「障害者等電気通信設備アクセシビリティガイドライン」                  第1版 −解説−                 第一部:総論・運用編                               電気通信アクセス協議会                                平成13年5月8日 はじめに  情報化社会の進展に伴い、電気通信は今や国民一人一人の日常生活において必要不可欠な 手段となっています。このような中で障害者・高齢者(以下「障害者等」という。)を含む 全ての人々にとって電気通信設備及びサービスが円滑かつ容易に障壁なく利用できるように する、いわゆるアクセシビリティを確保していくことは極めて重要となっています。  電気通信アクセス協議会(会長:齊藤忠夫 中央大学理工学部教授)では障害者等の円滑 なサービスの利用を目指し、アクセシビリティの高い電気通信サービスを利用できるように するために、設計・開発・提供を推進するにあたって考慮すべき事項、商品が備えるべき 機能及びその考え方などについて「障害者等電気通信設備アクセシビリティガイドライン 第1版」(以下「ガイドライン」という。)を制定(平成12年7月6日)しました。  ガイドラインは強制的なものではありませんが、提供者にあっては本趣旨を理解して いただき、一つの指針として活用し、アクセシビリティへの配慮設計・開発に心がけて いただくことを要望するものです。  また、利用者にあってもガイドラインの位置づけ・内容等を理解していただいた上で商品 選択等の情報として利用していただきたいと思います。  本解説はガイドラインを補完し、ガイドラインを利活用・運用するにあたって併用して いただくことを目的に作成しました。  ガイドラインの見直しは今後も逐次実施していく予定ですが、本解説についても ガイドラインを運用していく中で必要に応じて記載内容その他補完的事項の追加・補正等を 行うとともに、定性的規定に加え、それを実現する場合の定量的等(色を使用する場合の 推奨色も含む)規定についても検討していく予定です。 第1 定義 (1) 本ガイドラインにおいて「電気通信設備」とは、電気通信を行うための機械、器具、   線路その他の電気的設備をいう。 (2) 本ガイドラインにおいて、「アクセシビリティ」とは、障害者等を含む利用者が円滑   に電気通信を利用することが可能であることをいう。 【解説】  「電気通信設備」については、電気通信事業法(昭和59年12月法律第86号)の 第2条における定義を準用した。すなわち「電気通信設備」とは電気通信を行うための一切 の物理的手段としての機械、器具、線路その他の電気的設備をいう。電話機、ファクシミリ を始めとする各種の入出力装置、交換機、搬送装置、無線通信設備、ケーブル、電子計算機、 通信用電力装置及びこれらに附属する機器の総称であって、これらの通信資材を相互に 結合して、電気通信が可能な状態に構成され、かつ、電気通信を行う主体が支配・管理して いる状態にあるものをいう。  ガイドラインは、アクセシビリティを確保するため、利用者が直接操作する電気通信端末 のみでなく、交換機、ケーブル等を含めた電気通信設備により構成される電気通信網全体 として満たすことが望ましい機能等の指標を定めたもので、必ずしも個々の設備全てが単体 としてガイドラインの機能等の指標の全てを満たすことを求めているものではない。端末や ネットワーク等、それぞれの設備の機能分担は、利用環境、目的、サービスの種類などに よって異なるものであり、端末とネットワークとが一体となって提供されるサービスもある ことから、電気通信設備の設計・開発の際にはその点を考慮すべきである。  「アクセシビリティ」については、障害者等を含む利用者が円滑に電気通信を利用する ことが可能であることと定義した。  英語の「accessibility」は、「接近可能性」、「利用のしやすさ」、「便利であること」 などと訳されるが、ガイドラインは、電気通信の利用に限ったものであるため、電気通信を 利用する際の障壁を無くすという観点から、このような定義を行ったものである。 第2 適用範囲  原則として、全ての電気通信設備及びサービスを対象とする。ただし、第1版では以下の 電気通信設備を適用対象とする。    ・電話機(携帯電話、PHSを含む。)    ・ファクシミリ    ・モデム、ターミナルアダプタ    ・携帯情報端末(いわゆるPDA) 【解説】  「第1 定義」で定義した電気通信設備を対象にすることを前提とし、全ての電気通信 設備及びサービス(以下、「商品」という。)としているが、第1版ガイドラインでは、 さしあたり最も一般的に利用される電話機(携帯電話、PHSを含む。)