則との関連概念の説明がありました。
「リレーションシップマネジメントを示しているのがISO 9001である」という
ことで,原則類の構造を考える例が示されました。

7原則の構造を読み解くと,
・リーダーシップが関係性管理のトップにくる,
・その配下に「顧客重視」,「改善」のふたつの視点があり,
これは,経営者(リーダー)として組織を引っ張れ!という要求と読み取れる
との解説を受けて,改めて,ISO 9001:2015はリーダーシップが強調されてた
規格になったことを認識しました。

そして,ISO 9001:2015要求事項の関連図では,
・構造を変えたのは,QMS全体のPDCAを示したいから変更した
 普段皆が使っているPDCAは,製品など個々のPDCAが主である
・ISO 9001が求めている改善は,QMSの改善を差している(QMSをPDCAで回す)
・原則でマネジメントへのシステムアプローチがなくなったのは,
 ISO 9001:2015全体がそういう構造になっている
との説明が分かりやすく,原則と要求事項融合させた規格開発者の意図が汲み
取れる内容になっていることを理解しました。

改訂による主な変化点として以下(概要)の説明を受けました。
・コンテクストは,状況の意味,文脈をいっているので,組織のコンテクスト
 との関係,事業計画で,QMSの計画は毎年変わって当たり前
・リスク及び機会は,箇条にはなっていないが,事業活動には当たり前
・QMSのパフォーマンス評価が独立した,ビジネスサイクルでPDCAを回せるので
 製品の改善はシステムの中の一部と捉える
・QMSにおけるリーダーシップとは,リーダーには説明責任がある,「意図した
 結果の達成を確実にする」 とは方針から目標展開することである
・計画段階で,リスク及び機会への取り組みをQMSに組み込む
・人々が認識する行為がないとQMSは動かない
・改善は起きたことだけで対応するのではなく予測しながら改善することも必要

様々な角度から考察してQMSの将来像について以下のように締めくくりました。
・QMSを改善すること自体が大事それにはトップマネジメントの適切な理解を得る
・QMSの意図した結果を確実に得るために,組織のコンテクスト,リスクと機会を
 踏まえ,戦略的意図を含み,変化できるQMSを目指す
・指摘した課題は結局自らの問題として戻る,身の丈に合ったQMSを構築する

参加者からは多くの感想が述べられ,今回のQMSサロンが会員企業のQMS見直し
に役立つという確信を得ました。
・マニュアルを移行して不足点が見えてきた
・経営に直接資するものが見えてきた
・QMSの改善点が見えてきた
・2015年版を組み込み今後会社が良くなっていくことを期待する
・2008年版との違いを認識した
・2008年版マニュアルをステップアップして2015年版にしたい
・QMSが重荷になっている,なぜ改訂されたのかを理解してQMSを見直しをする
・経営層にアドバイスができる
・理解が進んだ,現場と事務局の温度差を少なくしたい
・事業計画とQMSのリンクをする
・トップの関与,目標設定など現状に合わせてマッピングしてみる
・QMS自体のPDCAサイクルを回す行為が使えるツールだと思う


次回の第18回QMSサロンは,2016年3月に開催予定です。

「QMSサロン」は,自身の勉強目的だけではなく,会員間コミュニケーション,
リレーションを築くにも最適な場です。新たな参加者を大歓迎します。

皆様のご参加をお待ちしております。


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●QKMアクティブラーニング第一弾のご報告
 「ISO 9001:2015年版の“入れ方”」
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11月20日,QKMアクティブラーニング第一弾として,株式会社イノベイション
代表取締役 山上裕司 様をお招きし,「ISO 9001:2015年版の“入れ方”」を
開催しました。

ISO事務局から広くQMSを学びたい人までを対象とした,今回のアクティブラー
ニングには,募集人員の40名のところ,これを大幅に上回る53名もの応募があ
り,皆様の期待の高さを感じました。特に,今回のタイトルにもある“入れ方”
に興味を持たれて参加された方も多数いました。

