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お知らせ

「技術ナビゲーション2018」を発刊~ 新たなIoTの活用とそれらを支える技術の動向および日本における課題 ~

2018年4月18日

CIAJ技術企画部会では、CIAJの会員企業および我が国のICT産業全体の振興を目指して、近未来の視点からICTの技術・市場動向を俯瞰し、CIAJの羅針盤として道筋を描く思考の素材となることを目指し、技術ナビゲーションの調査・検討を進めております。
2017年度は、IoTの活用による新たなサービス創出の潮流やプレーヤの分類、また、それらを支える技術の動向について調査・分析を行いました。また、今一つ元気がないと言われる日本のIoTに係る現在の課題について検討を進め、「技術ナビゲーション2018」を策定しました。

【技術ナビゲーション2018の要点】

  1. IoT技術を活用した新たなサービス、ビジネスについて事例を収集、その潮流について分析。また、併せて、サービスを構成するプレーヤの分類、類型化を実施。
  2. サービス、ビジネスの創出を支える技術の開発動向について、調査、分析を実施。
  3. 日本における新たなサービス創出の課題、阻害要因を分析。
  4. 上記の分析結果に基づき、CIAJ会員企業に向けた今後の方向性を示唆。

1.IoTを活用したサービス・ビジネスの潮流とプレーヤの分類

近年、IoT技術・システムに支えられて、新たなサービスがつぎつぎと創出され、実用に供されています。これは「デジタルトランスフォーメーション」による新たな価値の創造が、社会活動・経済活動の様々な分野で急速に進展しつつあることを表していると考えられます。その動きの中から、日本企業がより意識し取り組むべきものとして、今までつながりの薄かった様々なプレーヤを結び付け、新たなサービスを創出する「デジタライゼーション:Digitalization」に注目して調査した結果、以下のような潮流が明らかになりました。

項目 調査・分析実施内容
1 オープンAPI革命 従来、企業内向けに構築されていたAPIが公開され、異なる企業間での業務やオペレーションノウハウの相互利用が進む。
2 オンデマンド受給マッチング センサーやインターネットなどを活用し、実社会の需要と供給をリアルタイムでマッチングする。
3 データ価値密度評価とビッグデータの官民相互利活用推進 データ価値密度が評価され、データ取引所、情報銀行等により、官民で保有するビッグデータの相互活用が進む。
4 対話型UI/AI UI(ユーザインタフェース)は、AI(人工知能)に支えられた音声対話にAR/VR、ジェスチャー等が加わる対話へ進化する。
5 マスカスタマイゼーション マスユーザそれぞれのオーダーを取り入れて、カスタム製品を短期間で提供する生産形態が各分野で進む。

注)API:Application Programming Interface、AR:Augmented Reality、VR:Virtual Reality

これらのビジネスを成り立たせるには、IoT技術のみではなく、関連するプレーヤが重要な役割を果たします。従来型のように、一つの企業がサービスの仕組みをすべて構築し、利用者に提供する形態ではなく、様々な立場のプレーヤが相互に協力しながら、プラットフォームをベースに様々なサービスを組み立てて行く、プラットフォーム・エコノミーが進展していくものと考えられます。

2.サービス、ビジネスの創出を支える技術の動向

デジタルトランスフォーメーションを支えるIoTシステムは、多岐にわたる分野の技術から構成されています。それらの技術は、開発運用ツールからシステムを構成する要素技術、統合技術等に分類されますが、中でも、アプリケーションの要素技術となる大規模データの処理・活用技術や機械学習を取り入れたAI技術、セキュリティ・セーフティ、プライバシー保護等を含むディペンダビリティ確保に向けた統合技術等が重要です。特に注目すべき技術を下表に示します。

項目 調査・分析実施内容
1 プライバシー保護データマイニング・匿名化 プライバシーの確保と個人情報の活用を両立させるための技術。匿名化、秘密計算、プライバシー保護データマイニング等
2 ブロックチェーン 暗号技術・P2Pネットワークを利用した分散型台帳管理技術。非改ざん性、高可用性、低コスト性を持つ。
3 大規模データの活用技術 データ価値密度を考慮したエッジとクラウドのデータ最適配置アーキテクチャ等。
4 SDx/NFV ソフトウェアにより、ネットワークの構成機器を一元制御(SDx)、あるいは、汎用サーバ上で仮想化して実現する(NFV)技術。
5 セーフティとセキュリティの統合化 セーフティ・ハザード分析とセキュリティ脅威分析の共通概念の対応関係から、統合的に分析するフレームワーク。
6 モデルベース運用保守 開発フェーズで利用されるモデリング技術を運用フェーズで活用することにより、システムの故障予知等を行う。

注)SDx:Software Defined anything、NFV:Network Functions Virtualization

3.サービス、ビジネスを創出する際の課題、阻害要因

現在の日本は、IoTを活用したサービス創出、活用の面で、世界の動きについて行けてないのではないか、という懸念があります。例えば、最近話題のAIスピーカも、google、amazonなど、エンジンはすべて海外製です。このような背景には何があるのか、次のように整理しました。

  1. IoTの価値や有効性の認識が進んでいない。
    (IoTが新たなサービス・ビジネス・事業を生む、という認識が不十分)
  2. IT投資に対する経営マインドが積極的ではない。
    (企業におけるIoTへのチャレンジャブルな投資が少ない)
  3. AIを中心としたIT技術者の層が薄い。
    (技術者のマインド、企業の技術者に対する処遇・評価等が低い)
  4. 新ビジネス創出に向けたスキームが弱い。
    (ベンチャーキャピタル、各種規制、税制、文化等、新ビジネス創出への後押しが弱い)

4.CIAJと会員企業に向けた今後の方向性

ここまでの調査・分析結果に基づき、CIAJ会員企業に向けた今後の事業への取り組みのヒントを対応案としてまとめました。

  1. 企業側における、M&Aや合弁を含む企業連携による競争力強化、新たなビジネス開拓への可能性の模索
  2. 企業所有のデータやノウハウ等の持ち寄りによる新分野への進出や新サービス創造の可能性の模索
  3. 社会人教育などの人材育成、研究開発の推進
  4. 政府等による、企業の新たな取組みの支援(制度、税制、補助金等による支援)

今、世界は政治・経済・社会等いろいろな面で大きく動いています。この大きなパラダイムシフトのうねりを上手に乗り切っていくためには、まず企業自身が変わらなければなりません。会員企業が自分自身を変革し、新たなビジネスの種を発掘・育成し、企業や事業の継続的な成長を実現する、そのような願いを込めて「技術ナビゲーション2018」を発行しました。
日本においても様々な組織、団体等が新たな超スマート社会を目指して活発に活動を進めています。今回の「技術ナビゲーション2018」がその実現に少しでも役に立てば幸いです。

「技術ナビゲーション2018」の全文はこちら[PDF:5MB]

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