、ファクシミリ、 モデム、ターミナルアダプタ、携帯情報端末(いわゆるPDA)を対象とし、その他の設備 については今後逐次適用範囲に追加していくこととした。  しかし、他の設備についてもこれら機能等の指標は類似するものが多いことから、設計・ 開発の際はその点を考慮すべきである。  また、アクセシビリティの実現にあたっては広範な障壁に可能な限り対応するため、 例えば一般の電話機にアクセシビリティ機能を具備させるような汎用の電気通信設備上で 実現することが好ましいが、利用者固有の要求を満たせない場合にはきめ細かく対応できる 特定の人向けの専用機能で実現する場合もあり得る。  なお、対象はガイドライン策定以降新たに開発される電気通信設備とするが、既存の電気 通信設備の仕様等を変更する場合にも、可能な限り本ガイドラインに配慮することが 望ましい。  また、サービスについては、端末の機能の実現がネットワークとの機能分担により 達成されるもの(例:ナンバー・ディスプレイ)が多くあり、例えば、文字情報と音声情報 の変換伝達、携帯電話機・PHSにおけるメールの簡便な相互通信などはアクセシビリティ の確保に配慮する必要があることから、具体的事項の規定は今後検討し、第2版以降に 盛り込むこととしたが、設計・開発の際の考え方としてはガイドラインを準用することが 望まれる。 第3 評価方法  評価は、本ガイドライン第二部に示される「実現例」を参考に、各提供者の自己責任に おいて実施する。 【解説】  アクセシビリティを考慮した商品であるかどうかの評価は、利用者の立場に立って適正に 行われるべきである。  アクセシビリティ考慮商品であるかどうかの判断として、認定機関による認定等の方法が 好ましいが、 (1) 数値規程に対する評価と異なり、客観的評価にあたっての認定のあり方・方法等に   ついては慎重に検討する必要がある。 (2) 利用者の商品に対する機能要求は、目的、使用環境、年齢、障害の区分とその程度等に   よってそれぞれ区々であり、ある一つのアクセシビリティ機能を有する商品であっても、   その機能を特に必要とする利用者にとってはアクセシビリティを考慮した商品と判断   される場合もあり、アクセシビリティに関する複数機能具備商品のみがアクセシビリティ   を考慮した商品とは必ずしも言い難い場合がある。  こうしたことから第1版ガイドラインではとりあえず各提供者(販売者も含む。の自己責任 において評価し、また、一つのアクセシビリティ機能のみを具備する商品の場合であっても アクセシビリティを考慮した商品とすることができることとした。  しかしこの場合、提供者はガイドラインに示したチェックリストに従って評価し、対象となる 商品の機能面に関して実施した「具体的な手段又は方法」の概要を明記することとした。  なお、より客観的な判断に基づく評価の方法等については今後検討していく予定である。 第4 アクセシビリティを考慮した商品の公表とシンボルマーク (1) ガイドラインに示す機能を備えておりアクセシビリティを考慮していることが確認された   商品の存在を、障害者等を中心としたより多くの人々に認知してもらうために、提供者は   電気通信アクセス協議会(以下、「当会」という。)が設置・運営するホームページ等の   手段(以下、「周知手段」という。)を利用して公表することができる。 (2) 提供者は、周知手段に掲示を行った商品に関して、利用者が商品選択を行う際に   アクセシビリティを考慮した商品であることが容易に確認できるように、パンフレット、   包装、取扱説明書および製品本体などで、アクセシビリティを考慮した商品である旨を   記述することができる。具体的には、下記のシンボルマークに、対象となる商品が備えて   いる機能の概要を併記する。    なお、本シンボルマークを使用する場合には、周知手段によ公表が必ず行われている   ものとする。 【解説】  利用者が、目的、使用環境、及び障害の程度等に適合した商品を選択して効果的に利用する ためには、商品に関する様々な情報が必要である。このため、提供者は、アクセシビリティを 考慮した商品について、その商品仕様及びアクセシビリティ機能等について広く公表すること とした。  ガイドラインでは、商品におけるアクセシビリティの普及と利用者が商品選択を行う際に、 アクセシビリティを考慮した商品であることを容易に識別できるようにするために シンボルマークを定めた。  シンボルマークはガイドラインに示している機能に照らして提供者の自己責任において 行われる評価の結果、「アクセシビリティを考慮した商品である」と判断した場合には、当該 商品に対してこのシンボルマークを貼付等使用できることとした。  (注)このシンボルマークは、「U」は最終目標である理念としてのユニバーサルデザイン     を表現し、二つの「●と||| 」は人と人との触れ合い、コミュニケーション、提供者と     利用者との良好な関係を表現しています。  なお、シンボルマークを使用しない商品であっても、アクセシビリティを考慮していると 評価した商品については極力当会のホームページに掲載し、利用者に広く公開し、商品選択 の際の情報として提供することが好ましい。  しかし、アクセシビリティを考慮した商品としての公表あるいは公表とそれに伴う シンボルマークの使用にあたっては「第3 評価方法」で述べたとおり利用者の立場にたって 適正に行われるべきであり、どのような商品においても一般的に実現されているような機能等 (例えば数字ボタン5の突起等)のみをもってアクセシビリティを考慮した商品であるとの 評価を行うことは慎むべきである。(これは「5に突起をつけることが意味のないこと」と 言っているものではなく、どの商品も一般的に具備している機能等のみをもって アクセシビリティを考慮した商品とすることによって利用者が商品選択をする際に混乱を 招かないようにすることに配意したものである。)  第1版ガイドラインでは、評価及びその結果行われる公表等は提供者の自主的判断としたが、 それぞれの機能指標に対してその実現方法が利用者にとってよりアクセシブルと客観的 にも評価しうるような商品について公表あるいは公表とシンボルマークの使用を行うよう 心がけるべきである。  このシンボルマークの使用にあたっての手順、及びシンボルマーク運用上の注意事項等に ついては、次のとおりである。 A.シンボルマークを使用する際の手順及び各手順における付随的事項 手順(1) 提供者はガイドライン第一部「6.1評価方法」に従い、シンボルマークの使用を     検討している商品の評価を行う。 <提供者が製造者ではなく販売者の場合> 提供者には、その商品の製造を行っている者のみ に限らず、販売のみを行う場合も含まれるものとする。販売者がシンボルマークを使用する 場合には、販売者の責任において評価を行うこととなる。 手順(2) 評価の結果、ガイドライン第ニ部に示される個別機能のうち少なくとも1項目の機能     を具備している場合には、シンボルマークを使用することができる。 <シンボルマークに併記する機能の実現方法の概要説明> シンボルマークの使用に あたっては、どのような個別機能を具備しているかその実現方法の概要を併記することが必要 である。この実現方法等の概要は、利用者が店頭などで商品を選択する際にも読むものである ことから誤解を招くことがない判りやすい文章であることが必要である。 <複数の個別機能を具備している場合> 複数の個別機能を具備している場合には、具備して いる機能をできるだけ忠実に表現することが好ましい。ただし、字数の都合などで全てを 書き尽くせない場合には、代表的事項を中心に記述し、その他は取扱説明書などで記載する こととする。 <販売者の判断でシンボルマークを貼付する場合> 製造者が既に本シンボルマークを貼付 している場合で、販売者が別の機能項目でアクセシビリティを考慮していると評価した場合 には、販売者は、更にもう一つのシンボルマークを貼付することはせず、販売者と製造者とで 調整し、機能概要の説明を統一することが好ましい。また、同一の商品について、販売者が 異なることにより、異なる機能概要説明が併記されたシンボルマークの使用は極力避ける 必要がある。従ってOEM商品あるいはOEM商品と同一機能具備商品をメーカーブランド として販売する場合には、OEM元とOEM先とで調整を図ることが好ましい。 手順(3) シンボルマークの使用を決定した商品に関する情報を公開する。 <公表方法> 電気通信アクセス協議会のホームページ (http://www.ciaj.or.jp/access)に公表することとし、ホームページへの掲載フローは 次による。   @HTML形式にてコンテンツ作成(各企業等提供者)   AE−Mailにてホームページ掲載依頼(電気通信アクセス協議会事務局    (以下「事務局」という。)宛ファイル提出)   Bファイル加工(事務局)   Cサーバー仮アップロード(依頼元で確認)   Dホームページ上で公開 また、掲載内容は次のとおりとする。   @会社名   A商品名   B写真   C商品の機能概要   Dアクセシビリティを考慮している機能   E上記評価に関するチェックシート(注)   F詳細情報等に関するURL   G問合せ先(担当部門・担当者・電話番号・FAX番号・メールアドレス)   (注)チェックリストは当該機能部分のみでなく、全て(チェックリスト一式)とする。   