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━ CIAJ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

    「実りの秋,QMS委員会のイベントにご参加ください!」


                      2012年 9月28日発行 第51号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━
≪ 第51号 目次 ≫

 ・はじめに
 ・「QMSサロン」報告と予告
 ・10年目を迎える吉川先生によるBSC構築セミナーのご案内
 ・異業種見学会の予告「住友スリーエム CTC」(わくわく現場に学ぶ)
 ・ISO 9000の改訂動向「ISO規格類の妥当性確認情報と今後の動きについて」
 ・TL 9000コーナー「ベストプラクティス会議など」
 ・知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
 ・編集後記

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●はじめに
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 ようやく涼しくなり,仕事にも,趣味にも,読書などにも,よい季節となっ
てきました。10月には,CIAJが主催者の一つとなっているCEATEC JAPAN 2012
が開催されますので,出かけてみてはいかがでしょうか。

 さて,我々を取り巻く環境は,世界経済の不安,震災からの復興など大きな
変革期にあると考えます。一方,品質面では,大震災の影響もあるかもしれま
せんが,日本の絶対的な信頼が薄らいでいるようにも思えます。
QMS のブラッシュアップを通じて,日本の強みである現場力を維持,改善し,
日本品質を世界にアピールしたいものです。

 QMS委員会では,この秋,BSC構築セミナー,異業種見学会,
QMSサロンなど各種の行事を企画しています。

 皆様のご参加をお待ちしております。

それでは,メルマガ51号をお届けいたします。


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●「QMSサロン」報告と予告
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第6回「QMSサロン」を8月22日(水)に開催いたしました。
QMS委員会の山本フェロー(MBA, Ph.D)をファシリテーターに迎え,
「力量と組織的学習」をテーマに意見交換が行われました。

山本氏から,「ISO 9001には情報という定義はあるが,知識という定義はない。
QMSには多くの知識循環がある。ゆえにISO 9001は,ある種の知識マネジメント
ではないだろうか。」という投げ掛けがありました。

ISO 9001は,87年版からスタートしましたが,工業製品傾注のシステムで,
当初は良かったのかも知れませんが,昨今では,プロジェクトの運営などでは,
メンバーの力量により成功失敗が大きく左右されてしまうため,人の知識が
必要で,ISO 9001だけでは足りないというのが良く分かりました。

セミナの核心は,知識活用型企業では,プロセスだけを追っても良くならない。
しかし,業務の7割は定型業務でありここを効率化し,不定型業務(ナレッジ)
にうまく時間を振り分ける工夫がいる。
QMSでも知識を扱うときは個人に依存する。知的労働は,個人知が軸であり
それに依存している。全体としてパフォーマンスをあげるには,まず個人の
生産性をあげることが重要である。

というお話があり,まとめでは,
「組織知の側面から見ると,個人の異動により個人知は組織から消え去るため,
組織知の再生産を常にしなければならない。」
と締めくくられました。

今回も,個人と組織の関係性を考えさせられ,大変勉強になりました。
参加者からも,
情報と知識から生まれる力量の関係がなんとなく分かった。
知識を獲得させてQMS全体を良くするには,組織の思いを伝える文化が必要。
他,多くの感想がありました。


<次回のお知らせ>

第7回「QMSサロン」は10月19日(金)に開催致します。

 テーマ:情報と知識の観点から見たQMSの価値
 日時 :2012年10月19日(金) 14:00 〜 17:00
 会場 :東京・JEI浜松町ビル3階 CIAJ会議室


「QMSサロン」は,会員間コミュニケーションを取ったり,リレーション
を築くにも最適な場です。新たな参加者を大歓迎します。

皆様のご参加をお待ちしております。


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●10年目を迎える吉川先生によるBSC構築セミナーのご案内
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7月号でも予告をさせて戴きましたが,横浜国立大学名誉教授である吉川先生
の直接指導によるバランススコアカード(BSC)構築セミナーを以下の日程で
少人数定員制の2日間コースとして開講致します。

QMS委員会では,BSC構築の過程で実践されるビジョンと戦略を直結させ
る手法のビジネスにおける必要性・有効性にいち早く着目し,2003年より
その手法を多くの方に経験いただけるよう吉川先生の全面協力のもと毎年セミ
ナーを開催し,今年で10年目を迎えます。

