これは、基調講演の講演資料、表紙から20ページ目までをテキスト化したものです。

(表紙)
総務省「平成19年3月26日(月) 電気通信アクセシビリティ・シンポジウム」
デジタル・ディバイドのないICT社会の実現に向けて
総務省大臣官房審議官
勝野 龍平

(1ページ)
1.我が国のICT戦略の動向

(2ページ)
我が国のICT戦略の歩み
2001年から2010年までの総務省の情報通信政策とu-Japan政策について
e-Japan戦略(2001年1月)IT基盤整備
e-Japan戦略Ⅱ(2003年7月)IT利用・活用重視
戦略Ⅱ加速化パッケージ(2004年2月)
IT政策パッケージ(2005年2月)
IT新改革戦略(2006年1月)

(3ページ)
ICT産業と経済成長
情報通信産業が成長することによる国民経済への貢献は大(実質GDP成長に対する寄与率は40%)
企業がユビキタス技術を活用し、かつ、組織改革を行うことで、生産性は約2倍向上する(=競争力の強化)。
一方、ICT投資のGDP比率は国際的な平均よりも小さい

(4ページ)
ネットワークインフラの現状
我が国は世界で最も高速で低廉なネットワークインフラを実現
高速インターネットの利用料金・加入者数
利用料金:約1/3に
加入者数:約27.4倍に
携帯電話のインターネット対応率(2004年9月現在)
※各国の主要な事業者における携帯電話契約数に占める
携帯電話インターネット契約数の比率
ブロードバンド料金と通信速度
日本、韓国は他国と比べて、高速度低料金を実現しているのがわかる

(5ページ)
世界における日本のICT分野の状況 (電子政府・教育・医療・雇用等)
(電子政府準備度指数(日本))
2002年:26位から2005年:14位
【国連「電子政府準備度報告」】
(以下は校内LAN整備率を表すグラフ)
日本:50.6%
米国:93%
韓国:100%
(レセプト(診療報酬請求)の電子化)
○韓国 (2005時点)
・オンライン 93.5%(推計値)
・磁気媒体   6.5%(推計値)
○日本(2006.7時点)
・オンライン  0.0%
・病院の電算処理システム導入率28.2%
韓国:総務省「医療分野における情報化促進のための国内外の実態調査報告書
 -レセプトオンライン化に関する韓国実態調査-」(平成18年3月)
日本:厚生労働省他資料より作成
(以下はコンテンツ産業規模を比較する表)
日本:コンテンツ規模(915.7億ドル)、GDP(4.6兆ドル)、コンテンツ/GDP(1.9%)
アメリカ:コンテンツ規模(5,247.7億ドル)、GDP(11.7兆ドル)、コンテンツ/GDP(4.5%)
世界:コンテンツ規模(1.25兆ドル)、GDP(40.9兆ドル)、コンテンツ/GDP(3.05%)
(従業員300人以上の企業におけるテレワーク実施比率)
○アメリカ 68.9%
○オランダ 26.4%
○フィンランド 21.8%
○韓国 21.2%
○スウェーデン 18.7%
○イギリス 17.3%
○ドイツ 16.3%
○日本 14.7%
(出典)総務省「平成17年版情報通信白書」

(6ページ)
ICT産業の国際競争力
次世代携帯電話、光通信、情報家電等については、我が国の技術・製品に強み
一方で、携帯電話、パソコン関連、ソフトウェア関連の競争力は弱い
我が国が優位性を有する技術分野をに強化
↓
国際競争力強化

(7ページ)
ユビキタスネット社会への課題
インターネット利用上の不安・不満は大きい
・個人情報の保護に不安がある
・ウィルスの感染が心配である など
対策:個人情報保護、情報セキュリティ対策など安心・安全な利用環境を整備
地理的情報格差(デジタル・ディバイド)が残存
<ブロードバンド全体>
未整備世帯(ブロードバンド・ゼロ地域)306万世帯(6%)
未整備市町村(ブロードバンド・ゼロ市町村)40団体(2%)
<光ファイバ>
未提供市町村 857団体(47%)
※市町村数1,843団体、約5000万世帯(2006年3月)
対策:2010年度までにブロードバンド・ゼロ地域を解消するための取組を実施

(8ページ)
u-Japan政策について
理念:u-Japanは、次の特質を備えた2010年の次世代ICT社会
概要:2010年には世界最先端の「ICT国家」として先導
(目標(2010年))
・2010年までに国民の100%が高速または超高速を利用可能な社会に
・2010年までに国民の80%がICTは課題解決に役立つと評価する社会に
・2010年までに国民の80%がICTに安心感を得られる社会に
(u-Japan政策パッケージ)
① ユビキタスネットワーク整備
有線・無線のシームレスなアクセス環境の整備ブロードバンド基盤の全国的整備 等
② ICT利活用の高度化
コンテンツの創造・流通・利用促進ユニバーサルデザインの導入促進 等
③ 利用環境整備
ICT安心・安全21戦略の推進ユビキタスネット社会憲章の制定 等
④ 技術戦略
重点分野の研究開発や標準化を戦略的に推進するとともに、イノベーションを促し、
国際競争力を高める
⑤ 国際戦略
国際的な市場やネットワークを視野に入れた政策を推進、アジア・ブロードバンド計画
を推進
(現状(2005年))
・およそ1割の自治体においてブロードバンドサービスが未提供であり、地域間格差が存在
・45%の利用者がICTが問題解決に役立つと評価
・利用者の約3分の1が、インターネット利用に不安感

