別 冊         「障害者等電気通信設備アクセシビリティガイドライン」                     第1版                  第二部:個別機能編                              電気通信アクセス協議会                                平成12年7月6日 1. 本編の使い方 (1) 本編は、電気通信設備及びサービスにおいて、アクセシビリティを考慮するために   必要な機能をまとめたものである。各機能には、実現例を併記しているが、一つの機能   に対応して、複数の実現例が示されている場合は、この機能に対して複数の実現例が   考えられることを意味する。なお、実現例は、例示をもって機能内容を説明することを   主旨としており、本編記述に限るものではない。 (2) 提供者は、評価の対象となる電気通信設備及びサービスが、本編に示される各機能を   有しているか否かの自己評価を行う。この際、提供者は「実現例」を参考にする。   なお、評価の対象となる電気通信設備及びサービスが、本編の実現例に示されていない   手段により本編に示される機能を実現すると判断することは、提供者の自己責任に   おいて許されるものとする。 (3) 「対象」の欄には、実現例が対象とする電気通信設備の種類に関する定義がなされて   いる。   *「各機種共通」に関しては、本ガイドラインが適用対象としているすべての機種    (第一部 5.適用範囲 参照)を対象とすることを意味する。   *「各機種共通」以外に関しては、「電話機」、「ファクシミリ」、「モデム、    ターミナルアダプタ」、「携帯情報端末(いわゆるPDA)」という個々の機種向け    の実現例であることを意味する。 (4) 自己評価の結果、1)「障害にかかわらず入力を可能とするための機能」、   2)「障害にかかわらず出力結果の利用を可能とするための機能」の中から少なくとも   1項目以上を有していることが確認された電気通信設備及びサービスに関しては、   第一部 6.2から6.4項で定義される公表手段を利用することができる。3)「その他   障害にかかわらず電気通信設備の操作を容易に行えるための機能」については、   できるだけ多くの電気通信設備及びサービスがこれらの機能を提供することが望ましいが、   これら機能を提供しているのみでは、第一部6.2から6.4項で定義される公表手段を利用   することができないこととする。 2. 機能内容 1) 障害にかかわらず入力を可能とするための機能 (機能) 1-1 視覚に頼らないで入力を行えること (実現例) 1 操作時に適切な電子音を発することによって、可視表示器が見えなくても操作を行える  ようにする。(各機種共通)  ア. 音声ガイダンスにより可視表示器を見なくても操作を可能とする。  イ. 押下したキー、ボタン等に応じて、該当のキー、ボタン等の名称、機能、動作等を音声   で表示する。 2 キー、ボタン等のタッチ基準点に突起マークを付けたり、大きいキーに突起物を貼り付ける  など、キーそのものに触覚表示を備え付ける。(各機種共通)  ア. 発信、通話終了のキー、ボタン等に識別しやすい突起あるいは彫り込みなどを施して   ある。 (注意)ダイヤル「5」のボタンに突起を付けることは既に幅広く適用されているので、    この点を満足しているだけでは、本機能を満足したとは認められない。 3 一つ一つのキー、ボタン等を分離したり、キーボードが平面の場合、キーの周りの端を  突き出させたりして、位置をわかりやすくする。(各機種共通) 4 接続の方向をわかりやすくするため、接続部には識別しやすい突起あるいは彫り込みなど  を施してある。(各機種共通) 5 誤ったキー、ボタン等の入力に対応するため、すべての操作は取り消し可能にする。  取り消しが不可能な操作がある場合は、利用者に対して取り消しが不可能な操作である旨  を通知する。(各機種共通) (機能) 1-2 色の識別を必要としないで入力を行えること (実現例) 1 操作に関わる部分(キー、ボタン、表示器など)には、赤と緑などの組み合わせを避ける。  (各機種共通) 2 白黒画面でも区別できるように、色合いや明暗が異なる色を使用する。(各機種共通) 3 操作に関わる部分(キー、ボタン、表示器など)には、低輝度の色の使用を避ける。  (各機種共通) 4 利用者が視覚能力に合わせて色を調節できる機能を提供する。