備考:一旦ホームページに掲載した商品をホームページから削除する場合には次による。   @各企業等提供者から、事務局宛に、掲載の削除を連絡(メール)   A事務局から削除意思の確認   B事務局により削除 なお、ファイル等提出先・連絡先及び事務処理手順、方法等に関する問合せ先は次の通りと する。   事務局(通信機械工業会)清水又は小形 宛   Mail:shimizuh@ciaj.or.jp Tel=03-3231-8768 Fax=03-3231-3110      ogata@ciaj.or.jp Tel=03-3231-8770 Fax=03-3231-3110 <ホームページへの掲載とシンボルマークの使用> シンボルマークを使用する際は、原則 として当該商品を当会のホームページへ掲載を行ってからとする。ただし、若干の前後はか まわないものとする。 B.アクセシビリティを考慮した商品として公表のみを行う場合  (シンボルマークの使用なし)  シンボルマークを使用しない商品であっても、アクセシビリティを考慮していると評価 (この場合も評価はガイドライン第一部「6.1評価方法」の記述に従う)した商品に ついて公表しようとする場合には当会のホームページに掲載することができるが、その場合 の掲載フロー、及び掲載内容等はシンボルマークを使用する商品の場合と同様とする。 C.アクセシビリティを考慮した商品の公表方法  アクセシビリティを考慮した商品としての評価を行い、公表する場合の方法は、当会の ホームページへの掲載を原則とする。ただし当会のホームページへの掲載に併わせて提供者 自身のホームページ等により公表することはかまわない。  なお、当会は、ホームページ掲載の公表可能商品の内容について広く利用者に周知する観点 から他の方法によっても公表することができるものとし、また、ホームページ掲載内容として 定めた内容を満足していない公表可能商品についても、ホームページ掲載以外の方法により 公表できるものとする。 D.公表商品における機能のバラツキ  ガイドラインでは、各個別機能について実現例を示すのみで、実現方法に関して「○○で なくてはならない」という言い方での規定はしていない。これはアクセシビリティが客観的な 指標のみでは評価しがたいものであることに加えて、一つの機能に対する実現方法は唯一 ではなく複数存在するものであり、更に、技術革新に合わせて提供者が新しい実現方法をより 提案し易くすることを目指していることによる。  こうしたことから、公表商品において同一の機能を具備している商品の間で実現方法の 相違等からアクセシビリティのレベルにバラツキが生じる可能性があるが、利用者の アクセシビリティの高さ・内容に対する要求は区々であることから、どのような実現方法を 採用している商品を選択するかは利用者の判断に委ねることとし、一つの機能に関しての 商品間のバラツキについては特に言及しないこととした。 E.公表商品の公表中止  提供者は、公表した商品の販売が停止される、或いはその他の理由により公表を停止する 必要が生じた場合には、速やかに当会に連絡することとし、それを受けて当会は ホームページから削除を行うものとする。 F.アクセシビリティを考慮した商品を掲載するホームページ  アクセシビリティを考慮した商品を掲載したホームページは、商品選択等の際にさまざまな 人がアクセスして利用するものであることから、当該ホームページのアクセシビリティ (ウェブアクセシビリティ)にも配慮することが大切である。  また、掲載商品が多くなった場合には、単に商品を羅列するに止まらず、機能別分類掲載 や機能面からの検索もできるようにするなどの配慮が必要である。 第5 ガイドラインの見直し  ガイドラインの改定については、適用範囲・機能内容などに関する利用者及び提供者の 意見を収集・反映するため、逐次実施する。 【解説】  第1版ガイドラインでは、電気通信設備のうち特に@電話機(携帯電話・PHSを含む。)、 Aファクシミリ、Bモデム、ターミナルアダプタ、C携帯情報端末(いわゆるPDA)を対象 としたが、アクセシビリティの観点からは電気通信設備全般を対象とすべきであり、更に、 サービスについても対象とすべきで、ガイドラインの適用範囲は拡大が必要である。また、 前述のとおり、同一の個別機能に対する実現方法は一つとは限らず、しかも技術の進歩に伴い 実現方法は多様化していくとともに、利用者から新たな要望が出てくることも想定される。  このようなことから、利用者及び提供者の意見・要望も絶えず収集し、これを反映して逐次 継続的にガイドラインは見直していくこととする。