当初はBSCを広めることから始めましたが,昨今では景気動向・競争激化に
より企業のおかれる環境は厳しさを増しており,経営基盤の強化や事業の成長
や価値向上を目指すなかでは,マネジメントの必要性が高まり,QMS委員会
では企業人としては管理職のみならず全員が身につけるべき技術と考えます。

カリキュラムは,吉川先生の事例を多用したわかり易い講義と直接指導による
少人数のグループ学習形式のケーススタディで構成され,全体の7割を演習に
充てるという実践的なセミナーです。
特に,BSCの基礎から構築までの7ステップを学ぶケーススタディは,柔軟
な思考訓練となる良い機会であると共に,マネジメント時代に必要な思考力を
バランスよく体得できることから会員企業の皆様にとって大きなメリットが
あると考えます。

募集については既に会員企業の窓口の方へご案内をしております。
また,QMS委員会会員企業の皆様には会員特典として無料で受講戴けます。

 講座名:QMS戦略セミナー「バランススコアカードの基礎から構築まで」
 日時:【1日目】2012年11月5日(月) 10:00〜17:00
    【2日目】2012年11月6日(火)  9:00〜18:00
 会場:東京・JEI浜松町ビル3階 CIAJ会議室
 募集人員: 20名程度

講師の吉川先生とは開催に向けてお打合せを行い準備を進めております。
是非,この機会にご参加いただきたくご案内申し上げます。


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●異業種見学会の予告「住友スリーエム CTC」(わくわく現場に学ぶ)
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毎回好評を戴いております異業種見学ですが,今回はグローバル・イノベーシ
ョン・カンパニーである住友スリーエムのCTC(カスタマー・テクニカル・
センター)を企画しております。

住友スリーエムは一昨年の創立50周年を機に,次の50年に向けた企業スロ
ーガンを『わくわくをみんなでカタチに』としました。

これは,3Mが最も得意とする46種類ものコアテクノロジーを基盤に,多様
な社員のアイデアを組み合わせ,お客様とともに一歩先の『わくわくするイノ
ベーション』を作り出していきたいという熱い思いが込められています。

今回訪問するCTCは,単なる一般向けの展示場ではなく,お客様に具体的な
商品や技術を展示し,課題解決へのヒントを提供しながら,デモや分析によっ
てお客様と一緒になって問題解決を具体化していく,まさに,住友スリーエム
の熱い思いが込められた『わくわく現場』です。

今回の見学を通して,このような3Mの思いや企業文化に触れ,さらにはお客
様の多くの課題に応えるためのアイデアを創出し続ける企業風土を肌で感じ,
一緒にわくわく体験をしていただけると思います。

今回の企画には,住友スリーエム様のご好意により,本社および事業部関係者
の全面バックアップをいただいております。

是非,ご期待ください。

 訪問先 :住友スリーエム CTC(カスタマー・テクニカル・センター)
 http://www.mmm.co.jp/sustainability/customer/ctc_ccc.html
 住所  :神奈川県相模原市中央区南橋本3-8-8
 実施日 :2012年11月16日(金)13:00〜16:00 (予定)
      (雨天でも決行いたします)
 募集定員:30名

詳しくは 10月上旬に通知予定の募集案内をご参照ください。


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●ISO 9000の改訂動向「ISO規格類の妥当性確認情報と今後の動きについて」
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現在ISO/TC176の審議事項で,特に注目すべきものとして次のものがあります。

1.品質マネジメントの原則(QMP)の改訂にかかわる提案への審議
  QMPが現在見直し検討されています。現在の8原則のうち
  「原則5;マネジメントへのシステムアプローチ」がプロセス・アプロー
  チにまとめられ7原則の案になっています。改訂案のQMPは,

 1)Customer Focus,
 2)Leadership,
 3)Engagement and Competence of People,
 4)Process Approach,
 5)Improvement,
 6)Informed Decision Making,
 7)Relationship Management

 です。
 現在この新7原則に対し,コメントの募集が行われております。

2.ISO 9001の次期改定に関する審議
  次期ISO 9001の改訂に向け各国の委員会のコメントを募集しております
  が,国内では国内ISO 9001対応ワーキンググループにより検討されており,
  ISOに10月までにコメントが提出される予定です。