講義では,ISO 9001規格のこれまでの変遷を辿り,規格が目指したもの,それ
を私達がどう捉えていったかを振り返りました。そこには規格が意図している
“使われ方”の変化があり,手順や手続き的なQMSから目的達成思考のQMSに変
化してきたという大きな流れがあります。

ISO 9001:2015 の“入れ方”を考える手掛かりとして,「意図する結果」「組
織の能力」「コンテクスト(リスク思考)」の 3つの視点で,パン屋を題材に
グループワークによる思考訓練が行われました。

グループワークでは,A3一枚のワークシートを使って,事業方針(意図する結
果)を達成するための「プロセスとその活動」を定義し,それぞれのプロセス
における「意図する結果のための行動と状況」,「必要となる技術,能力資源,
ツール」を具体的に洗い出していく“プロセス描写”を行いました。

この作業を通して,組織内外のコンテクストが事業にどう影響するのかを,よ
り具体的に,より現実的に把握するための手順や視点について理解が得られた
ようです。

再び講義に戻り,QMSの推進の考え方として,「方針,目標」から入る方法と
「事実の把握と分析」から入る方法を対比して説明がありました。

前者を代表する例として,「品質方針」に使われる概念言葉は共感・共有しに
くく,人を動かす原動力になりにくいこと,後者では,モノとしてイメージさ
れた言葉(“モノ化”)によって厚みのある共通認知が得られ,組織として
QMSを推進する原動力になる得るというお話がありました。

アンケートからも,「組織のQMSを変える足掛かりになった」,「事実をもと
にモノ化のして具体的に表現することの重要さを知った」,「プロセス描写に
よるコンテクストを含めたプロセスや活動の整理の仕方が分った」など,多く
の参加者とって大変参考となったというご意見が寄せられています。

総合的に見ると,ISO 9001:2015への対応に対して様々な理解,考え方がもた
らされたようで,QKMアクティブラーニングへの評価はまずまずと判断してお
り,さらなる活性化をさせて確固たる学びの場となることを目指します。

なお,当日の声として,既にISO 9001:2015の対応をしているが,この先どの
ようにQMSを移行するかを決めかねているというご意見も聞かれ, 3月に再び
山上様をお招きし,今回のISO 9001:2015の変更についてのお話をいただくと
ともに,会員の皆様へのアドバイスの機会を設けるよう第三弾の企画を検討
しておりますのでご期待ください。

第三弾の詳細は次回 1月のメルマガでご案内の予定です。

今回の受講者アンケートの結果は,以下の会員専用サイトからご覧いただけま
す。是非,ご一読ください。

 <会員専用サイト(ID,PWが必要です)>
 http://www.ciaj.or.jp/qms_m/pdf/151120.pdf


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●QKMアクティブラーニング第二弾のご案内
  吉川先生による「バランススコアカードの基礎から構築まで」
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前号でお知らせし,既に先週に募集案内をしております「バランススコアカー
ド(BSC)の基礎から構築まで」は,今年度から,装いも新たに“QKMアク
ティブラーニング”として以下の日程で開講いたします。

 講座名:QKMアクティブラーニング
         「バランススコアカードの基礎から構築まで」

 日時 :【1日目】2015年12月21日(月)10:00〜16:00
     【2日目】2015年12月22日(火) 9:00〜18:00
 場所 :情報通信ネットワーク産業協会(JEI浜松町ビル3階)
 講師 :横浜国立大学大学院名誉教授 吉川 武男 様
 募集定員:16名(予定)

今年もケーススタディの時間配分を多くして,BSCの国内第一人者である
吉川名誉教授の直接指導による小人数定員制 2日間コースのセミナーとして,
会員の皆さまにとって役立つ内容を網羅して開催いたます。
年末のご多用な時期での開催ではございますが,日曜日と祝日の間での開催
につき,是非,ご都合をつけていただければと思います。

ISO 9001:2015では,規格要求事項の遵守から,より組織の目標を考慮した
組織を構築することが求められているとともに,より結果を重視してパフォ
ーマンスを高めて顧客のニーズや期待に応えることが求められています。
目的を達成するための強力なツールであるBSCの構築手順を学ぶことは,
そのものを使う目的でなくともビジネスに広く応用できるものと確信いたし
ます。

