「障害者等電気通信設備アクセシビリティガイドライン」                  第1版 −解説−                 第二部:個別機能編                               電気通信アクセス協議会                                平成13年5月8日 第1 障害にかかわらず入力を可能にするための機能 1-1 視覚に頼らないで入力を行えること 1-2 色の識別を必要としないで入力を行えること 1-3 聴覚に頼らないで入力を行えること 1-4 限られた運動機能により入力を行えること 1-5 義肢により入力を行えること 1-6 時間制限を設けないで入力を行えること 1-7 発話に頼らないで入力を行えること 【解説】  障害者等が通信を行う場合、障害を持っているがために、電気通信設備の入力操作を困難 と感じる場合がある。しかし、原則として障害のある人でも身体の一部分を動かせれば、 その動きを感知することで情報通信機器の操作は可能である(one key operation)。そこで、 電気通信設備の入力操作について、個々の障害に配慮した機能を示し、その機能を有する ことにより、操作を行う者が障害を有している場合でも、その機能を利用することによって 容易に入力可能な電気通信設備とすることを目指したものが本項目である。  ここで言う入力とは、電気通信を行うために必要な信号(接続先相手番号等)、コマンド、 情報(音声、文字、画像)等の入力を示している。  以下、項目1-1から1-7について解説する。 1-1 視覚に頼らないで入力を行えること  視覚障害者は、目で見なければならない操作は行えない。本項を実現するための手段 として次のような方法が考えられる。 (1) 操作時に適切な電子音を発することによって、可視表示器が見えなくても操作を行える   ようにする。   例えば次のような方法が考えられる。   A.音声ガイダンスにより可視表示器を見なくても操作を可能とする。   B.押下したキー、ボタン等に応じて、該当のキー、ボタン等の名称、機能、動作等を     音声で表示する。 (2) キー、ボタン等のタッチ基準点に突起マークを付けたり、大きいキーに突起物を   張り付けるなど、キーそのものに触覚表示を備え付ける。例えば次のような方法が   考えられる。   A.発信、通話終了のキー、ボタン等に識別しやすい突起あるいは彫り込み等を施す。    (注1)突起の大きさ等については、JIS-S 0002-1-2000(消費生活商品における        凸記号表示に関する指針)で規定されている。    (注2)ダイヤル「5」のボタンに突起を付けることは既に幅広く適用されており、        この機能を具備していることのみで本機能を満足していると評価することは        慎むべきである。(これは「5」に突起をつけることが意味のないことと        いっているものではなく、どの商品も一般的に具備している機能等のみを        もってアクセシビリティを考慮した商品とすることによって利用者が商品を        選択する際に不要な混乱<紛らわしさ>を招かないようにすることに配意        したものである。) (3) 一つ一つのキー、ボタン等を分離したり、キーボードが平面の場合、キーの周りの端を   突き出させたりして、位置をわかりやすくする。 (4) 接続の方向をわかりやすくするため、接続部には識別しやすい突起あるいは彫り込み   などを施す。 (5) 誤ったキー、ボタン等の入力に対応するため、全ての操作は取り消し可能   (ESCキー等)にする。取り消しが不可能な操作がある場合は、利用者に対して   取り消しが不可能な操作である旨を通知するか、特別なキー操作等により初期入力状態   に戻す機能を設ける。 1-2 色の識別を必要としないで入力を行えること  色弱の人等、色の組合わせを識別できない人(或いは識別が困難な人)のため、色の識別 をしなくても電気通信設備を操作できるようにすることが望ましい。そのため、入力操作の 際に画面表示を目で確認する必要のあるものについては、以下のような方法が考えられる。 (1) 操作にかかわる部分(キー、ボタン、表示器など)には、赤と緑の色のみによって   ボタン等を区別することは避ける。 (2) 白黒画面でも区別できるように、色合いや明暗が異なる色を使用する。 (3) 操作に関わる部分(キー、ボタン、表示器など)には、低彩度、低明度の色の使用を   避ける。 (4) 利用者が視覚能力に合わせて色を調節できる機能を提供する。   (注1)単に、「赤と緑の組合わせを使っていない」、あるいは、「白黒画面を使用       している」ということのみで、本機能を満足しているとは言うべきでない。 1-3 聴覚に頼らないで入力を行えること  聴覚障害者は、音声による入力指示や音声ベースでの対話方式により操作しなければなら ないような通信を行うことはできない。このため、聴覚に頼らなくても入力が行えることが 望ましい。「第2 障害にかかわらず出力結果の利用を可能とするための機能」を満たす ことは、本項に関する問題の解決にも役立つものである。具体的な実現手段として、 以下のような方法が考えられる。 (1) 筆画通信機能を提供する。 (2) 聴覚的な案内情報の提供については、その有無や内容を、絵や図形、表示器等の点滅   などの視覚情報として提供する。 (3) 入力手順の操作ガイダンスを、LCDなどで視覚的に表示する。 1-4 限られた運動機能により入力を行えること  一定の範囲でしか手を動かせなかったり、手が震えたり、握力がほとんどないなど身体の 運動機能面で様々な障害を持っている人でも入力が行えるような配慮をすることが重要で ある。このような障害を持っている人は、受話器を握ったり、ボリューム調整ボタンを つまんだり、ねじったりする動作、複数のキーや、ボタンを同時押下する動作などが困難 であるため、このような動作が必要な操作は避けることが望ましい。具体的な実現手段 として、以下のようなものが考えられる。 (1) 手が使えなくても電話に出られるようにする。   A.設定した回数の呼出を行った後に、自動的にハンズフリー通話状態になる。   B.「はい」などの音声を認識し、自動的にハンズフリー通話状態になる。 (2) 複数のボタンの同時打鍵や、ボタンを押す時間の長短によることなく全ての機能を利用   できるようにする。 (3) 電話番号、アドレスなどをワンタッチキーに登録できるようにする。 (4) 入力ペンなどの道具を使わないで、キーボードやスイッチだけで、基本的な操作を可能   とする。 (5) 音声認識による入力機能を付加する。 (6) キー、ボタンなどを大きめにしたり、キー、ボタン等の間隙を広くすることにより、   利用者が誤って隣のキーやボタンを押さないようにする。 (7) 不注意でキー、ボタン等を押下する可能性・頻度が高い場合を想定して、キー、ボタン   等を押下してから対応した動作の開始までの反応時間を調整可能とする。 (8) タッチパネルなどのように人間の皮膚の接触を要求する入力方式の場合は、キーや   ボタン等による入力方式も併せて提供する。 (9) 固定して使用するための金具や、標準的なネジ穴(カメラの三脚などに取り付けるため   のもの)を用意する。 (10)タッチパネルを備えている機器に関しては、タッチパネルの入力感度の調整を可能とする。 1-5 義肢により入力が行えること  義肢を付けている人が入力操作を行う際には、さまざまな困難がある。このような人が入力 を行えるようにするためには、以下のような手段が考えられる。 (1) タッチパネルなど、人間の皮膚の接触を要求する入力方式の場合は、キーや、ボタン等   による入力方式も併せて提供する。 (2) ボリューム調整などつまんだり、ねじったりする動作が必要なものについては、単純な   動作により入力可能な代替方式を提供する。 (3) 義肢による入力がし易い、大型で頑丈なキー、ボタンで構成された専用キーボードが   接続できるインタフェースを設ける。 1-6 時間制限を設けないで入力を行えること  障害者等の中には、電話番号、アドレスの入力などの動作に時間がかかる人も見られる。 このように入力動作の遅い人のために、入力中に制限時間が訪れ、入力が無効になったり、 通信断になったりすることのないような配慮をすることが重要である。そのためには以下の ような実現手段が考えられる。 (1) 利用者が応答時間や入力完了時間を任意に設定できるようにする。 (2) 制限時間が近づいていることを利用者に警告し、延長できるようにする。 1-7 発話に頼らないで入力を行えること  話すことができない人や明瞭に話せない人は、口頭による個人認証など音声入力を しなければならない電気通信は行うことができない。  