CIAJでは2014年度に「法人向け携帯電話端末ビジネスのニーズ掘り起しに関する調査研究」プロジェクトを発足し、国内端末メーカが法人市場を 獲得するためのポイントは何かを明らかにするために調査研究を実施し、この度その結果を6月9日のCIAJプロジェクト成果発表会で報告致します。
(1)調査の概要
<調査対象の選定>
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- モバイル端末の利用率を横軸に、IT投資の売上/収支改善への寄与率を縦軸にし、各業界をマッピング
- モバイル端末の利用率の高低でI~IIIのエリアに分割し、エリアIIについては、IT投資の売上/収支改善への寄与率で更にII-1~II-3に細分化
- 網羅性と今後の市場伸長の期待度等を加味し、以下の4つの業種を選定
- 小売 (II-1)
- 建設 (II-2)
- 教育 (II-3)
- 医療・介護 (I)
- システム導入責任者と実務担当者のニーズが必ずしも合致するとは限らないので、各業種について、双方からヒアリング
意思決定者ヒアリング | 実務者グループインタビュー |
---|---|
教育 2社 | 教育グループ 1グループ5名 |
小売 2社 | 小売グループ 1グループ5名 |
医療(介護) 2社 | 医療(介護)3名+建設3名 1グループ 6名 |
建設 2社 | |
計 8社 | 計 3グループ 16名 |
<調査内容(質問項目)>
- 業種毎の差異を比較しやすくするために質問項目に共通性を持たせるように設計
- 各業種に特化した質問項目も用意し、より具体的に実態を把握できるように設計
共通の質問項目 | 各業種に特化した質問項目 |
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【建設】
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【小売】
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【教育】
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【医療・介護】
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(2)調査結果概要
<モバイル端末の活用状況>
- 法人におけるモバイル端末の活用スタイルは比較的シンプル。使う機能やアプリを限定し、目的に即した利用で効果を上げている。
- スマートフォンはフィーチャーフォンの代替として導入が進みつつある。コミュニケーション用途が中心だが、LINEが常用されるなど利用形態が多様化している。法人ユーザにとってコミュニケーションは重要なビジネスニーズである。
- アプリやシステムの活用はモバイル端末の利用環境を整える役割も果たしている。【例】マルチデバイス対応のアプリを採用してBYOD(私用端末のビジネス利用)化に対応
業界共通アプリを使って業界横断的な情報共有化を推進 - 現場業務に適して情報端末として活用度が高いのはタブレット端末。ハード、ソフト(アプリ、システム等)、サービス(クラウド等)を連動させることによって、各社部門における活用が図られている。
- クラウドサービスのアプリを端末で利用する動きが見られる。クラウド上の情報共有基盤を活用することによって、モバイル端末は“パーソナルな生産性向上ツール”であると同時に“多対多のチームワークを支える業務用ツール”となる。
<モバイル端末に関する要望・ニーズ>
- タブレット端末に対して、紙媒体と同様の使い勝手を望む意識が見られる(“普段使いの紙の大きさ”、“紙のような”一覧性、“折りたたみ”、“電子ペーパー”のアイデア 等)。
- 現場業務はしばしば端末操作が難しい状況・状態になる。現在の操作機能をレベルアップするより、操作できない状況・状態に対応した新たな機能の提供が望まれている。【例】入力する情報量が多い医療・介護は、外付けキーボードや音声認識を希望
音声コミュニケーション機能の充実(携帯電話並の通話機能、ノイズキャンセラー機能 等) - どの業種でもカメラ機能が最も重用されている。画素数など入力系の撮影機能についてはほぼ満足している。撮影した動画像を業務に有効活用することへの関心が高く、整理・加工など出力系の機能提供の充実が期待されている。【例】撮影した動画像のアルバム機能を希望。サムネイルから見たい写真をさがすのが難しい
撮影した動画像を使って授業の教材を作成する - 端末を高機能化、多機能化すればコスト高につながる。モバイル端末の有用性や使い勝手を向上させるために、他端末と接続して多機能化させる方向が指向されている。【例】(英会話)スマートフォンを外部のスピーカに接続してネイティブの発音を聞かせる