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●TL 9000コーナー「ベストプラクティス会議など」
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9月11日-12日,米国シカゴでクエストフォーラムのベストプラクティス会議が
開催され, 224名の参加でした。

クエストフォーラム会長で KGP Logisticsのトレバー・プトラ氏が開会の挨拶
を行いました。

基調講演では,Tellabs のダン・ケリー氏が,今後 LTEが伸びてゆく中で, 
クラウドコネクテビティに力を入れていると発表しました。

エグゼクティブパネルでは,クエストフォーラム会長で AT&Tのティム・
ハーデン氏がMobileの増加に伴ったクラウド, セキュリティを中心に発展して
いくネットワーク(4G, LTE)に対する考え方について発表しました。

上記米国でのベストプラクティス会議の情報は,クエストフォーラムのウェブ
ページ:http://www.questforum.org/ をご参照ください。


TL 9000測定法ハンドブックがR4.5からR5.0に改版となりましたが,現在,日本
語版への翻訳作業中です。

 新たな測定項目;
  OTIP (On-Time Item delivery to supplier Promised date)
  MTRS (Mean Time to Restore Service)
  GSI (Global Service Impact)
  BRR (Basic Return Rate)
  CCRR (End-Customer Complaint Report Rate)
 の訳語も確定します。

翻訳委員会には,QMS委員会からTL 9000WGのメンバも加わり,11月に翻訳を
完了し,日本語版発刊の見込みです。


日本で,以下の組織が新たにTL 9000の認証取得をしました。
・TL6603 - NEC Corporation - MOBILE RAN OPERATIONS GROUP


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●知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
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 日本は「学力が落ちているのではなく,学習能力が低下しているのだ。」と
いう主旨の新聞記事を最近見かけましたが,的をえた意見と見えます。学力の
基盤となるのは知識ですが,知識を得るためにはことを理解し学び取る学習能
力が不可欠といえるでしょう。前回の QMSサロンでは「力量と組織的学習」と
いうテーマで出席者の皆さんと意見交換をいたしましが, QMSでも学習能力は
重要なのでもう少し考えてみたいと思います。

情報と知識の違いの認識:
 学習能力を考えるにあたりその中心には知識がありますが,この「知識」と
は何かをまず認識しておく必要があるでしょう。一般的に情報と知識は同一視
されており特にその違いに注目することはありませんが,学習能力を考えると
きその違いを確認し認識する必要があります。まず,情報も知識も“何らかの
意味を持っているもの”であり違いがありませんが,知識には前回ご紹介した
ように“正しいと信じたもの”という情報にない特性が加わります。この知識
固有の特性は,情報と知識に大きな違いを生み出すことがあります。

 例えば,ご存じのダーウィンの「進化論」は当時のヨーロッパの多くの人々
が共有していた“人間は神に似せて創造した”とする宗教的概念に対立するも
のでした。ゆえにダーウィンは進化論をすぐに発表することができませんでし
たが,最終的に彼はその危険を承知で発表しました。社会が共有し信じている
知識に対抗するには相当の勇気と覚悟が必要だったと思います。このように知
識は信念に関連するため,現在でもアメリカのいくつかの州では進化論の正当
性が議論されています。また,地球を中心に宇宙が回っているとする天動説が
一般的な知識であった時代に,ガリレオ(1630)は観測を基盤に地動説を発表し
ましたが,それに対し宗教裁判が行なわれガリレオは最終的に地動説を撤回し
ました。その際“それでも地球は動いている”と語ったことは有名です。
この二つの事例だけでも知識とは人々の信念に依存するため,新たな知識とは
単なる情報と違い人々の行動に大きな影響を与えるものです。QMS でもこのよ
うな事例に似ているようなことが起きないとは限りません。特に組織的学習に
よる知識の創造と獲得には,単なる情報の取扱いと違い注意深く考えなければ
ならないでしょう。