このような機能を組み込んである電気通信設備には、代替入力方法を用意することが 望ましい。たとえば以下のような手段が考えられる。 (1) 発話で入力を行う場面での代替手段として、キーボード、マウス、手書き文字等により   各種入力を可能とする。 第2 障害にかかわらず入力結果の利用を可能にするための機能  電気通信設備には、その利用に必要な情報の出力及び表示に関し、視覚や聴覚に制限を 受ける者の利用に配慮することが重要であり、次のような機能を有することが望ましい。 2-1 視覚的な情報を視覚に頼らないで利用できること    (視覚に障害がある場合でも、視覚的な情報を利用しやすくなるよう工夫されている     こと) 2-2 動画方式の情報を静止させることができること 2-3 聴覚的な情報を聴覚に頼らないで利用できること    (聴覚に障害がある場合でも、聴覚的な情報を利用しやすくするよう工夫されている     こと) 【解説】  障害者等が通信を行う場合、障害を持っているために電気通信設備を利用するのに必要な 情報の出力及び表示される内容の把握が困難な場合がある。そこで、そのような出力及び 表示に関して、障害にかかわらず誰でも把握し、利用できるような機能を示したものが 本項目である。  以下、項目2-1から2-3について解説する。 2-1 視覚的な情報を視覚に頼らないで利用できること   (視覚に障害がある場合でも視覚的な情報を利用しやすくするよう工夫されていること)  視覚障害者は、パソコン通信などの画面に表示される情報を認知することができない (または困難である)。このため、できる限り音声等によっても情報を提供できるようにする ことが望ましい。その手段としては次のような方法が考えられる。 (1) 視覚に頼らずに、電話、文字メールの着信を確認できる。   例えば次のような方法が考えられる。   A.機能の異なる着信に応じて、異なる着信音が鳴動する。   B.機能の異なる着信に応じて、着信バイブレータの振動パターンを変化させることが     できる。 (2) 表示が見えなくても利用できる発信者番号表示機能を備えている。例えば次のような   方法が考えられる。   A.電話帳に登録してある電話番号と、発信者の電話番号が一致した場合、相手の名前     を読み上げる。また、電話帳に登録されていない相手の場合は、電話番号を     読み上げる。 (3) 視力が弱い場合でも見やすくするために、表示器の電話番号を拡大表示する。   例えば次のような方法が考えられる。   A.発信時及び着信時に電話番号を表示器に拡大して表示する。   B.ディスプレイ表示文字の倍角設定や、表示内容の拡大設定を可能とする。 (4) 見えない場合でも、紙詰り、紙切れ、送信トラブルなどを把握できる。例えば次の   ような方法が考えられる。   A.音声ガイダンス、あるいはエラー音で知らせる。 (5) 絵や図形などにより表現される情報は、音声に変換可能な文字情報あるいは音声による   説明を付加する。 (6) 点字による出力を可能とする。 (7) 見えない場合でも、ネットワークや通信相手との接続の過程などの状態を把握する手段   を提供する。 2-2 動画方式の情報を静止させることができること  障害者等にとっては、画面上を文字が動くような動画方式の情報を認識することが困難な 場合がある。このため、通信を行う際に必要な情報が動画方式で提供される場合には、その 情報を静止させて把握できるようにすることが望ましい。そのためには、以下のような方法 が考えられる。 (1) 文字の情報が動いているときに、一時的に止めてゆっくり読めるようにする。 (2) 1行単位で文字情報を表示し、読み終わってから次の行に移れるようにする。 2-3 聴覚的な情報を聴覚に頼らないで利用できること   (聴覚に障害がある場合でも、聴覚的な情報を利用しやすくするよう工夫されている    こと。)  聴覚障害者は、ファクシミリのエラー時の警告音や電話の着信音など音による出力情報を 聞くことができないが、これらは通信を行う上で重要な情報である。こうした情報を聴覚に 頼らずに利用できるようにするためには、以下の方法が考えられる。 (1) 聴覚に頼らずに、電話、文字メールの着信を知らせる。   例えば次のような方法が考えられる。   A.着信時、可視表示器の点灯・点滅により、着信を知らせる。   B.機能の異なる着信に応じて、着信バイプレータの振動パターンを変化させる。 (2) ヘッドセット用、または、補聴器用の音声出力が可能な端子を用意する。 (3) 補聴器に電磁ノイズを与えないよう対策を施す。 (4) 音声出力に拡声機能を設ける。   例えば次のような方法が考えられる。   A.ハンズフリー通話でスピーカ音量を段階的に調整する。    (注1)ハンズフリーにおけるスピーカ音量の可変幅は、15dB以上であることが        望ましい。ただし、子機は対象外とする。 (5) 磁気誘導コイル付補聴器に対応可能な受話器を備えている。 (6) 聞こえなくても、紙詰り、紙切れ、送信トラブルなどが把握できる。   例えば次のような方法が考えられる。   A.可視表示器を利用して知らせる。 (7) 聞こえない場合でも、ネットワークや通信相手との接続の過程などの応対を把握する   手段を提供する。   例えば次のような方法が考えられる。   A.回線状態(呼出中、通信確立中、話中などの状態)を可視表示する。 第3 その他障害にかかわらず電気通信設備の操作を容易に行えるための機能  電気通信設備は、障害者等がその操作を容易に行うために、次のような機能を有すること が望ましい。 3-1 入出力操作に必要な入力キー、ボタン等の位置が容易に確認できること 3-2 基本的な通信環境の設定を一の入出力操作で行えること 3-3 操作中にいつでも初期状態又は任意の状態に戻すことができること 3-4 ネットワークや通信相手との接続の過程を表示することができること 3-5 少なくとも一の特手の相手先へは一の入出力操作で接続が行えること 3-6 一度入力した接続先相手番号、接続相手アドレス等の接続に必要な相手先の情報を登録    し又は再利用できること 3-7 ユーザインターフェースのカスタム化が可能であること 3-8 電気通信設備の入出力は、複数の方式で行うことができ、かつ、入出力の際には任意の    方式が選択できること 【解説】  本項は、障害者等が電気通信設備の操作を容易に行うための機能を示すものである。  ここでいう操作とは、通信を行うために必要な操作を対象としており、直接通信の実行 とは関係のない操作、例えば、端末の持ち運び操作であるとか、電池の挿入操作等については 考慮していない。  以下、項目3-1から3-8について解説する。 3-1 入出力操作に必要な入力キー、ボタン等の位置が容易に確認できること  パソコン端末の電源ボタンやリセットキーの位置を苦労して探すと言った事例は時々 見られる。通信を行うために必要なキーやボタンの位置は、容易に確認できるよう設計の 際に使用方法、使用頻度に応じ、レイアウト面で配慮することが重要である。  なお、通信の実行中に誤って触れることでエラーや通信断につながるキー、ボタン等も あるので、設計に当たっては、単にわかりやすい位置にレイアウトすると言うことだけで なく、誤動作防止への配慮と両立することが重要である。  特に、視覚障害者や肢体不自由者は、意図しないキーに誤って触れる可能性が高いため、 注意が必要である。 3-2 基本的な通信環境の設定を一の入出力操作で行えること  パソコン通信などの初期設定時には、利用者の使用している端末の機種やOSなどに 応じて、通信速度、回線種別、モデム設定等の通信環境を個別に設定する必要がある。 しかし、複雑な設定を煩わしいと思う人は多く、特に知的障害者等にとっては設定行為自体が アクセスへの障壁となりうることも考えられる。そこで、少なくとも基本的な通信環境に ついては、一つの入出力操作で行えるような機能を備えていることが望ましい。具体的には、 カーソル移動による画面上での場所の指定、マウスクリックなどの簡単な動作による設定が 考えられる。  その他、以下のような手段も有効である。 (1) 接続に必要な環境設定を誘導するプログラムを提供する。 (2) 利用者側の操作に任せるのではなく、ネットワーク側(通信事業側)からの遠隔操作に   より、端末を自動設定できる。 3-3 操作中にいつでも初期状態又は任意の状態に戻すことができること  ネットワーク接続中に、誤った操作により予期しない状態に陥って、元の状態に戻れず、 通信を中断せざるを得ない場合がある。このような問題を解決するためには、操作中に いつでも初期状態または任意の状態に戻せる機能を備えることが望ましい。  実現手段としては、リセット機能、バック機能、ジャンプ機能等をハードウェア又は ソフトウェアにより提供することが考えられる。  