募集期限は12月8日です。是非,この機会にご参加戴きたく改めてご案内申
し上げます。


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●ISO 9001関連の最新動向 〜 JIS Q 9001:2015公示
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1. JIS Q 9000:2015,JIS Q 9001:2015の公示

会員の皆様には,既にご承知のこととは思いますが,11月20日にJIS Q 9000:
2015,JIS Q 9001:2015が公示され,同時に発行となりました。
会員企業の皆様におかれましては,2015年版への移行・QMSの再設計へと弾み
がかかるものと考えます。

また,日本規格協会では,ISOの支援文書の和訳版が順次Web上に掲載されて
います。

  URL: http://www.jsa.or.jp/stdz/iso/iso9000.html?id=3

 <ISO 9001:2015支援文書(新版・改版)> 2015年11月4日現在
 ・ ISO 9001:2015 変更の概要
 ・ ISO 9001:2008とISO 9001:2015との相関表
 ・ ISO 9001:2015リスクに基づく考え方(PPT)
 ・ ISO 9001:2015におけるリスクに基づく考え方
 ・ ISO 9001:2015実施の手引
 ・ ISO 9001:2015改訂よくある質問集
 ・ ISO 9000ファミリー規格よくある質問集
 ・ ISO 9001:2015変更管理

2. ISO 19011の改訂について

ISO 9000:2015,ISO 9001:2015の改訂にあたり,ANSI(米国)より定期見直しを
待たず19011を改訂する旨の提案があり,TC176/SC3に代わって,新たなPCで
改訂することに対して投票が行われることになり,日本は賛成投票し,結果
は賛成多数で可決されました。今後はSC3の手を離れ,作業が進む見込みです。

3.ISO 9004の改訂について

ISO 9004は定期見直しを行うことになっていますが,当初の見込みに対して,
Design Specification案では,大規模な改訂をするという方向を示す内容で,
日本としては,タイトルや適用範囲は変更すべきでないし,附属書SLに従う
べきであるといった意見を出した上で,改訂の範囲をしっかり決めた上で作
業を行うべきという見解で臨みます。今月行われるTC176の香港総会のなかで
開催されるSC2/WG25で議論される見込です。


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●TL 9000コーナー「TL 9000 セミナー報告」
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今年度2回目の「TL 9000 セミナー」を,11月2日にテクノファ研修センターに
おいて,クエストフォーラム日本ハブ様とQMS委員会 TL 9000WGの共催にて
開催しました。

当日は,QMS委員会会員企業他 9社16名の参加があり,国内の情報通信技術
業界各位に TL 9000を制定しているクエストフォーラムの概要とTL 9000 要求
事項及び測定法等についての解説と,ISO 9001:2015の発行を受けた形で,
要求事項(R6.0)の最新動向を説明しました。
連休の谷間の開催となり少人数の参加でしたが,導入へ向けた具体的な質問を
いただき,よりご理解をいただけたと思います。


 講師:クエストフォーラム公認訓練機関
    (株)テクノファ講師  小林 真一氏,吉崎 久博氏

 セミナー内容
    1. クエストフォーラム日本ハブの紹介
    2. TL 9000追加要求事項
     1) TL 9000要求事項(R5.5)概説
     2) 最新動向(ISO 9001改正に対するTL 9000の対応)
    3. TL 9000測定法
     1) TL 9000測定法(R5.0)概説
     2) 測定法のキーポイント解説
     3) 最新動向(NFVに対するTL 9000の対応)

今回,アンケートの結果から,TL 9000 を導入検討中(初参加)の方からは
「ISO 9001との差分が分かりやすかった」とコメントをいただき,また導入済
み組織からは,R6.0の詳細セミナー開催の要望がありました。

R6.0については,IGQ ワークグループで要求事項ハンドブックのコメント募集
が11月13日まで実施されました。完成時期はコメントの量と内容により明確に
なります。次回開催のセミナー(2016年度上期)では,R6.0のより詳細な説明が
できると思います。


