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   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

     「新体制発足しました!」


                      2014年 7月31日発行 第62号

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≪ 第62号 目次 ≫

 ・はじめに
 ・2014年度QMS委員会体制のご紹介
 ・総会特別講演報告
 ・QMSサロン報告
   「QMS内のリスクを減らすクリティカルシンキングの応用」
 ・ISO 9001関連の最新動向
 ・TL 9000コーナー「TL 9000説明会報告」
 ・知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
 ・編集後記

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●はじめに
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2014年度 QMS委員会委員長の岩崎 信広です。
どうぞよろしくお願いいたします。

夏本番となりましたが,関東甲信地方の向こう1か月予報では,気温が高い確
率が50%で,今年の夏も暑い様です。十分な熱中症対策をして夏を乗り切り
ましょう。

さて,QMS委員会では,6月に開催した総会で皆様から2014年度の体制と事
業計画をご承認戴きまして活動を開始いたしました。

今年度も,研究分科会,普及分科会,TL9000WGを軸に活動を展開してまいりま
すが,ISO 9001改正を来年に控えており,その動向についての総会特別講演で
は,以下のメルマガにあります通り,多数の会員の皆様のご参加を戴きました
ので,今年度 力を入れていきたいと思います。

引き続き 各分科会,WGの活動に会員の皆様のご参加とご協力をお願いいた
します。


それでは,メルマガ62号をお届けいたします。


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● 2014年度QMS委員会体制のご紹介
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6月18日のQMS委員会総会でご承認戴きました新体制をご紹介致します。

委員長  三菱電機    岩崎 信広

副委員長 沖電気工業   米山 正彦

会計監事 富士通     橋本 辰憲

運営委員 日立製作所   長谷川孝弘(新任)
  〃  日本電気    野村 肇 (新任)
  〃  アンリツ    鈴木 和幸
  〃  サンコーシヤ  音居 文雄
  〃  沖電気工業   青柳 礼子(研究分科会主査)
  〃  日立製作所   相澤 滋 (研究分科会副主査/TC176委員)
  〃  日本電気    飯田 政良(TL 9000WG チェア)
  〃  富士通     馬渡 登 (TL 9000WG バイスチェア)
  〃  日立製作所   浅田 耕史(普及分科会主査, 新任)
  〃  日本電気    斉藤 仁 (普及分科会副主査)

特別委員 (元)ソニー   山本 正


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●総会特別講演報告
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「ISO 9001次期改定動向説明」

講師:筑波大学大学院 教授 山田 秀 様
日時:2014年6月18日 15:00-17:00
場所:CIAJ 会議室 
出席者:QMS委員会会員75名

1.要旨
 ISO 9001改定の経緯・概要について解説。

2.スケジュール
 2012年6月から改定作業が始まった。
 (1)新作業項目提案 NWIP
 (2)作業原案    WD
  (3)委員会原案   CD
   (4)国際規格原案  DIS    →2014年5月原案2ケ月の翻訳期間後投票
   (5)最終国際規格案 FDIS
   (6)国際規格の発行   

 現時点2014年6月時点では計画通り。2015年9月ISO 発行の予定。
 TS 9002(ISO 9001:2015適用の手引き)をDIS投票の期間を利用して開発する。

2.附属書SLの適用
 ISOの上層部が2006年から2011にかけて,
  種々のマネジメントシステムの整合性を検討し,
 共通的な部分を共通的な枠組みとした。
  箇条タイトル(上位構造),共通用語と定義,共通テキスト

 ISO 9001も2015年版で適用し,今回の改定の目玉。

3.今回の改定の特徴

  ・ISO 9001の適用範囲は変わらない。

 ・要求が強化されている。  
  例えば,箇条4 4.1組織及びその状況の理解
          事業があってQMSがあるということが明示的になった。
          事業と独立したQMSを持つ組織にとっては,大変かもし
          れない。要求事項の水準が上がった部分。

