これは、講演1の講演資料、表紙から33ページ目までをテキスト化したものです。 (表紙) 「電気通信アクセシビリティ・シンポジウム」 電気通信アクセシビリティの確保に向けて〜国際標準化の意義とその概要〜 早稲田大学大学院 国際情報通信研究科 教授 松本 充司 (1ページ) 目次 電気通信アクセシビリティ確保に向けた国内の取組・・・2 電気通信アクセシビリティガイドラインの国際標準化について・・・10 電気通信アクセシビリティに配慮した機器の具体例・・・28 今後に向けて・・・34 (2ページ) 電気通信アクセシビリティ確保に向けた国内の取組 (3ページ) 電気通信アクセシビリティの重要性 ・インターネットの急速な普及をはじめとする情報通信技術(ICT)の目覚ましい発展 ・生活・仕事の面において日常的な電気通信の利用機会の増大 →電気通信アクセシビリティの確保が重要 (主に高齢者・障害者が電気通信機器及びサービスを支障なく操作又は利用することが可能であること。) (4ページ) 電気通信アクセシビリティ確保に向けた取組 H10.6 郵政省・厚生省 「ライフサポート(生活支援)情報通信システム推進研究会」 電気通信アクセシビリティ指針の策定とその普及等を目的とした協議会 の発足を提言 H10.10 障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針(郵政省告示) H10.11 「電気通信アクセス協議会」の発足 H12. 7 障害者等電気通信設備アクセシビリティガイドライン第1版の発行(同協議会) H15. 7 「電気通信アクセス協議会」から「情報通信アクセス協議会」へ名称変更 H16. 5 高齢者・障害者等に配慮した電気通信アクセシビリティガイドライン第2版の発行(同協議会) H17.10 上記ガイドライン第2版をベース(電気通信機器のみ)にJIS規格化(X8341−4) H19. 1 上記ガイドライン第2版をベースにITU-T※ 勧告化(F.790) ※国際電気通信連合(ITU)の電気通信標準化部門 (5ページ) 情報通信アクセス協議会の概要 (情報通信アクセス協議会)<関係業界として遵守すべき自主基準等の策定> ・会長 齊藤 忠夫 東京大学名誉教授 ・電気通信関連団体、障害者・高齢者関連団体、学識経験者から構成 (提供者部会)<アクセシビリティ指針を満たす電気通信設備の方策等の検討> ・部会長 伊藤憲三(岩手県立大学ソフトウェア情報学部教授) ・構成団体((社)電気通信事業者協会、(社)テレコムサービス協会、(社)電波産業会、情報通信ネットワーク産業協会) (利用者部会)<部会構成団体の提案のとりまとめ等> ・部会長 松尾武昌((社福)全国社会福祉協議会 常務理事) ・構成団体((財) 全日本ろうあ連盟、(社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、(社福)日本身体障害者団体連合会、 (社福)日本盲人会連合、(社福)日本障害者リハビリテーション協会、国立身体障害者リハビリテーションセンター、 日本障害者協議会、江東シニアネットクラブ) (オブザーバー)総務省・厚生労働省・経済産業省 情報通信ネットワーク産業協会(事務局) (6ページ) アクセシビリティ考慮商品の公表 (情報通信アクセス協議会では、ガイドラインに照らしてアクセシビリティを考慮していることが確認された商品及び その評価を実施したチェックリストをホームページ上で公表。) (7ページ) 情報通信アクセス協議会・ガイドライン第2版 ■高齢者・障害者等に配慮した電気通信アクセシビリティガイドライン(第2版) ■制定日:平成16年5月26日制定 ■作成団体:情報通信アクセス協議会 適用範囲:あらゆる電気通信設備、そのソフトウェア及びそれらを用いて提供されるサービス  ※固定電話、ファクシミリ、携帯電話、テレビ電話の個別配慮事項を規定  ※第1版で適用範囲に含まれていなかった「電気通信サービス」にも言及 <本体> 目的・背景 1.適用範囲 2.参考規格 3.定義 4.一般的原則 5.操作・利用に関する共通要件 6.端末機器に関する配慮要件 7.電気通信サービスにおける配慮要件 8.企画・開発・設計・評価における要件 9.サポートに関する要件 <付属書> 1.固定電話機の基本操作に関する障害別配慮ポイント 2.ファクシミリの基本操作に関する障害別配慮ポイント 3.携帯電話の基本操作に関する障害別配慮ポイント 4.テレビ電話の基本操作に関する障害別配慮ポイント 5.情報通信アクセス協議会ホームページへの掲載方法 6.固定電話に関するアクセシビリティ評価チェックシート(例) 7.郵政省告示第515号 8.