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●知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
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改訂された品質マネジメントシステム−要求事項(QMS)ISO 9001:2015のJIS版
が最近(2015年11月)発行されましたので,これから本格的に移行計画を立て実
行に移す組織も少なくないと思います。

それゆえ,必然的にそこに話題が集中しがちですので今回は知識活用型企業に
戻り,それと関連させながらお話を進めたいと思います。

まず,最近ヨーロッパの学会から論文募集のメールが送られてきました。今回
のテーマはネット上におけるビックデータ,文化および創造性に関連する新た
な知識の基本概念についての論文募集でした。

ご存じのとおりビックデータは,大量のデータ群を組み合わせ分析し,そこに
隠されていた新たな意味を知ろうという試みです。

実際,ビックデータの活用は経済,消費動向,気象変動,防災・減災など,さ
まざまな分野で活用されはじめており,個々のデータ群だけでは分からなかっ
た新たな見方を提供してくれます。

この状況は,ネットをとおし大量のデータが流通し蓄えられているからこそ可
能になったと言えます。同じように企業内でも LANを通じ大量のデータが日々
流通し蓄積されているでしょうから,これを企業経営に活かさない手は無いは
ずです。その企業の新たな側面を知ることができるかもしれません。

次のネット上の文化とはいかなるものかという問いかけは,なかなか難しいテ
ーマです。これまで文化とは民族,国家,地域,リエゾンなど物理的な場を共
有する人々が歴史的背景と共通価値観に基づき形成されてきたと思うのですが,
はたしてネット上のサイバー空間の中でどのような共通価値が形成され,文化
へと醸成するかは今のところ分かりません。

最後のネット上で起こるかもしれない創造性というテーマですが,ネット上の
情報交流が人間の知的創造的活動を支援することは確かでしょう。ネット上で
起きているインタラクティブな情報交流は,それに関心を持つ人々の知識に働
きかけ,何らかのゆらぎを生じさせるとともに知識を結合させる働きがあるの
で,創造性を喚起する可能性はかなり高いと思われます。

そこで,話をQMSの世界に戻しますとISO 9001に準じたQMSが,企業内のデータ
活用,企業文化そして知識の創造性に対し,どのような影響を与えてきたか知
りたくなります。その観点からQMSを眺めて見ると,知識活用型企業のQMSの姿
がおぼろげに見えてくるかもしれません。そこのところを若干ですが考えて見
たいと思います。

まず,知識に関連するものとしては,“組織の状況”(Context of the 
organization)の要求事項があります。

その 4.1 注記3 に,“内部の状況の理解は,組織の価値観,文化,知識及び
パフォーマンスに関する課題を検討することによって容易になり得る。”と示
されています。

例えば,ある企業の社員の方々と接してみると全体として何かしら共通した印
象や文化的体臭があるものです。目に見えないその企業固有の行動様式や思考
パターンがその中にありそうです。同じ企業に属している人達は,その体臭を
直接認識することは難しいと思いますので,それを知るには何らかの鏡を置い
て自らの姿を見つめ直すと都合が良いでしょう。

例えば,ベンチマーキングなど他と比較することが有益ですが簡単にできるも
のでもないので,QMSの要求事項を鏡とし企業内の業務を整理し比較すると,
何かしらしっくりしない部分が出てくるはずです。その部分への対応の仕方は
その企業の体質が現れるものです。

一方で,我が社には我が社のやり方があるという主張を聞くことがあります。
それはそれで立派な主張ですが,自己満足に陥らないためにも面倒がらずに
QMSの要求事項という鏡に写して客観的に自らの姿を見てみることです。

さて次の話題は,“組織の知識”(Organizational knowledge)です。

これはプロセス運用に関する知識,および提供する製品・サービスの適合を達
成するための知識を明確にし,それを維持することを求めているものです。

その 7.1.6 の中に“変化するニーズ及び傾向に取り組む場合,組織は,現在
の知識を考慮し,必要な追加の知識及び要求される更新情報を得る方法又はそ
れらにアクセスする方法を決定しなければならない。”,
また 7.1.6 注記1には“組織の知識は,組織に固有な知識であり,それは一般
的に経験によって得られる。それは,組織の目標を達成するために使用し,共
有する情報である。”と示されています。