 次にビジネスの世界の例を見てみましょう。現在世界二位の売上高をほこる
GE社は創業時の電気部門を整理し,金融や医療を初め多くの分野にビジネスを
展開し大きな成果を得ています。その成功の背景に“どの分野でもシェアが世
界1位または2位でなければ売却や整理する”とした CEO(ジャック・ウェルチ)
の強い信念がありました。この経営者のコミットメントは,マネジメント層は
もちろんのこと社員の強い信念になっていますが,このコミットメントはGE社
の知識形成の基盤であり社員に共通した価値観と行動を生み出しているように
見えます。この価値観が良いかどうかをここで議論するつもりはありませんが,
企業でも何を正しいと信じるかにより知識のあり方が変わり,その結果企業全
体の価値観や行動が方向づけられると推察できます。

 このように情報と知識は“意味を持つ”という共通点のため,日常生活では
特にその違いはあまり気になりませんが,情報だけで行動する場合その動機は
外因的で従属的になり知識に基づく行動は内因的で主体的行動を生み出します。
学習とは何かを考えるときに配慮しなければなりません。

マネジメント体制と知識形成の関連:
 知識活用型企業では人々がもつ知識は不可欠なビジネス資源であるため,知
識を基盤とした力量をもった人材の育成はその企業の将来に大きく影響すると
思われます。残念ながら実際のところ人々の学習能力にバラつきが大きく,力
量ある人材の育成と活用のマネジメントは,ヒューマンリソース・マネジメン
トなどの分野で研究されていますが,動機づけや価値観など人間固有の特性が
あり難しいものです。

この難題に対処し近代大量生産システムの基礎を築いたテイラーシステム
 (科学的管理法)を事例に次に考えてみましょう。20世紀初頭までマネジメン
トという概念はあまりなく資本家と労働者,そして知識をもった工場長や技師
がいただけです。知識をもったものがその都度指示し人々を動かしていたと見
えます。(参考:スチュアート・クレイナー,マネジメントの世紀1901〜2000,
東洋経済新報社,2000)このような状況では必要な知識を持っている人は少な
く貴重でした。そこでテイラーは現場で行われていた作業を分析し,いくつか
の作業に分業することを考えました。まず知識を持つ人々が業務を分析し,
“何をどのように行うか”,“どの程度の時間で行わなければならないか”を
決定し「課業」という指示書を作業者に示し作業させることを考えました。
これは分業することにより知識を展開し,特別知識や力量を持たない人々の組
合せでも全体として高度な仕事を効率よくできるようになり,結果的に生産性
を大幅に向上させることに成功しました。このマネジメント方式はフォード社
に採用され特殊技能や知識を持たない従業員を使っても複雑な装置の集まりで
ある自動車の大量生産を可能にしました。多くの従業員は自動車のことを何も
知らなくともよく,指示書に従い単純作業を行えば高度な製品でも効率よく製
造することができることを示しました。

欧米風マネジメントと日本風マネジメントの背景:
 このような状況は,“物事を考え指示する人”と“作業する人”とが分離し
その結果マネジメント層と労働者層ができ上がったのではないでしょうか。こ
のような状況を当時でも非人間的な人間機械論にみる批判がありました。
(チャップリン主演の映画「モダン・タイムス」(1936)はこれを風刺したもの
ですね。)
特別な知識が無い人でも高度な仕事の一部を分担することができる分業による
マネジメント体制の構築は大量生産体制を促進し生産性がめざましく向上しま
した。その結果,従業員の賃金もしだいに上昇したのでこの体制は社会に受け
入れられたのだと見えます。現在でもこの流れは根本的には変わっていないと
見えます。特に北米では高度な知識を持つ人々がマネジメント層を形成し,一
般従業員と区別されたマネジメント体制が維持されていると思います。

一方,国内に目を転じれば戦後日本の高度成長を支えた製造業では単に作業の
分業化が進んだのではなく現場による改善活動が同時に進みました。これはマ
ネジメント層と労働層が明確に区分された欧米では見られなかった現象です。
国内では現場でも物事を考えることを推奨し,現場の知識とマネジメント層の
知識とを交流させる仕組みが違和感無く構築されました。これは,テイラーが
述べたように現場では何も考えず指示に従い働く従業員が良い従業員であると
する考えとは逆のスタイルです。このようなマネジメントスタイルがなぜ日本
で可能になったのか不思議です。基礎教育を受けた従業員が現場に多くいただ
けではうまく説明できないものでマネジメントの基盤が欧米風と違うものがあ
ったのではないかと思わせます。