情報通信アクセス協議会構成 (8ページ) 情報アクセシビリティJISの全体像 (あらゆる分野の製品・サービス開発において、高齢者や障害者にも使いやすい配慮を加えることを明記した ISO/IECガイド71(2001年11月発行)に基づく「高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した 規格作成配慮指針」JIS Z8071(2003年6月発行)を「基本規格」として、その下位規格を制定) (9ページ) JIS X8341−4(電気通信機器JIS) ■高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス− 第4部:電気通信機器 (JIS X8341−4) ■制定日:平成17年10月20日 ■原案作成:情報通信アクセス協議会  ※情報通信アクセス協議会・ガイドライン第2版の電気通信機器に関する部分を基にJIS原案を作成。 適用範囲:固定電話機、携帯電話機、ファクシミリ、テレビ電話等の電気通信機器  ※複合した新概念の電気通信機器も従うことが望ましい  ※電気通信サービスは対象外 <本体> 序文 1.適用範囲 2.引用規格 3.定義 4.基本原則 5.企画・開発・設計における要件 6.操作・利用に関する共通要件 7.機器に関する共通要件 8.サポートに関する要件 <附属書> 1.固定電話機の基本機能及び配慮要件 2.携帯電話機の基本機能及び配慮要件 3.ファクシミリの基本機能及び配慮要件 4.テレビ電話機の基本機能及び配慮要件 5.電気通信機器の基本機能の操作に関する心身機能別配慮  ポイントの一覧表 6.高齢者・障害者の心身機能などの特性及び遭遇する問題点 7.他の規格との位置付けについて 8.関連規格 (10ページ) 電気通信アクセシビリティガイドラインの国際標準化について (11ページ) ガイドライン国際標準化の背景 (このように日本国内では、電気通信アクセシビリティに関するガイドライン策定が進展) ・平成10年10月:障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針(郵政省告示) ・平成12年7月:障害者等電気通信設備アクセシビリティガイドライン第1版(電気通信アクセス協議会) ・平成16年5月:高齢者・障害者等に配慮した電気通信アクセシビリティガイドライン第2版(情報通信アクセス協議会※)※平成15年7月に名称変更 ・平成17年10月:「高齢者・障害者等配慮設計指針(第4部:電気通信機器)(JIS X8341-4)」JIS化 →ITU-Tにおける電気通信アクセシビリティガイドラインの国際標準化の取組 (12ページ) ガイドライン国際標準化の意義・目的 ■インターネットをはじめとする情報通信技術(ICT)の目覚ましい発展に伴い、特に高齢者や障害者など、 電気通信機器やサービスが利用できない場合の不利益が深刻化。 ■このような状況を踏まえると、電気通信アクセシビリティを確保するためのガイドライン等の整備が必要。 ■電気通信機器やサービスについては、国内に留まらず広く世界とつながっているもの。したがって、各国ごとに ガイドラインを設けるのではなく、国際的に統一された基準等の策定が必要不可欠。 (13ページ) ITU(国際電気通信連合)の概要 ■電気通信に関する国際連合の専門機関で、主な任務は、@国際的な周波数の分配、A電気通信の標準化、 B開発途上国に対する技術 援助など。 ■本部はスイス・ジュネーブ。日本は1879年に加盟。 (14ページ) ITU-Tの活動 国際電気通信連合電気通信標準化部門(ITU-T)では、電気通信を世界的規模で標準化するために、 技術、運用及び料金についての研究を行っている。 これらの研究は、分野ごとに分かれた研究委員会 (SG:Study Group)により実施される。また、4年間を1つの研究会期としており、 研究会期毎に具体的な研究課題を各SGに割り当てて、研究を実施している。 (ITU-Tにおける国際標準) 各SGで研究された成果は、ITU-T勧告として採択され、電気通信に関する国際標準となる。 全世界の電気通信システムは、基本的に、国際標準であるITU-T勧告に準拠したものとなっている。   このため、非常に優れた技術が開発された場合であっても、ITU-Tにおいて勧告として採択されて 国際標準にならなければ、世界的に通用しない状況となる。 (15ページ) ITU-Tの構成 1.全権委員会議PP(最高意思決定機関)(4年毎に開催) 2.世界電気通信標準化総会 WTSA(研究課題設定、勧告の承認)(4年毎に開催) 3.SG16 マルチメディア端末、システム及びアプリケーション (マルチメディア端末、システム、プロトコル及び信号処理を含むマルチメディア・サービス及びアプリケーション関連) (16ページ) ITU-T SG16活動紹介(アクセシビリティ) ■アクセシビリティ・ガイドラインの検討・作成  −電気通信機器・サービスの提供者が企画・開発・設計・提供等を行う際に配慮すべき事項を 勧告化(F.790)。 ■アクセシビリティ・チェックリストの検討・作成  −ITU-Tで策定される勧告にアクセシビリティの考え方を導入していくため、勧告作成者向けのチェックリストをTechnical Paperとして作成。 ■その他関連技術に係る勧告の検討・作成  −電気通信アクセシビリティを確保に資する技術等について、各種の勧告を策定。例:V.18 (Text Telephone の通信プロトコル)等 ■ITU-Tにおける関連SGとの連携  −次世代ネットワーク(NGN)、ホームネットワーク、IPTVなど、新たな技術分野におけるアクセシビリティ確保を図るため、各分野を担当するSGとの連携を促進。 (17ページ) 国際標準化に向けた取組体制(国内) ■情報通信アクセス協議会に「電気通信アクセシビリティ国際提案等対応検討委員会」を設置 ■上記委員会を中心にガイドライン案を作成・提案 (18ページ) ITU-T SG16会合での審議経過 (平成16年11月 SG16第1回会合) 日本提案として電気通信アクセシビリティガイドラインの策定について提案。 各国の賛同を得て、具体的な検討を開始。 (平成18年11月 SG16第4回会合) 電気通信アクセシビリティガイドラインの勧告案合意 (19ページ) ガイドライン(F.790)の勧告化 (ガイドライン(F.790)の勧告化に関する新聞記事) (20ページ) ガイドライン(F.790)の概要 ■勧告名 Telecommunications accessibility guidelines for older persons and persons with disabilities (高齢者・障害者に対する電気通信アクセシビリティガイドライン) ■目的 ICTの急速な進展を受け、高齢者や障害者のICT利用機会も増えていることから、障害や心身の機能の状態に かかわらず、利用者が電気通信機器・サービスを円滑に利用できるよう、電気通信機器・サービスの提供者が 電気通信機器・サービスの企画・開発・設計・提供等を行う際に配慮すべき事項を示す。 (参考)勧告の閲覧:http://www.itu.int/rec/T-REC-F.790/en (21ページ) ガイドライン(F.790)の構成 Introduction  1.Scope  2.References  3.Definitions  4.Abbreviations  5.Conventions  6.General principles  7.Requirements for planning, development, and design  8.Common requirements for operation and usage of telecommunications equipment and services  9.Requirements for terminal equipment 10.Requirements for telecommunications services 11.Requirements for user supportAppendixT-Further details of informative references 序文  1.適用範囲  2.参照  3.定義  4.略語  5.慣例  6.一般原則  7.企画・開発・設計に関する要件 8.電気通信機器・サービスの操作・利用に関する要件  9.電気通信機器に関する個別の 要件 10.電気通信サービスに関する個別の要件 11.ユーザーサポートに関する要件 付属書T:参照情報の詳細 (22ページ) ガイドライン( F.790 )の主なポイント 1.適用範囲 高齢者や障害のある人々及び一時的な障害者のある人々等のアクセシビリティ確保のために、 電気通信機器・サービスの企画・開発・設計・提供等に関するガイドライン 6.一般原則 ■電気通信機器・サービスを企画・開発・提供するときには、可能な限り高齢者・障害者が利用できるようにする。 −“inclusive design” の概念(ひとつのデザインでより多くの人々を包括 していくという考え方) ■電気通信機器・サービスが単独で電気通信アクセシビリティを確保できない場合、オプション製品や支援技術と 組み合わせて利用することにより、アクセシビリティを確保できるようにする。 (23ページ) ガイドライン( F.790 )の主なポイント 7.企画・開発・設計に関する要件 ■人間中心設計プロセス(ISO13407)の考え方を導入 −電気通信機器・サービスの開発プロセスの中で、対象とする利用者に高齢者・障害者を含め、その利用状況や 要求事項等を把握。 「電気通信アクセシビリティのための人間中心設計活動(ISO13407に基づく)」の図 (24ページ) ガイドライン( F.790 )の主なポイント 8.