その他、以下のような手段も有効である。 (1) すべての操作を無効とするボタンと、直前の入力操作のみを無効とするボタンを提供する。 3-4 ネットワークや通信相手との接続の過程を表示することができること  ファクシミリ送信時、パソコン通信実行時等に通信相手との接続がスムーズにいかない 場合や、時間のかかる場合がある。また、ネットワーク上で大きなファイルのダウンロードを するときには、特に時間を要することが多い。このような場合に、通信が確実に実行されて いるのか、今どの過程にあるのか等を操作する者が把握できないと困ることがある。 「ネットワークに接続中」、「相手を呼出中」、「接続完了」等のメッセージを画面表示したり、 表示部の光の点滅により知らせたり、音声で伝えたりすることが解決手段として有効である。  具体的には次のような機能が考えられる。 (1) 見えない場合でも回線の状態を把握する手段を提供する。 (2) 聞こえない場合でも回線の状態を把握する手段を提供する。   例えば,次の方法が考えれる。   A.回線状態(呼出中、通信確立中、話中などの状態)を、可視表示する。 3-5 少なくとも一の特定の相手先へは一の入出力操作で接続が行えること  何度も通信のやりとりをする相手先に接続する場合、一から接続の操作を行うことは、 利用者にとって手間であり、時間がかかる。また、緊急時に迅速に連絡すべき相手と通信を 行う場合は、単純な操作で短時間に接続できることが望ましい。  このため、少なくとも一つの相手先へは一つの入出力操作で接続できる機能を有している ことが望ましい。  例えば、特定の相手先をアイコンやボタンに登録しておき、通信を行う度毎に相手の アドレス、番号等を入力しなくても、マウスクリック、ボタン押下等の単純な操作により、 アクセスすることなどが考えられる。  具体的には次のような機能が考えられる。 (1) 非常警報ボタン、ワンタッチボタンのように、単一の操作で、あらかじめ登録された相手   への通信が開始される。 3-6 一度入力した接続相手番号、接続相手アドレス等の接続に必要な相手先の情報を登録し    又は再利用できること  長い桁数の電話番号の入力や電子メール送信時の相手アドレスの入力等は、障害者等にと って、容易な操作ではない。そこで、通信を行う度毎に同じ手間をかける必要のないように、 一度入力した番号、アドレス等は登録し、容易に再利用できるような機能を有することが 望ましい。  再利用を容易に行えるようにするには、登録した情報の目的別並べ替え、検索等が行える ようにすることが望ましい。  また、直前に通信した相手との通信頻度の多さを考慮すると、このような通信相手を優先 登録する機能の付加も有効である。  具体的には次のような機能が考えられる。 (1) 直前に通信した相手の電話番号やアドレスなどを、再度全ての情報を入力することなく、   簡単かつ明瞭な操作手段によって、メモリーに登録することを可能とし、それを使って   発信を可能とする。 3-7 ユーザインターフェースのカスタム化が可能であること  電気通信設備のユーザインターフェースについては、利用者の特性や電気通信設備を使用 する状況に応じて、利用者が使いやすいようにカスタム化(利用者の特性や電気通信設備を 使用する状況に応じて、使いやすいようにすること)できることが望ましい。例えば、 キーボード等多数のキーやボタンが配列されたインターフェースの場合、タッチパネルにより 自由な操作ボタンの配置とする機能を併せ持つことなどが有効である。  具体的には次のような機能が考えられる。 (1) 利用者の設定により、タッチパネル上のボタンの配置を自由に設定可能とする。 (2) LCDを用いている場合には、視野角調整を可能とする(車椅子、ベッドなどからの操作   を想定して調整範囲を十分に広く取れること) 3-8  電気通信設備の入出力は、複数の方式で行うことができ、かつ、入出力の際に任意の 方式が選択できること  障害者等にとっては、障害の種類や程度によって、利用できる入出力の方式が異なる。 このため、入出力のために複数の方式を製品に組み込むことと、各方式を利用者が自分の特性 や使用する状況に応じて容易に選択できることが望ましい。製品に組み込む入出力方式と しては、以下のような方法が考えられる。 (1) 利用者の設定により、複数の入出力手段の中からの選択を可能とする。  