この話題は,長年取り上げてきた組織知に関連するものであり,一歩踏み込ん
だ記述になったことは好ましいことだと言えます。

しかし,この要求事項に準じるには,まず我が社の固有の知識に何があるのか
を知ることですが,固有の知識がそう簡単に分かるわけではありません。

その理由として,まず企業規模が大きくなるに従い,取り扱っている商品群も
多彩になり,また分業化とアウトソーシングが拡大しますので,我が社の固有
の知識はこれだと主張することが難しくなってくるからです。ある程度漠然と
した認識になるかと思います。

一方,今回の改訂内容を読んでみると情報と知識が,どうもうまく識別されて
いないような感じを受けます。

本来,“知識”とはそのことが事実であり正いと信じられた情報であり,人々
や組織が正しいとして受け入れた事柄だと思っています。それゆえ,固有の知
識は単なる情報ではなく皆が理解し納得した事柄だと言えます。

一方,“情報”はそれ自体が正いかどうかを問うものではなく,記号化された
データの集まりとして存在するものですから,それにアクセスしたから知識に
なるというものではありません。知識と情報はだいぶ次元が異なるものです。

それゆえ,知識を得るには企業内外にある大量の情報から正しいと信じられる
情報を選択し,理解したうえで知識にすることが重要です。

まず情報を知識化するには,情報を解釈し理解できる能力,すなわち“リテラ
シー”を持つ必要があります。リテラシーの多くは経験に基づき獲得されるの
ですが,それ以外にもレポートや書籍類などの情報からも得ることができます。

それゆえ,組織の意図した結果を導けるだけの適切なリテラシーの獲得が組織
の知識形成の前提条件となります。

リテラシーがない状況でノイズが入った大量の情報をインプットすると,処理
できないだけでなく,混乱や誤りを導くリスクがありますから組織能力に応じ
本来は情報のフィルタリングが前段階にほしいものです。

同時に,獲得されている業務リテラシーの範囲と程度は,その組織のリスクと
機会の認識と密接に関連するものなので,今後研究すべきテーマと思います。

さて,今回の改訂では残念ながら学習という観点ではあまり具体的に触れられ
ておりませんでした。しかし,これまでも改善やPDCAサイクルの中で学習サイ
クルの一部は自然に組み込まれていますから,改善につながる情報を組織的に
学習し適切な業務リテラシーを形成することが継続的成功につながるとも言え
ます。

ここまでの話は,知識は企業にとって有益であり良いものだという前提で話を
進めました。しかし,昨今の有名企業の不祥事を見ますと必ずしもそうとも言
えなかもしれないと感じるときがあります。

例えば,最近話題のビルの杭打ちデータの記録改ざん事件ですが,業界ぐるみ
ではないかと問いただされています。その言い訳に他の試験もしているので問
題ないはずであるとか,日程的に厳しいとか,元請けの管理ができていないと
か,さまざまな不祥事の背景が報じられています。

これらの言いわけは,その業界が経験的に学び共有してきた知識レベルを示す
ものであります。しかし,規制・法的要求事項を逸脱する理由には全くなりま
せんから,現有している組織的な知識が正しいものであるかを常に問いかけて
いかなければならないことを教えてくれます。

また他の例として,欧州優良自動車企業の排ガス規制への不正ソフトの組み込
みや,国内名門企業の不正会計処理の問題が浮かびます。

これらはトップリーダーたちが直接的または間接的に関与した不祥事で,正し
くない知識を基にリーダーシップを発揮した点が特徴であります。その結果,
企業内システムはそれに対し完全に機能停止してしまうことを如実に示してく
れました。

この二つの事例は,素人目にもおかしいと思える程度の不正レベルですから,
本来社内システムが排除すべき事柄でした。しかし,トップが関与するとシス
テムはその点に関し全く機能しなくなってしまいました。その企業の人々にと
っては,残念でたまったものではないでしょう。