(9ページ)
世界を先導するユビキタスネット社会の実現
「u-Japan政策」の展開-通信・放送の融合・連携の推進
・「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークにつながるユビキタスネット社会を実現
・ICTによって少子高齢化をはじめとする社会的課題を克服=課題解決型のICT利活用
平成19年度において重点的な取組を行う分野
(成長力・競争力・ソフトパワーの強化)
我が国の強み(ユビキタスネット社会)に資源配分を集中することで、経済成長に寄与する
とともに、国際競争力の強化を図る
(安心・安全なユビキタスネット社会の実現)
情報セキュリティ対策を強化し、ICTの安心・安全をICTによる安心・安全につなげる
(総合的な施策の推進)
・通信・放送の融合・連携の推進
・2011年「完全デジタル元年」に向けた取組み
・技術戦略の推進
・国際戦略の推進等
・ユビキタス利活用モデルの定着

(10ページ)
ブロードバンド環境の整備について
○ユビキタスネット社会実現に向け、世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境等の整備
 -ブロードバンド無線アクセス、UWB、PLCのような新たな電波利用システム等の実現推進
○FMC、電子タグ・システム等の推進
○2011年の「完全デジタル元年」に向けた取組として、地理的デジタル・ディバイドの是正
 や放送のデジタル化を推進

(11ページ)
ICT国際競争力懇談会「中間とりまとめ」ポイント
平成18年10月に第1回懇談会を開催
平成19年1月を目途に中間とりまとめ、4月を目途に最終とりまとめ
「ICT国際競争力強化プログラム」を策定
(現状)
日本の主要メーカーの売上高を全て合計しても、海外主要メーカー1社の売上高に及ばない。
(国際競争力低下の要因)
①1990年代以降、日本企業は国内市場に偏重した活動
②ネットワーク化への対応が出来ていない
③トータルな戦略性・政策の欠如と韓国等の台頭
(対応策)
基本戦略の策定(危機意識の共有化、産学官あげての取り組み)
 ①国内の通信・放送分野の改革を通じた国際競争力強化
 ②可視化でき、官民で共有できる基本シナリオ
  (政府による支援の拡充、新たな官民連携、民民の連携強化)
 ③日本の強みを生かす戦略(集中と選択)
 ④Win-Winの関係の構築(国内と国際、我が国と対象国)
 ※重点3分野について基本戦略策定
  ((1)次世代IPネットワーク、(2)ワイヤレス、(3)デジタル放送)
(政府として)
①今後2年間を「ICT国際競争力強化年間」と位置づけ、2011年までにICT産業の国際競争力強化を実現
②ICT国際競争力強化プログラム」の策定、実施

(12ページ)
2.高齢者・障害者におけるICT利活用と 総務省の取組について

(13ページ)
高齢者におけるICT利活用の状況
高齢者のインターネット利用率に着目すると、60歳以上の世代と他の世代の利用率の差は依然顕著。
インターネットを利用しない理由としては、「利用する必要がない」、「操作が難しい」が多数。

(14ページ)
障害者におけるICT利活用の状況
内閣府の調査によれば、障害者のインターネット利用率は46.4%となっており、
国内全体の利用率(74.9%)と比較すると依然大きな格差がある。
さらに利用者の半数は「利用して困ったことがある」と回答。

(15ページ)
高齢者・障害者のICT利活用の重要性
「近年の急速な技術進歩、社会のICT化の進展」や
「ユニバーサルデザイン化されたICT社会の実現=情報バリアフリーの実現」により
高齢者や障害者も含め 誰でもICT機器やサービスを利用できるようになる
→高齢者・障害者の新たな社会参加の可能性

(16ページ)
総務省における取組の方向性
ユニバーサルデザインをベースとし、さらに、高齢者や障害者が持つ個別の特性やニーズに対応する
個別支援を補完的に組み合わせることにより、利用者それぞれに合わせたICT利活用を推進

(17ページ)
電気通信アクセシビリティガイドラインの国際標準化
ITU-T(※1)において日本提案により審議が進められてきた電気通信アクセシビリティガイドラインが、
平成19年1月にITU-Tの勧告として承認 

(18ページ)
高齢者・障害者向け通信・放送サービス充実研究開発助成
高齢者・障害者の利便の増進に資する通信・放送サービスの開発を行うための通信・放送技術の研究開発を
行う者に対する助成を、独立行政法人情報通信研究機構を通じて実施。(助成率(上限):1/2)

(19ページ)
身体障害者向け通信・放送役務の提供、開発等の推進
身体障害者向け通信・放送役務の提供又は開発を行う者に対する助成を、独立行政法人情報通信研究機構を通じて実施。
(助成率(上限):1/2)

(20ページ)
さいごに
(私たちが目指す社会)
2010年を目途として、我が国が「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」つながる
ネットワーク社会となることを目指す(u-Japan政策)
年齢や身体的な条件に関わりなく誰もがICTの利活用を通じて社会参加できる社会の実現が重要
(そのために今必要なのは・・・)
行政による高齢者・障害者に向けた施策だけでなく、日本社会の全てが高齢者・障害者の社会参加を促進するために
関わっているということを理解し、これに取り組むことが重要