      リスク あらかじめ起こり得るリスクを列挙しておくことが明
          示的になった。従来の8.5.3未然防止につながる。
       
 ・弱まった点 文書化 従来は「品質マニュアルで・・。」とあったが
            ○○○の関連する文書を作ること。となった。
            今回は20数か所。2008年版は21箇所+6箇所となって
            いる。

4.DISのポイント抜粋

 序文 0.5リスクに基づく思考
           ある意味予防措置。予めリストアップし,アクションをとれとい
           うこと。
      リスクマネジメントの分類までは行わないが考えておこうという
           こと。

 1.適用範囲 
 2.引用規格
   規格の適用範囲は,ISO 9001:2008と同じ
      ISO 9001:2008ではISO 9000を引用。DIS 9001ではすべて本体に入れ
      ている。

 3.用語
   ISO 9000を全て引用。
   リスクに関するものが出てきた。
   多くの人が用いるリスクの定義は「起こるかも知れないいやな(負の)
      影響」
   SLは,「起こるかも知れないこと」と食い違いがあり多くの場で混乱
      している。そこで3.09リスクに注記5 負の側面のみで用いられる場合
      があることを追記。

 4.組織の状況
   組織の状況をしっかりと理解すること。要求事項の水準が上がった部
      分。

 5.リーダーシップ
   事業プロセスへの統合を要求
   ISO と事業の二重構造はダメ。事業が主体。
   5.2 品質方針
   適切とは何かを要求として書かれている。社長はこれをベースに
   品質方針を決めなければいけない。

 6.品質マネジメントに関する計画
   リスク及び機会への取り組み
   予防措置まで入るのか?この記述で確実に実行できるかは疑問が残る。
     
  7.支援
    人に関しては明確になっていない。これからコメントを出していく。
   Knowledgeがはっきりしない。今後明確化。

  8.運用
   8.3 設計という言葉がCDで一旦止めたが復活した。
   8.3.4 レビュー→検証→妥当性確認 復活した。
   8.4 「購買」という言葉を,要員,サービスに対応しても適用可能な
       ように「外部から提供される」とした。

 9.パフォーマンス評価
   9.1 マネジメントレビュー時のインプットは品質パフォーマンスと
     明示的になった。

 10.改善


4.品質マネジメントの原則
  原則は8点から7点になったが変わっていない。
  水準は変わったが行こうとしている方向は変わらない。
 
  人々の参画:Involvement→人々の積極的な参画:Engagement

    継続的改善→改善     改革も含むため改善とした。
     
5.日本の立場
 ISO TC176/SC2/WG24が対応
 エキスパート50名強
 日本代表エキスパートは,山田氏,須田氏
 国内委員会は,委員長が中条氏,副委員長が棟近氏,山田氏 

 山田先生コメント 
  CDの段階ではとても予定通りいかないだろうと予想したが
  DISでは常識ある線に落ち着いてきている。
  Goods and ServicesはProducts and Servicesに落ち着いた。
  これでも「フルーツとアップル」の形で横並びは釈然としないが
  Goodsよりは改善された。

  日本で決まっていること
  移行期間は3年ということのみ現在決まっているとJABからのコメント。

  
6.質疑
 Q. リスクについてどこまで示すか
 A.  製品に関するリスクでFMEAなどやっていれば示せば良い。
    問題はQMSに関するリスク。FMEAまで行かないのではないか。

 Q.  改定で削減されたものは何か?
  A.  文書化が少し減った。校正の記録は残ってはいるが今まで程文書化は
   要求されていない。

 Q. 3.09 Expected Result 6.1.1 intended Result で用語が食い違うが?
 A. そこまで議論できていない。WG24はノータッチ。
  最初はInteded OutcomeがInteded Resultになったと推定する。
  多分今後コメントが寄せられる。