例えば,日本ではその個人よりその人が属している企業に信用を置きます。
その人が属する企業がその個人の身分証明であり能力証明の代わりをなし,ど
の会社の社員であることが個人の能力よりも重視される傾向にあります。また,
 終身雇用体制の前提で企業は組織化されたため,自然に階層を越えたコミュニ
ティーが形成されていたのもこのようなマネジメント体制を可能にしたと見え
ます。このコミュニティー的企業風土ではマネジメント層と従業員層は非常に
近い関係になり,企業の成長は社員全体にとって非常に重要なことなり改善活
動はある意味自然であったと思います。後にTQC,TQM と呼ばれるようになりま
したが,欧米に見る風土の違う企業ではその実現は本質的な部分で難しいと思
います。

このように情報と知識の違いを起点に分業化の意味,マネジメント体制の違い
を生み出す背景について簡単な考察をしてみました。知識と情報は相当に違う
作用を引き起こしそうだということが想定できます。

学習と知識の関連性:
 さて情報と知識には違いがあり,知識の形成と展開の仕組みがマネジメント
体制と組織的行動に少なからず影響するであろうことがおぼろげに見えてきま
した。私たちはインプットされた情報をすでにある自らの知識に基づく価値観
や信念にもとづき無意識に解釈し,選択し,必要ならば新たな価値を与え正当
化することにより新たな知識を得るわけです。一方で,自らの知識に照らし価
値観が合わないものや理解できないものは,忘却するかいつか使える情報とし
て頭の中の引き出しにしまいこみます。このしまい込まれた情報は自らの知識
が増えることにより,あらためて価値が見出され知識になることも少なくあり
ません。このように情報と知識は学習をとおして相互関係にあると見えます。
学習とは情報を単に記憶するのと違い知識にすることですね。

QMSの価値:
 さて紙面の関係もありますので,ここで情報と知識の違いをQMS にあてはめ
て考えてみましょう。非常に幸いにして文書化とか記録にかかわるISO 9001要
求事項があるため, QMSには情報と知識形成にかかわる基礎が自然に体系化さ
れています。(情報システムや知識マネジメントシステムなど基本的に情報の
蓄積と配布の効率化を目指したものが,なぜうまく機能しないのかあわせて考
えてみてください。)まず,文書化は業務活動を論理的に整理する機会であり
業務を秩序化するのに役立ちます。また新たな気づきを得て改善の機会を得る
ことができます。さらに活動の記録を残すことにより組織として説明責任を果
たすことができるとともに,その記録をレビューすることにより改善へ手がか
りを発見することができます。そして各プロセスの文書を体系的にまとめるこ
とにより,企業全体の分業のあり方や生産性向上の手がかりを得ることも可能
となります。

そこで次回の QMSサロンでは,情報と知識の観点から QMSの価値を考えてみた
いと思います。そのキッカケとしてQMSの原則(QMP)に立ち返えると何か得るも
のがありそうです。例えば QMPの「リーダーシップ」とは組織の知識形成にど
のような影響を与え,人々の行動をかえていくものなのか。「人々の参画」は
知識展開にどのような意味を与えるのか。「継続的改善」の仕組みは新たな知
識の形成と獲得にどのように影響するのか。そしてそれらはどのように QMSの
中でマネジメントされるべきであろうかなど, QMSの原点に立ちかえり話しあ
うことも悪くはないと思います。


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●編集後記
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今年の夏は暑く体にこたえました。皆様,体調は大丈夫でしょうか。

まずは,疲れた体を休め,気分を新たにQMSの活用について考えて見ようと思
います。

今回は,51号ということで,QMS委員会も更にがんばり100号を目指して行
きますので,今後ともご支援をお願いします。

最後までお読み戴き,ありがとうございました。


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──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」──

* 配信追加は下記にお知らせください。
 mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp
* 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
    QMS委員会メルマガ編集部
 http://www.ciaj.or.jp/top.html
 http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ)
* 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(菅野 清裕)
* 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!
 qmsmelg@ciaj.or.jp
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