一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)技術企画部会では、CIAJ会員企業また我が国のICT産業全体の振興を目指して、グローバルな技術・市場トレンドを俯瞰し、ICT産業の向かうべき方向を検討しています。
昨年の「技術ナビゲーション2014」では、ICT市場構造・技術の変化を踏まえ、特に、社会インフラのパラダイムシフトをもたらす「ネットワーク仮想化」、「M2M」、「クラウド」の3つのキーワードに着眼して、社会構造・産業へのインパクトを分析致しました。
「技術ナビゲーション2015」では、さらに、市場環境の変化を捉えて、情報通信分野と業際分野に密接に関係するキーワードを抽出し、その間の相 関分析を行いました。また、2020年東京オリンピック・パラリンピックを大きな契機と捉えてICTシステムの動向調査を推進し、2025年を視野に入れ て、今後取り組むべき方向性を示しました。
1.背景と経緯
1990年以降のインターネット技術・サービスの拡大により、固定系通信サービス市場は大きく拡大、また、移動体通信も音声中心からデータ通信中心へと移り変わりました。その変化の中で大きな流れが2つでてきています。
一つは、ネットワークの物理的な存在を意識せずにネットワークにつながっている、そして、ネットワークにつながることが価値を生み出す世界になってきて いることです。この流れとして、クラウド、仮想ネットワーク(SDN)が広がりつつあり、あらゆる機器がネットワークにつながる環境、M2Mが今後ますま す拡がっていくと考えられます。
もう一つの流れは、ICTサービスやアプリケーションといったネットワーク上で展開されるサービスは市場拡大が見込まれている反面、ネットワーク機器や端末機器といった既存の通信機器市場は鈍化することが予測されることです。
技術企画部会では、2014年度も、関連する省庁、通信事業者、産官学の研究機関、企業などとの交流を通じ、最新動向の把握と情報共有を図りまし た。更に、社会動向やグローバルなICTトレンドの変化を踏まえたうえで、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたICTシステムの動向調 査を推進し、今後取り組むべき方向性を示しました。
2.調査・検討結果
(1) イノベーション創出・社会変革をもたらすキーワードの抽出
マーケットが大きく変化していること、プレーヤも通信事業者とサービス提供事業者の境がなくなるほど変化していることから、「マーケットの変化とプレーヤの変化」を踏まえたキーワード抽出およびサービス・技術に関する重要キーワードの抽出を行いました。
抽出したキーワードは、固定・モバイルブロードンバンド、8K、クラウド、ビックデータ、IoTなどICT基盤に関するキーワード、そのICT基 盤の上で実装される多様な分野におけるサービス・アプリケーション(情報配信、商業・サービス業、交通・運輸、医療・福祉、教育、防災、環境エネルギー、 工業)に関するキーワードがあります。
これらを通信技術、情報技術、Advanced情報通信システム、ICTサービスの4つのプレーンに分類しました。図中の各プレーンには、2020年の 東京オリンピック・パラリンピックと2020年以降において、国民の生活向上、社会全体の豊かさに繋がる成長産業となることを見据えて、コア技術、イノ ベーション創出・社会変革をもたらすと考えられるものを記載しています。
通信技術プレーンでは、レガシーネットワークからの変遷動向を示し、仮想化ネットワーク(経済性と可用性の追求)と、ピュアな通信ネット(より高 速、広帯域、柔軟性、多様性、可用性)への動向を、通信技術と情報技術により構築された強固な技術基盤のもとに、アプリケーションとして成長していること を示しています。また、今後、社会経済活動を先導していくであろう注目すべきシステムを、Advanced情報通信システムとして定義しています。
(2) サービスと技術の相関分析と今後の方向性
これらの抽出されたキーワードのうち、新事業・新サービスを支えるコア技術としては、情報配信・放送関連(8K)、ヒューマンインタフェース、プ ラットフォーム、ネットワーク関連に分類し、また。関連分野としては、情報配信、医療・福祉、教育、農林水産業、防災、交通・運輸、環境・エネルギーなど に分類しました。その上で、イノベーション創出・社会変革をもたらすことを評価尺度として重みづけを行い、重要度の高いサービスと技術の相関分析を行いま した。
その相関分析の結果より、ヒト・モノ・データ・プロセスがネットワーク化されたIoT環境では、5Gを中核とした固定・モバイルブロ-バンド、デジタル データの収集・蓄積・解析を行うクラウド・ビックデータ、8Kなどの大容量データの情報配信からなるインフラストラクチャーが、あらゆる産業分野におい て、価値やイノベーションを生み出し、社会課題の解決や新産業の創出に繋げる大きな役割を果たすと予測しました。
3.今後の取り組み
今後はこれらの検討を引き継ぎ、様々な観点での検討を更に広く深く進め、分析や考察に基づく結果の更なる深堀が課題と考えております。また、急速 な世の中の変化や市場の動きとそれに対する技術の進展に対して、変化にマッチすべくCIAJの活動を広げていくことが技術企画部会に期待されています。そ のためにも技術系委員会と連携した活動を継続的に行い、更に外部への委託調査や、外部講師の講演会にも積極的に取り組むとともに、時代の変化に合わせて ICT産業の向かうべき方向を検討して参ります。
●「技術ナビゲーション2015」の全文はこちら[PDF:5.8MB]
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