 Q.TC176でセクタ規格でのSLの適用について議論されたか
 A.TC176では議論していない。個人的に得た情報によれば
  自動車は反対→SLの様に一般化していくと保証できない。米国自動車業界。
  航空宇宙も同様な声。

 Q.日本は9つの技術的問題を指摘したと伺ったがその後は?
 A.○△×で分類していたが×の問題は2件,

  1.ヒューマンエラープリベンション
   横断的に分析し,時系列で横串に見ていくことを入れるべきとしたが
   採用されていない。

  2.Goods & Services 
    Productsを含む3案を提案し第3候補のProducts & Servicesが採用された。

 Q.リスクについては,8章で製品リスクについてで,6章がQMSのリスク
    についてか?
 A.リスクはQMSと製品の両方に要求されている。
  不具合のリスクが製品に対しても要求されるなら6章も製品のリスクを扱
    っているといえる。

 Q. 8.5.5に「意図したライフタイム」の言葉があるが寿命以外に意味すると
     ころがあるのか?
  A. 意図がよくわからなかったのでカタカナ語(は嫌いだが)そのまま残し
     ている。  

本講演のアンケート結果は以下のURLからご参照ください。
http://www.ciaj.or.jp/qms_m/pdf/140618.pdf
(会員専用パスワードが必要です。)


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●QMSサロン報告
 「QMS内のリスクを減らすクリティカルシンキングの応用」
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第13回「QMSサロン」を7月18日(金)に開催いたしました。

QMS委員会の山本フェロー(MBA, Ph.D)をファシリテーターに迎え,
「QMS内のリスクを減らすクリティカルシンキングの応用」をテーマに意見
交換が行われました。

“クリティカルシンキング”とは,相手を“批判”するための思考ではなく,
相手をより良く理解するための思考スキルであることを学びました。

クリティカルシンキングに必要な技術は以下があります。

 (1)情報をふるい分ける技術
 (2)情報をうのみにせず,良く吟味する技術
 (3)筋道を考える技術

リスクを考える前に,まず“思考の中にリスクがある”ということを認識する
必要があるということです。

例えば,設計のレビューなどで,前の機種が問題ないから今回も大丈夫という
理論は成り立たないことや,「○○先生によれば」という事実と無関係な権威
による誤りなどもあり,リスクは思考の中にあるということを納得しました。

実際のクリティカルシンキングの方法は,

 第1ステップ;主張を明確にする
        相手の主張が何かを探す。

 第2ステップ;前提の理解をする
        その主張を導いた理由を探し考える。

 第3ステップ;推論をする
        主張と前提を結びつける文脈をいろいろと考えてみる。

という流れで考えることを教わりました。

QMSが形骸化しているなどという意見があるが,
クリティカルシンキングの方法を使って,なぜ,QMSが役に立たないと思うのか?
について,主張と前提を整理し,参加者でデータを元に考えました。

主張には,「事実主張」と「価値主張」という,二つの主張があり,
QMSが役に立たないと思う価値主張について考える際,

「我々は,知らない間に自分の価値観で主張している。」という投げかけが,
ファシリテーターからありました。

 ・役に立つ,立たない
 ・質が良い,悪い
 ・程度が良い,悪い
 ・行儀が良い,悪い
 ・価値がある,無い
 ・べきである
 ・した方が良い
 ・かもしれない
 ・してはならない

これらは,いずれも価値主張であり,事実主張と価値主張を分けて考えると
いう新しい考え方を教わりました。

QMSの認証でいうと,

事実主張;
 当社のQMSは,ISO 9001の認証を取得している。
価値主張;
 質の良い製品を常に提供するために,ISO 9001の認証を取得すべきである。

このような例である。

個人個人が持っている価値が違うので,主張にギャップが生まれるということ,
自分の考えが基準だと思ってしまっているが,実際言っていることは価値主張
がほとんどであるということ。
QMSなどシステム化にするには,事実主張で考えることを理解しました。