なお、ここでの入出力手段とは、キーボード、マウス、タッチパネル、マイク、スピーカ などである。 第4 補聴器等コミュニケーション支援設備との接続性の確保  電気通信設備が第二部に掲げる個別機能を有することが困難な時は、当該設備は、障害者 等が通常使用している障害を補いコミュニケーションを支援するための機能を有する設備と 接続できることが望ましい。 【解説】  障害者等が電気通信設備を利用する際には、その設備が第3に掲げる機能を有することが 望ましいが、その実現が困難な場合もある。そのような場合には、障害者等が通常使ってい る補聴器、点字プリンター、点字ディスプレイ等の障害を補いコミュニケーションを支援 するための機能を有する設備と電気通信設備とを接続できることにより電気通信設備の アクセシビリティが確保されることとなる。  そのために、以下のような手段が考えられる。 (1) 電気通信設備の設計・開発段階で、補助器具等との接続を可能とするような配慮を行う。  例えば、外部の音声処理装置の接続のためのインターフェースを確保する方法としては、 聴覚障害者の利用する補聴器、ヘッドホン、アンプ等の機器、装置を直接プラグインする 有線接続方式や、赤外線接続、無線接続などによる接続方式がある。特に、補聴器を使用して の電話機などの利用時には、周囲の雑音も同時に拾うため、直接音声信号を伝えられ接続機能 を付加することが有効である。  なお、これらの設備を接続する際には、当該設備に対して電波障害等の妨害を与えないよう にすることが望ましい。 第5 その他の配慮すべき事項 1.設計、開発、評価   電気通信設備の設計、開発に当たっては、アクセシビリティを評価し、その評価を反映   することが望ましい。 2.仕様に関する情報、マニュアル   電気通信設備の仕様に関する情報とマニュアルはできる限り公開され、かつ、   インターネット等を利用して、全ての人が容易にアクセス可能なものとすることが   望ましい。 3.アクセシビリティの維持   電気通信設備のアクセシビリティについては、当該電気通信設備を変更した後も   本ガイドラインが定めている機能を引き続き満たすことが望ましい。 【解説】 1.設計、開発、評価  提供者には、電気通信設備のアクセシビリティを評価し、商品に反映させるため、設計、 開発、製造、流通の一連の工程の中で、一貫してそれらのアクセシビリティに対する障壁を 把握できるような工程づくりが重要となる。そのためには、例として次のような対応が 考えられる。  まず、市場調査、設計、性能テスト、試用等を行う際には、その対象として、障害者等を 含めたり障害者等の意見を聴取することを考慮する。  こうしたことにより、アクセシビリティの障壁となる問題点が明かになり、それを解決する 方法を見つけることができる。商品のターゲットを限定して想定する場合においても、 障害者等がその中に含まれるよう配慮することが必要である。  また、上記の一連の工程において、障害者等の関連組織と協力して作業することなども、 商品の評価を行う上では重要な視点となる。 2.仕様に関する情報、マニュアル  電気通信設備の仕様に関する情報及びマニュアルは、企業の利益を損なわない範囲内で、 公開することが望ましい。  これらの情報及びマニュアルの提供形式としては、障害者等を含めた全ての人がアクセス 可能なように、従来の文字や紙ベースによるもののみでなく、音声、点字等の他の形式でも 提供することが望ましい。  提供する実質的手段としては、点字を含む紙ベースのものに加え、インターネット、 ファクシミリ、フロッピーディスク、カセットテープ等がある。  また、電気通信設備を効果的に使用するために利用者が正確に理解できるマニュアルを 提供することが必要である。提供するにあたっては、専門用語・外来語・略語を多様せず わかりやすい表現を用いることが重要である。それらを使う場合においては用語集を 用意する等理解を助けるように配意する。 3.アクセシビリティの維持  今後、技術の発展等により、その都度、電気通信設備の改良はあるものと想定される。 その改良により、一層高度な機能が使えるようになることは望ましいことではあるが、 そのために障害者等にとって使用が困難になることは避けることが望ましい。  このため、提供者が、アクセシビリティについてガイドラインの示す機能を有する商品の 改良を行う際には、引き続きガイドラインの示す機能を有することが重要である。