(各機種共通) (機能) 1-3 聴覚に頼らないで入力を行えること (実現例) 1 筆画通信機能を提供する。(各機種共通) 2 聴覚的な案内情報の提供については、その有無や内容を、絵や図形、表示器等の点滅などの  視覚情報として提供する。(各機種共通)  ア. ファクシミリ、留守番電話においては、送信開始、あるいは、メッセージ吹き込み開始   のタイミングを視覚的に表示する。 3 入力手順を、視覚的に表示できる。(各機種共通) (機能) 1-4 限られた運動機能により入力を行えること (実現例) 1 手が使えなくても電話に出られるようにする。(各機種共通)  ア. 設定した回数の呼び出しを行った後に、自動的にハンズフリー通話状態になる。  イ. 「はい」などの音声を認識し、自動的にハンズフリー通話状態になる。 2 ボタンの多重押しをしなくてもすべての機能を利用できる。(PDA) 3 入力ペンなどの道具を使わないで、キーボードやスイッチだけで、基本的な操作を可能  とする。(PDA) 4 音声認識による入力機能を付加できる。(各機種共通) 5 キー、ボタン等を大きめにしたり、キー、ボタン等の間隙を広くすることにより、利用者  が誤って隣のキーやボタンを押さないようにする。(各機種共通) 6 不注意でキー、ボタン等を押下する可能性・頻度が高い場合を想定して、キー、ボタン等  を押下してから対応した動作の開始までの反応時間を調整可能とする。(各機種共通) 7 タッチパネルなどのように人間の皮膚の接触を要求する入力方式の場合は、キーやボタン等 による入力方式も併せて提供する。(各機種共通) 8 固定して使用するための金具や、標準的なネジ穴(カメラの三脚などに取りつけるための もの)を用意している。(各機種共通) 9 タッチパネルを供えている機器に関しては、タッチパネルの入力感度調整を可能とする。 (各機種共通) (機能) 1-5 義肢により入力を行えること (実現例) 1 タッチパネルなど、人間の皮膚の接触を要求する入力方式の場合は、キーやボタン等に よる入力方式も併せて提供する。(各機種共通) 2 ボリューム調整などつまんだり、ねじったりする動作が必要なものについては、単純な 動作により入力可能な代替方式を提供する。(各機種共通) (機能) 1-6 時間制限を設けないで入力を行えること (実現例) 1 利用者からの応答時間や入力完了時間を任意に設定できるようにする。(各機種共通) 2 制限時間が近づいていることを利用者に警告し、延長できるようにする。(各機種共通) (機能) 1-7 発話に頼らないで入力を行えること (実現例) 1 通常、発話で入力を行う場面での代替手段として、キーボード、マウス、手書き文字等  により各種入力が可能である。(各機種共通) 2) 障害にかかわらず出力結果の利用を可能とするための機能 (機能) 2-1 視覚的な情報を視覚に頼らないで利用できること 〔視覚に障害がある場合でも、視覚的な情報を利用しやすくするよう工夫されていること〕 (実現例) 1 視覚に頼らずに、電話、文字メールの着信を確認できる。(各機種共通)  ア. 機能の異なる着信に応じて、異なる着信音が鳴動する。  イ. 機能の異なる着信に応じて、着信バイブレータの振動パターンを変化させることが   できる。 2 表示が見えなくても利用できる発信者番号表示機能を備えている。  ア. 電話帳に登録してある電話番号と、発信元の電話番号が一致した場合、相手の名前を   読み上げる。また、電話帳に登録されていない相手の場合は、電話番号を読み上げる。   (各機種共通) 3 視力が弱い場合でも見やすくするために、表示器の電話番号を拡大表示する。  (各機種共通)  ア. 発呼時及び着信時の番号表示時に電話番号を拡大して表示する。  イ. LCDの倍角設定を可能とする。 4 見えない場合でも、紙詰まり、紙切れ、送信トラブルなどを把握できる。  (ファクシミリ)  ア. 音声ガイダンス、あるいは、エラー音で知らせる。 5 絵や図形などにより表現される情報は、音声に変換可能な文字情報あるいは音声による  説明を付加する。(各機種共通) 6 点字による出力を可能とする。(各機種共通) 7 見えない場合でも、ネットワークや通信相手との接続の過程などの状態を把握する手段  を提供している。(モデム、ターミナルアダプタ、ファクシミリ) (機能) 2-2 動画方式の情報を静止させることができること (実現例) 1 文字の情報が動いているときに、一時的に止めてゆっくり読めるようにする。  (各機種共通) 2 1行単位で文字情報を表示し、読み終わってから次の行に移れるようにする。  (各機種共通) (機能) 2-3 聴覚的な情報を聴覚に頼らないで利用できること 〔聴覚に障害がある場合でも、聴覚的な情報を利用しやすくするよう工夫されていること〕 (実現例) 1 聴覚に頼らずに、電話、文字メールの着信が分かる。(各機種共通)  ア. 着信時、可視表示器の点灯・点滅により、着信を知らせる。  イ. 機能の異なる着信に応じて、着信バイブレータの振動パターンを変化させる。 2 ヘッドセット用、または、補聴器用の音声出力が可能な端子を用意している。(各機種共通)  ア. 受話音を外部端子に取り出せる。  イ. ハンドセットケーブル接続コネクタにヘッドセットを接続可能としている。 3 補聴器に電磁ノイズを与えないよう、対策を施している。(各機種共通) 4 音声出力に拡声機能を設ける。(各機種共通)  ア. ハンズフリー通話でスピーカ音量を段階的に調整出来る。 5 磁気誘導コイル付補聴器に対応可能な受話器を備えている。(各機種共通) 6 聞こえなくても、紙詰まり、紙切れ、送信トラブルなどが把握できる。(ファクシミリ)  ア. 可視表示器を利用して知らせる。 7 聞こえない場合でも、ネットワークや通信相手との接続の過程などの状態を把握する手  段を提供している。(モデム、ターミナルアダプタ、ファクシミリ)  ア. 回線状態(呼出し中、通信確立中、話中などの状態)を、可視表示する。 3) その他障害にかかわらず電気通信設備の操作を容易に行えるための機能 (機能) 3-1 入出力操作に必要な入力キー、ボタン等の位置が容易に確認できること。 (実現例) 1 通信を行うために必要なキーやボタンの位置は、容易に確認できるよう設計の際に使用  方法、使用頻度に応じ、レイアウト面で配慮している。同時に、通信の実行中に誤って  触れることで通信切断につながるキー、ボタン等については、誤操作防止への配慮が  なされている。(各機種共通) (機能) 3-2 基本的な通信環境の設定を一の入出力操作で行えること。 (実現例) 1 接続に必要な環境設定を誘導するプログラムを提供している。  (モデム、ターミナルアダプタ、PDA) 2 利用者側の操作に任せるのではなく、ネットワーク側(通信事業者側)からの遠隔操作  により、端末を自動設定できる。(各機種共通) (機能) 3-3 操作中にいつでも初期状態または任意の状態に戻すことができること。 (実現例) 1 すべての操作を無効とするボタンと、直前の入力操作のみを無効とするボタンとを提供  する。(各機種共通) (機能) 3-4 ネットワークや通信相手との接続の過程などを表示することができること。 (実現例) 1 見えない場合でも回線の状態を把握する手段を提供している。  (モデム、ターミナルアダプタ、ファクシミリ) 2 聞こえない場合でも回線の状態を把握する手段を提供している。  ア. 回線状態(呼出し中、通信確立中、話中などの状態)を、可視表示する。   (モデム、ターミナルアダプタ、ファクシミリ) (機能) 3-5 少なくとも一の特定の相手先へは一の入出力操作で接続が行えること。 (実現例) 1 非常警報ボタンのように、単一の操作で、あらかじめ登録された相手先への通信が開始  される。(各機種共通) (機能) 3-6 一度入力した接続先相手番号、接続相手アドレス等の接続に必要な相手先の情報を   登録し又は再利用できること。 (実現例) 1 直前に通信した相手の電話番号やアドレスなどを、再度すべての情報を入力すること  なく、簡単かつ明瞭な操作手順によって、メモリーに登録することを可能とする。  (各機種共通) (機能) 3-7 ユーザーインターフェースのカスタム化が可能であること。 (実現例) 1 利用者の設定により、タッチパネル上のボタンの配置を自由に設定可能とする。  (各機種共通) 2 LCDを用いている場合には、視野角調整を可能とする(車椅子、ベッドなどからの  操作を想定して調整範囲を十分に広く取れること)。(各機種共通) (機能) 3-8 電気通信設備の入出力は、複数の方式で行うことができ、かつ、入出力の際には任意 の方法が選択できること。 (実現例) 1 利用者の設定により、複数の入出力手段の中からの選択を可能とする。なお、ここでの  入出力手段とは、キーボード、マウス、タッチパネル、マイク、スピーカなどである。 (各機種共通)                                      以上