さまざまな価値主張は,

 1)何らかの価値基準に照らし評価を下している。
   例えば,経験,地位,役職,学歴,所属企業,満足水準
 2)価値基準は,物事の善し悪しを測るものさしとして使われる。
 3)一般的に言われる「価値観」と「価値基準」は,ほぼ同じ意味になる。

価値基準は,定めた人でずれる。
ずれを整合しないとリスクにつながる。
それぞれの価値基準の妥当点(妥協点)をどうやって見つけるか。
意識あわせをする。出来る限りの事実主張を集める。前提にあるものと主張を
結びつける。

クリティカルシンキングには,科学的事実を身につける必要がある。
これは,分けると言う技術。データに隠れているものを見つけるということ。

前提が漠然としていると,結論がでない。主張の段階で情報を整理する。
何を疑うかが分かると言うことは,何をはっきりさせたいかが分かるということ。

これをQMSが役立たないという主張で考えてみると,
「QMSが役にたたない」というのは,「何に役に立たないのか」はっきりさせる
のが大事だと分かり,とても有意義な討論をすることが出来ました。

そして,今回のサロンで以下のような受講の感想がありました。

・価値主張,事実主張は役に立つ。
 集団的自衛権,原発再開は明らかに価値主張でありニュースの見方が変わる。

・統計で嘘をつく方法があるが,自分の意見を通そうと思ったら,価値主張を
 うまく事実主張にすりかえるということもあるだろう。
 シナリオ形成能力が必要である。

・経営では,価値主張,暗黙の前提が多い。仕組みが全部が文書化されている
 訳ではない。暗黙の前提がどれだけ幅を利かせるか。

・疑うことをしっかりやらないといけない。
 それがリスクを回避するということ。除去できる目を持たないといけない。
 そうでないと業務を進める中でリスクが作りこまれてしまう。


次回,第14回は,2014年11月に開催予定です。

「QMSサロン」は,会員間コミュニケーションを取ったり,リレーションを
築くにも最適な場です。新たな参加者を大歓迎します。

皆様のご参加をお待ちしております。


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●ISO 9001関連の最新動向  
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ISO 9001関連では.ISO/DIS 9001が発行されてからあちらこちらで改正説明会
等が行われるようになったが,国内委員会内では,日本規格協会主催の改正説
明会開催以外には外部への発信はありません。

その他の情報として,以下の規格の投票への検討が行われています。(受付順)

 ◆顧客満足に関するISO 10001,10002,10003,10004の4規格
   ISO 10001(品質マネジメント−顧客満足−組織における行動規範のため
        の指針)
   ISO 10002(品質マネジメント−顧客満足−組織の外部における紛争解決
        のための指針) 
   ISO 10003(品質マネジメント−顧客満足−組織の外部における紛争解決
        のための指針)
   ISO 10004(品質マネジメント−顧客満足−企業・消費者間電子商取引の
        指針)
  ・ISO 10001〜4の4規格を統合についての検討
  ・ISO 9001:2015との整合化を行う際の各規格の改正の程度

 ◆ISO/TR 10013(QMS文書類の指針)
  ・ISO 9001:2015との整合化を行うにあたり,IS/TR/TS/それ以外のどの
   タイプの規格とするのが望ましいか

 ◆ISO 10014(財務的及び経済的便益を実現するための指針)
  ・定期見直し

 ◆ISO 10015(教育訓練の指針)及びISO 10018(人々の参画及び力量)
  ・ISO 10015とISO 10018の統合についての検討
  ・ISO 9001:2015との整合化を行う際の各規格の改正の程度


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●TL 9000コーナー 「TL 9000説明会報告」
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昨年7月からクエストフォーラム日本ハブ様と共催を開始しました「TL 9000説
明会」を,今年も7月1日に開催いたしました。
 
 当日は,QMS会員企業他17社35名の参加があり,国内の情報通信技術業界
 各位にTL 9000要求事項と測定法について情報提供を行い,また,活発な
 質問によりご理解を頂けたのではと思います。