同様に,QMSの有効性は経営層の影響が大変強いものだとこれまでもお話して
きましたが,今回の改訂ではQMSの有効性についてトップの説明責任が追加さ
れておりますので,事務局にお任せというわけにはいかなくなってきます。

事務局の方々もQMSに関する正しい知識と情報をトップに適切に提供すること
を常としなければなりません。

さて,堅い話になり気が重くなりましたので少し気楽な話題に切り替えます。

日本政府観光局(JNTO)の情報によれば,2004年の訪日した外客数は約613万人
で,内69%がアジアからの外客だったそうです。その後増加傾向でしたが
2011年の東日本大震災の影響で一旦622万人に減少しました。

2014年のデータを見ると1341万人の外客があり,内81%がアジアとなっており
ます。このデータを見る限り10年間で2倍以上に外客数が増加しております。

しかも今年はすでに1600万人を超えたと報じられており,かなりの勢いで外客
が増加しているようです。

実際,例えば浅草に行くと仲見世通りは日本人よりもはるかに外国人が多く,
まるで海外に行っているようですし,浅草近辺の宿泊施設は外国人の予約がい
っぱいで容易に取れないという話も聞きます。また四国の金刀比羅宮に最近参
拝したのですが,都会だけでなく地方でも同じ傾向にあることをデータだけで
なく実感することができました。

この日本ブームとも思える背景に,どのような要素があるのか考えて見たくな
ります。まず,一般的に思いつくのが,アジア諸国の中間所得層の増加,円安
傾向,和食・アニメブーム,世界遺産登録,オリンピック招致など,さまざま
な背景要素が複合的に作用しているように見えます。

しかし,もう一歩踏み込んでみて見れば日本政府のビザの発給条件が緩和され
たことであり,観光立国を目指す政府機関の対応が大きな影響を及ぼしている
とも言えます。

さらにもう一歩踏み込んで考えて見ると,一見関係ないように見えますが個人
的には東日本大震災とそれに引き起こされた原発事故への日本人の対応だった
のではないかと考えています。

このような大きな災害が起きた場合,海外では治安が悪くなり暴動や略奪など
が起きるのが常ですが,驚くべきことに日本の場合,被災した方々自身が相互
に助け合い冷静に対応し,またコンビニ,輸送関係企業,ボランティアなど行
政ではないところからも自発的な援助が迅速に行われたことは,海外の皆さん
から見れば驚きではないでしょうか。大きな衝撃を静かに与えたかと思えます。

それまでの日本のイメージは,エコノミックアニマルとか働き蜂とか揶揄され,
がむしゃらに働く日本人像が定着しており,また高度に工業化された社会をイ
メージさせていたかもしれません。

しかし,大災害という異常事態に至ってみると自己犠牲や相互助け合いがなど,
実に人間的で感動的な出来事が自然発生的に行われましたから,驚きだったの
ではないでしょうか。異常事態であるがゆえにその社会の本質がにじみだすも
ので,表面的な日本とその本質の関係が実にミステリアスです。

最近,クール・ジャパンの話が関心をよんでいますが,むしろ日本はミステリ
アスな魅力的社会であり,近代的で合理的な社会でありながら,その内面に古
風的な精神構造を兼ね備えた社会と見えたのではないでしょうか。

日本は歴史的に見ても義理人情,粋などある種の不合理性を楽しむところがあ
り,それが合理性の中に調和しつつ成熟してきた社会ですから,その様な基盤
がない外国人から見れば不思議な感覚になるのかもしれません。

それゆえ,買い物も兼ねて日本に行ってみたいという気持ちは分かるような気
がします。日本ブームのコンテキストには,外国人の関心事が経済的側面から
文化的側面へとシフトしたという背景も考えてみなければならないのではない
でしょうか。

ここで述べたかったことは,同じ現象をどの視点で考えるかがコンテキストの
理解,知識の獲得に関連する事であり,多様な側面から考える必要性の例とし
て示したわけです。