スマホに外部機器を接続すればいろいろなことができ。心電図やエコーなどアタッチメントをつければスマホが医療機器になりうる
現在の端末利用状況 | 今後の端末ニーズ | |
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建設 | 設計図面の閲覧 図面情報を共有化する業界横断アプリ |
堅牢性、防塵性、防水性 現場での自動計測機能(ウエアラブル端末の活用) |
小売 | 電子カタログ(顧客向け、スタッフ向け) | お客様を意識した筐体デザイン バックヤード業務の入力レス(定型情報、ウエアラブル端末の活用) |
教育 | タブレット端末を活用した学習サービス | 手書き機能へのこだわり 直感的な操作性、アプリ機能の迅速性 マイク、スピーカの音質 |
医療・介護 | クラウドベースの情報共有 組織的なセキュリティ対策 |
外付けキーボード、音声認識(非定型情報) |
<モバイル端末の導入・運用におけるポイント>
- モバイル端末の機種選定の主なポイントは「快適性」「安心感」「ブランドイメージ」の3点
クリックで拡大 - その一方で、iOS以外のOSへの対応、オフィス内端末のWindows環境を継承してモバイル環境と融合させるニーズも顕在化しつつある。
- 法人ユーザにおいてモバイル端末導入の際のコストは大きな悩み。高付加価値化・専用端末化による端末コスト上昇には慎重姿勢を見せている。
- OSのバージョンアップ対応に伴う開発コストも負担が大きい。特にAndroidはメーカごとに異なる仕様、多端末の弊害から、導入後の開発コストにはねかえってくる。Android端末の基本仕様については、さらなる共通化が望まれている。
- 全社的にモバイルワークの業務形態をとる医療・介護(在宅医療や訪問看護)を除いて、現段階における法人のモバイル端末導入は、現場を中心にした 部門単位であることが多い。法人支給端末をMDMで管理する以外は、セキュリティ対策や保守運用方針に関して各社ごとに対応にばらつきがある。
<ウエアラブル端末>
- 現行のウエアラブル端末については、眼鏡タイプに人気が集中している。ユーザが評価するポイントは、(1)端末レス、手ぶらで作業できること、(2)ユーザ目線・現場目線で得られる情報が役に立つことである。
- 現在のウエアラブル端末は、まだ“できたらいいな”のシーズ的発想の段階であり、費用対効果が見えてこないと機能過剰感につながる恐れもある。
- 現行のウエアラブル端末におけるメーカ側の発想は「CAN(可能性)」型とすれば、ユーザの発想は「DO(行動支援)」型である。「端末をどう使うか」ではなく、「現場で何をしたいか」という着眼点から、特定の機能や用途に限定されている。
(3)まとめ
<本調査で明らかになった点とこれから取り組むべき課題>
本調査によって、モバイル端末に対する法人ユーザのニーズが、端末の仕様や機能等のハード面から、利用シーンや用途といった活用面に焦点が移りつつあることが明らかになった。今後の法人ユーザ開拓のポイントは次の3つのキーワードにまとめることができる。
- 利活用:
ユーザニーズは入力系から「出力系」へシフト
~ハード・ソフト・サービスを連動させることにより端末の使用価値を高める - コミュニケーション:
モバイル端末の価値を最大化するのは「コミュニケーション」効果
~端末機能の柔軟な連動によりユーザの情報共有・情報発信行動を自然に誘導する - マルチ化:
マルチOS・マルチデバイスに対応した使い勝手の良い活用環境
~互換性の高い端末環境の整備と業種ごとの固有ニーズへのきめ細かい対応
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本調査結果の詳細につきましては、2014年度CIAJプロジェクト成果発表会で発表致しますので、下記webよりお申込みの上、ぜひご参加ください。
[申し込み先URL]
https://cp11.smp.ne.jp/ciaj/seminar
※ 定員になり次第、締め切りとさせていただきます。
[2014年度CIAJプロジェクト成果発表会]
開催日時:2015年6月9日 15:00~
開催場所:霞山会館
本リリース内容に関する問い合わせ先
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TEL:03-5403-9358 FAX:03-5403-9360
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