 講師:クエストフォーラム認定研修機関
    (株)テクノファ TL 9000 審査員研修講師
    内田 勲 氏

 演題:TL 9000 説明会  〜測定法の計算例紹介を含む〜
    1)TL 9000 の概要
    2)TL 9000 要求事項 (R5.5)
    3)TL 9000 測定法   (R5.0)

今回の参加者から,継続して情報提供の要望もあり,TL 9000WGとして
「TL 9000説明会」を継続開催予定です。(次回は2014年下期)


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●知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
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前回は,“あきらめたこと”をコストとみる「機会費用」についてご紹介しま
した。“あの時,もう少し勉強していたら,・・・”など,人生のやり損ねた
「機会費用」を考えだしたらキリがありません。今でもできることならば,将
来の機会費用を発生させないためにも,早速取りかかるのが良いでしょう。

さて,今回は相手の話を理解するために必要な“クリティカル・シンキング”
という考え方について簡単にご紹介します。
クリティカルを“批判”と訳し,相手を批判するための思考方法と見ると,何
となくいやな感じがしますが,その中身は相手をより深く理解する手法と見た
方がよいでしょう。

さて例えば,レストランで食事をしたとしましょう。そして値段は5千円した
けれど“今日の料理は,おいしかった!”と思ったとしましょう。まず,この
話の中に二つの主張があります。一つ目は5千円の費用が発生したという事実
で,これを「事実主張」といいます。もう一つは“おいしかった”という主張
です。この主張を「価値主張」といいます。

事実主張は,正いかどうかというよりも起きた事実なので議論はないでしょう
が,その価格が高いのか安いのかを考えるとなると“おいしかった”という価
値主張が重要な意味を持ちます。

この例のように,企業内でも家庭でも事実主張と価値主張が入り混じって話さ
れています。価値主張は本質的に個人的な見識であり信念でもあり,個々の価
値主張自体を批判し,正いかどうかを議論することはあまり意味がなく,不毛
な議論になりやすいものです。

このように,私たちは何気に事実を語っているつもりで話しますが,その会話
の中に事実主張とともに価値主張が組み込まれていますから注意が必要です。
話を聴く際に価値主張の部分を意識して理解する努力しないと,議論の本質を
理解できないことがあります。重要な議題であれば,なおさらのこと注意を払
って聴く必要があります。

価値主張でよく行われる手法として,「権威からの議論」というものがありま
す。“○○大学の著名なB先生が,次のように述べております”とか,“C事
業部長が,このように話している”など,権威を使い主張の正当性を示す場合
です。

これが議論の中に出てきたら注意が必要です。なぜなら,主張が正いかどうか
はそれだけでは全く分からないからです。論文などは何かを主張する際には,
その主張を補完する他の主張だけでなく,それを否定する主張も同時に示し比
較検討し論じなければなりませんが,日常では,そのようなことはめったにな
いでしょう。しかし,「権威による議論」というものがあり,あたかもそれが
正当であるかのごとく勘違いしやすいものですから,その様なことがあると頭
の片隅に置くだけで有益かと思います。

さて,話をクリティカル・シンキングに戻しますが,その中には「主張」
(結論),「前提」(主張を導いた理由),「推論」(前提と主張を結びつけ
るシナリオ)の三つの要素があります。この辺は先のQMS サロンではご紹介し
たのですが,紙面の関係で割愛します。

実社会の会話の中で,「主張」,「前提」,「推論」を識別して話すことはあ
まりなく,時間的にも許されないでしょう。一方で,“主張に理由がないから
間違いである”と判断する誤りも少なくありません。例えば,イノベーション
は,その発端は理由のない主張から出てくるものです。理由のない主張も,大
事にしたいものです。