さて,この例を見るようにQMSのコンテキストを考えるとき,意図した結果を
得るための効率性,生産性,安定性などの合理的な観点だけで行うのではなく,
そこに働く従業員と多様な利害関係者との関係性について必ずしも合理的でな
い関係性も考えていかなければならないでしょう。その点に関しQMSの関係性
管理の原則がありますので,ご検討いただきたいものです。

さて,話がながくなりましたのでこれで今回のお話を閉じたいと思いますが,
最後に石川啄木の
「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買ひきて 妻としたしむ」という
有名な短歌をご紹介します。

この歌はいろいろなことを暗示していますが,個人的に感心を持ったのは“見
ゆる日よ”という表現です。仮にこれを,“思える”とか“考える”という言
葉で置き換えた場合,敗北感や劣等感など主観的主張と感情が入り込むため現
実逃避のような感じを受けてしまいます。

しかし,“見ゆる”という言葉は客観的であり全く違う感情を呼び起こします。
その本心は自分ではそうは思っていないけれども時々は気落ちするときもある
よね,たまには気分転換もしないといけないね,とかなり達観した感覚で歌を
読んでいると感じます。

なにか心の余裕すらあり,歌人の芯の強さを感じてしまいました。さて,皆さ
んはこの短歌からどのようなコンテキストを思い浮かべ,リテラシーで何を受
け取るのでしょうか。


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●コラム「予測法」
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将来予測は過去の歴史, 経験を踏まえて類推することが常道です。
そこで, 137億年前の宇宙誕生から現在までの歴史を振り返ると,過去を全て
網羅できます。人類はどこへ行くのか,文明はどこまで進歩するのか壮大な未
来予想を行うには,これらの過去情報全てが役立つものと思います。(1)

一方,身近な将来予測の対象として,企業人にとっては自社の経営があります。
経営の将来予測に使われている道具の一つがバランススコアカードです。本メ
ルマガでも来月のセミナーの案内が紹介されています。丁度,飛行機のコック
ピットの様に計器を並べ航行状態,即ち経営状態を把握します。
財務・顧客・業務プロセス・学習の4つの視点を計器に相当させて観測します。
視点を増やすことも可能で,どの視点で何を計測するかを定めて計測を行い,
その結果を経営の判断指標として活用する手法です。(2)

さらに,将来予測の対象を企業の経営要素の一つである品質マネジメントシス
テムに絞り込むと,今月発行された ISO 9001:2015が活用できると思います。
企業組織の内部及び外部の状況を明確にすることから始め,将来のリスクと機
会について考慮していくというオーソドックスな手順が示されています。そし
て,組織が必要とする知識は経験から得られ,将来目標達成のために使用し共
有する情報と明確に示しています。
 ISO 9001:2015は,企業の将来予測を行うという観点からも大いに役立つので
はないかと期待しています。(3)

参考図書:
(1)「137億年の物語」クリストファー・ロイド 著
(2)「バランス・スコアカード入門」吉川 武男 著
(3)「品質マネジメントシステム−要求事項」
  JIS Q 9001:2015 (ISO 9001:2015)(JSA) 日本工業標準調査会 審議
  http://www.jisc.go.jp/app/pager?id=200122 から閲覧可能。


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●編集後記
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戦後70年の2015年は映画ファンにとっても記憶に残る年でした。

1980年代に世界中でヒットした映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の
PART2の中で,主人公が過去から未来にタイムトラベルするという話があり,
30年後の未来として2015年の世界が描かれていました。

当時の技術から30年後を予測し,実現していて欲しいものが映画の中で描かれ
ていたのではないでしょうか。

多数のマスメディアによって,実現できたかどうかの検証が行われましたが,
その多くが実現できていたり,実現に向かっているように感じました。

ISOのMS規格でも,未来を予測する考え方が取り入れられました。意図する結
果に向かって,みなさん自身がありたい姿を描くことで,近い将来に実現でき
るのではないでしょうか。

第70号を迎えたQMS委員会メルマガは,5年後の2020年の東京オリンピック
の年に第100号を迎えます。この第100号を次のマイルストーンとして,会員企
業の皆様にQMS委員会ならではの情報発信をしてまいります。

今後ともよろしくお願いいたします。

最後までお読みいただき,ありがとうございました。


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