電気通信機器・サービスの操作・利用に関する要件 ■操作 −容易性:可能な限り容易に操作できる −操作確認:複数の感覚能力(視覚、聴覚、触覚) −誤動作:誤動作の取消、操作起点への復帰 等 ■設置・接続・設定:高齢者・障害者自身で出来ることが望ましい。 ■安全性、情報セキュリティ −操作中に利用者に危害を与えたり、健康へ悪影響を与えないようにする。 −情報セキュリティを確保したアクセシブルな操作方法を提供する。 (25ページ) ガイドライン( F.790 )の主なポイント 9.電気通信機器に関する個別の要件 ■操作部レイアウト:利用者の思考や操作手順に沿った配置 ■操作キー、ボタン、スイッチ:視覚、聴覚、触覚での識別・確認等 ■表示装置:読みやすい文字、色覚特性に依存しないコンテンツ、代替手段の提供(視覚以外でも情報を取得できる。) ■着信音、報知音、音声ガイダンス:聞きやすい音量、代替手段の提供(聴覚以外でも情報を取得できる。) ■用語、アイコン、図記号:見やすい文字、理解しやすい表記 (26ページ) ガイドライン( F.790 )の主なポイント 10.電気通信サービスに関する個別の要件 ■双方向電気通信サービス −リアルタイム性:遅延がないか、もしくはコミュニケーションに支障がない程度であること。 −マルチメディア:テキスト、音声、動画等を組み合わせた双方向通信の提供 −互換性:異なる事業者や機器同士でのテキスト、音声、動画等による通信の提供 −メディア変換:音声からテキスト、テキストから音声などのメディア変換の提供 ■高齢者・障害者支援技術の開発や普及促進のため、電気通信サービスの企画・開発・設計においては、 可能な限り標準化された規格を用いる。独自の規格を用いる場合も、可能な限りその仕様を公開。 (27ページ) ガイドライン( F.790 )の主なポイント 11.ユーザーサポートに関する要件 ■マニュアル、サポート窓口等においては障害に応じて複数の手段を用意 ■電気通信アクセシビリティに関する情報公開は、できる限り多くの製品に対して、アクセシブルな方法で 実施すべき。 (28ページ) 電気通信アクセシビリティに配慮した機器の具体例(展示ブースのご紹介) (29ページ) アクセシブルな機器・サービスの実例 ■(株)NTTドコモ FOMA らくらくホンIII 「FOMA F882iES」 大きな画面・大きな文字等による「見やすさ」、 ノイズキャンセル等による「聞きやすさ」、音声読み上げの 充実等。ワンタッチアラーム連動自動電話発信や拡大鏡の新機能の搭載。 2画面ケータイ「FOMA D800iDS」 通常の携帯電話のキー部分に「タッチパネルディスプレイ」を採用して、2画面にすることで、表示される ボタンの大きさ、形、数が柔軟になり、使いやすい操作画面から入力を行うことが可能。 (30ページ) アクセシブルな機器・サービスの実例 ■(株)プラスヴォイス 代理電話サービス 聴覚障害者が電話で相手に連絡 したい時、代理電話センターにテレビ電話やFAX・メール等で内容を 伝えることにより、オペレーターが代わりに、電話をかけたい相手に音声電話をかける。 (31ページ) アクセシブルな機器・サービスの実例 ■(株)ユニコム ファクシミリ転送サービス「伝助くん」 現在利用しているファクシミリから、携帯電話に書面を転送。 高齢者や聴覚障害者がインターネットを意識しないで自宅のファクシミリから、出先の知人などの 携帯電話に急用な連絡を取ることが可能。 (32ページ) アクセシブルな機器・サービスの実例 ■三洋電機(株) 骨伝導電話機「TEL-KU2」「TEL-KU3」「TEL-SKU2」 ・受話器の振動部を耳や耳のまわり・頭部などにあてると、骨の振動で音声が伝わり、相手の声を 明瞭に聞き取ることができる。 ・相手の声の高さを変えずに、速度だけを変換できる技術「ゆっくり通話」機能を搭載。 相手の話す音声速度を約0.75倍に変換でき、聞き取りやすい快適な通話が実現。 (33ページ) アクセシブルな機器・サービスの実例 ■東日本電信電話(株)・西日本電信電話(株) シルバーホン あんしんSV 緊急ボタンを押すだけで、あらかじめ登録した連絡先に通報することができる簡易型緊急通報装置。 また、ハンドフリー通話機能等も搭載。 シルバーホン ふれあいS オプションの制御スイッチや呼気 スイッチを接続することにより、手を使わずにダイヤル可能。 また、すべてのボタンが本体表面より窪んでいるため、視覚に頼らず操作可能。 (34ページ) 今後に向けて ■提供者側の意識醸成、ガイドライン等を踏まえたアクセシブルな機器・サービスの開発・提供へ ■高齢者・障害者を含め多様な人々を対象とすることによりユーザー層を拡大 ■高齢者社会への対応、加齢による障害をもつ高齢者への配慮 ■機器・サービスのアクセシビリティ適合性評価等の検討 高齢者・障害者を含め、あらゆる人々が電気通信機器やサービスを利用できる社会へ