まず話を聴く場合,“〜すべきである”,“した方がよい”,“悪い”といっ
た「価値主張」を聴いたら,いくつかの判断を下さなければなりません。例え
ば,“〜すべきである”事を“行わなかった時に起きる問題”,次に,それを
“行った時に生じる問題”の両極端の事を考えて,どちらをとっても結論が大
差ないのであれば,その主張はどちらを採用してもかまわないでしょう。

一方,その主張を行わない時と,行った時の,結論が大幅に違う場合は,マネ
ジメントとして何らかの判断を出さなければなりません。このような議論をど
ちらの主張が正いのか判断しようとすると,双方とも価値主張なので折り合い
がつきません。どちらかの主張を選択しようとすると,不毛な議論を呼ぶもの
です。

そこで実際には,その主張の中間にある最悪のシナリオを見つけ出すことが肝
心です。それを見つけ出せれば,それに対し議論を進め対応策を考えることが
現実的です。これは,リスクマネジメントに通じるものです。

さて,紙面の関係もあるので,この辺で話を閉じますが,宗教はもちろん価値
主張ですし,憲法・法律は国家としての価値主張です。また,標準,基準,手
順類などは企業としての価値主張です。

QMS も,もちろんその企業の価値主張の一つです。QMS が役立つかどうかの議
論は現場の価値主張と企業としての価値主張とのズレから出てくるものでしょ
うから,価値主張のどちらが正しいのかを議論すること自体が不毛です。

上述したように,もしQMS がなかったら企業として,そして現場としてどのよ
うなことが起きるのかを考えてみてください。その上で最悪のシナリオを描い
てみてください。大差がないと判断できたなら,QMS は,その企業ではあまり
意味がないといえるでしょう。一方,ビジネス,顧客満足,品質など企業とし
てQMS をとおし価値主張するならば,最悪シナリオを描いて,それに対してク
リティカル・シンキングを行うことは有益で,適切な着地点を見つけることが
できるでしょう。


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●編集後記
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今回のメルマガはいかがでしたか?

特に「クリティカルシンキング」は二つのコーナーで取り上げられましたので
関心を持たれたかと思います。

要約すれば,情報を「鵜呑み(うのみ)」にせず,その真偽を吟味し,正しく
理解し正しく判断するための技術ということができます。

さて.「鵜呑み」と言えば,多くの和歌に詠まれた「鵜飼(うかい)」を連想
します。古事記の神武天皇記にも鵜飼が登場し,1300年以上もの歴史を持
つ日本古来の伝統漁法です。

岐阜県長良川の鵜飼が有名ですが,京都の夏の風物詩である嵐山の納涼鵜飼は
1950年から毎年続き,今年も7月1日から始まりました。

嵐山は昨年9月の台風18号による豪雨で乗船場冠水など大きな被害を受け,
報道でも大きく取り上げられました。鵜匠の高齢化と後継者不足の中,今年も
納涼鵜飼を開催した地元の業者や観光協会の復興努力とその思いには頭が下が
ります。

実は過去50年間の累積で見ると台風の接近回数,上陸回数ともに8月が最多
の月になります。

台風だけでなく,最近ではゲリラ豪雨が突発的な被害をもたらすことも多くな
りました。気象庁は7月25日,降水域の分布を従来の16倍の解像度で解析
・予測する「高解像度降水ナウキャスト」を8月7日から提供すると発表しま
した。

8月に夏休みを迎える方も多いと思います。お出掛け前の晴天を「鵜呑み」に
せず,降雨情報のスマホアプリ,携帯情報サービス,SNSなどを活用して天
候の急変に備え,快適な夏休みをお過ごしください。


最後までお読み戴き,ありがとうございました。


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──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」──

* 配信追加は下記にお知らせください。
 mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp
* 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
    QMS委員会メルマガ編集部
 http://www.ciaj.or.jp/top.html
 http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ)
* 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(菅野 清裕)
* 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!
 qmsmelg@ciaj.or.jp
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